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第二章
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「いつか……誰かはわからないが、その誰かが、いつ売りさばいたかはわかっているってことか?」
バーブラはうなずいた。
「ここ数年、少しずつグランルビーは売られていたようなのです」
「少しずつ?」
「それも、世界各地で少しずつです」
俺は確信し、眉根をギュッと寄せた。
「つまり、数年前から俺たちと同じことを考え、実行している奴がいたってことか!」
バーブラとヴァルトは同時にうなずいた。
なんてことだ!グランルビーを大量に売りさばいている奴がすでにいたとは!
そいつは誰だ?
そのとき、あの窪地の記憶が蘇ってきた。
「そうか!あの小屋だ!」
ヴァルトが聞き返す。
「小屋……とは?」
「俺がいた窪地には、小屋がふたつ立っていたんだ。ひとつは川べりに小さい小屋が。もうひとつはグランルビーが採れる岩場の近くだ」
「つまり、その岩場の近くの小屋は、採掘者たちの小屋だと?」
「今の今まで忘れていた。あれは、グランルビーを採掘するための小屋だったんだ!」
これまで考えてもみなかった。
だがよくよく考えてみれば、充分有り得ることだった。
これまで何故その可能性を考慮してこなかったのか。
人格が『僕』だったからだ。
あの人格では、深い考察なんてしない。
そして今は『俺』へと変わったものの、あの窪地でのことはこの世界における一番古い記憶であり、これまであまり思い返すこともなかった。
だが、だとしてもひとつ重大な問題がある。
「あの窪地のグランルビーが流出していたとして、どうやってあそこまでたどり着けたのか……」
俺の呟きに、ヴァルトが反応する。
「確か、未開拓の森の中にあるのでしたな?」
「そうだ。あの森には様々なモンスターが所狭しと跳梁跋扈していた。中にはAランクのモンスターまでいるんだ。到底普通の冒険者では、あそこまでたどり着けるはずがない」
「Aランクモンスターが相手となれば、全員Aランクの五人編成での冒険者パーティーでもなければ、討伐できないでしょうな」
「五人編成というと、前衛が三人、後衛が二人ってところか?」
「それが一番バランスがよろしいかと思います」
「そのパーティーなら、Aランクモンスターに勝つことも可能なんだな?」
ヴァルトがうなずく。
「おおむね可能だと思われます。ですが、Aランクパーティーと一口に言いましても千差万別なところがありますし、相性の問題もあるでしょう。それにAランクモンスターの方も同様に、各種色々いますから、何ともいえないところがありますね」
バーブラはうなずいた。
「ここ数年、少しずつグランルビーは売られていたようなのです」
「少しずつ?」
「それも、世界各地で少しずつです」
俺は確信し、眉根をギュッと寄せた。
「つまり、数年前から俺たちと同じことを考え、実行している奴がいたってことか!」
バーブラとヴァルトは同時にうなずいた。
なんてことだ!グランルビーを大量に売りさばいている奴がすでにいたとは!
そいつは誰だ?
そのとき、あの窪地の記憶が蘇ってきた。
「そうか!あの小屋だ!」
ヴァルトが聞き返す。
「小屋……とは?」
「俺がいた窪地には、小屋がふたつ立っていたんだ。ひとつは川べりに小さい小屋が。もうひとつはグランルビーが採れる岩場の近くだ」
「つまり、その岩場の近くの小屋は、採掘者たちの小屋だと?」
「今の今まで忘れていた。あれは、グランルビーを採掘するための小屋だったんだ!」
これまで考えてもみなかった。
だがよくよく考えてみれば、充分有り得ることだった。
これまで何故その可能性を考慮してこなかったのか。
人格が『僕』だったからだ。
あの人格では、深い考察なんてしない。
そして今は『俺』へと変わったものの、あの窪地でのことはこの世界における一番古い記憶であり、これまであまり思い返すこともなかった。
だが、だとしてもひとつ重大な問題がある。
「あの窪地のグランルビーが流出していたとして、どうやってあそこまでたどり着けたのか……」
俺の呟きに、ヴァルトが反応する。
「確か、未開拓の森の中にあるのでしたな?」
「そうだ。あの森には様々なモンスターが所狭しと跳梁跋扈していた。中にはAランクのモンスターまでいるんだ。到底普通の冒険者では、あそこまでたどり着けるはずがない」
「Aランクモンスターが相手となれば、全員Aランクの五人編成での冒険者パーティーでもなければ、討伐できないでしょうな」
「五人編成というと、前衛が三人、後衛が二人ってところか?」
「それが一番バランスがよろしいかと思います」
「そのパーティーなら、Aランクモンスターに勝つことも可能なんだな?」
ヴァルトがうなずく。
「おおむね可能だと思われます。ですが、Aランクパーティーと一口に言いましても千差万別なところがありますし、相性の問題もあるでしょう。それにAランクモンスターの方も同様に、各種色々いますから、何ともいえないところがありますね」
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