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第二章

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「値崩れか……でもそれはしょうがないんじゃないか?ある一定以上に売れば、値が下がるのは当然だ」

 バーブラは首を横に静かに振った。

「それが、予想よりもかなり早いのです」

 俺は眉根を寄せた。

「予想より早い?」

 バーブラはうなずいた。

「カズマさんのおっしゃる通り、需要に対して供給過多となれば、どのようなものも値は下がります。ですがそれはカズマさんから販売を委託されたガッソも承知のことです。ガッソも当商会の番頭を務めるほどの商人です。またガッソだけではなく、当商会におります鉱石販売の専門家たちもおります。彼らは連携し、出来るだけ値崩れを起こさないよう慎重にグランルビーをさばいておりました。にもかかわらず、世界各地でほぼ同時に値崩れを起こし始めているのです」

「それは……予想を見誤ったということではないのか?」

 バーブラはまたも首を横に振った。

「おそらく、他にグランルビーを大量に販売している者がいるはずです」

 俺は驚いた。

「そんなことがありえるのか?」

 バーブラは横に座るヴァルトと一旦顔を見合わせ、再び俺を見て言った。

「それ以外に考えられないのです」

 俺は腕を組んで考え込んだ。

 本当か?グランルビーは大変希少な鉱石のはずだ。誰かしらが大量に保有していたとは考えずらい。

 考えられるとしたら――

「ちょっと聞きたいんだが、あんたたちは、俺たちが何故大量のグランルビーを、持っていたか知っているか?」

 バーブラたちはまたも顔を見合わせた。

 そしてまた俺に向き直ると、言った。

「アルデバラン王国領内の森の中の窪地でカズマさんが大量に採掘し、それをオルダナ王国内に運び込んだと聞いております」

「つまり、全部知っているわけだ」

「事情に関しては存じております」

「なら話は早い。考えられるとしたら、アルデバランを占領したベルガン帝国が、あの窪地を発見したってことだろう」

 まだあの窪地には、大量のグランルビーが埋まっているはずだ。

 それを帝国が採掘して売りさばいているってわけだ。

 だが目の前の二人は、どちらも難しい顔をしていた。

「違うのか?」

 俺の問いに、ヴァルトが答えた。

「我々の手の者が調べたのですが、ベルガン帝国にそのような動きはないのです」

「確かか?」

「間違いありません。帝国はまだ、あの窪地を発見するには至っておりません」

「じゃあ、誰が?」

 すると今度は、バーブラが答えた。

「残念ながら、誰かはわかりません。ですが、いつか、はわかっております」
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