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三章 ミュラー最後の事件簿
フランツ=ヨーゼフ
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ミュラーがラクシャインの元へ向かっていた時、鍛冶場ではリューは装備の点検と、街の持ち場で待機している少年兵達と連絡を取り合っていた。
しかし肝心のミュラーからの報告は一向に音沙汰が無い。
そのことにリューは不安を隠せないでいた。
ジラールは窯に焚べるために薪を取りに行っていたところであった。
リューが一人でいたところ、初老の老人が不意に現れる。
見かけからしてこの鍛冶場の主だと、リューは直感した。
リューが会釈すると、初老の老人は一瞥して、嘆息をする。
「ジラールの野朗はどこいった? 全く厄介ごとを持ち込みやがって。それになんだこの現場は? 散らかしやがって。整理整頓しとけって、何度言ったらわかりやがる」
その言葉を聞いてリューが申し訳無さそうに頭を下げる。
鍛冶場の主は、ジラールが整備途中だった武具を観察して、リューに尋ねる。
「これで全部か? アンタらの持ちもんは。仕方ねぇな。ジラールの代わりに俺が見てやろう」
老人の申し出にリューが感謝の言葉を述べようとすると、突然、老人の背後からジラールが現れた。
ハーミットを老人の背中に突きつけ、鋭い眼光を飛ばしていた。
「動くんじゃねぇ。他の奴は欺けても、俺の目は騙せないぜ。この短刀を盗む気だったな、ジジイ」
老人が振り返ろうとすると、ジラールは老人の足を引っ掛け、転ばせる。
そして倒れた老人に向けてハーミットの狙いを定める。
「この短刀、アンタが作ったな。魔法陣は解けなくても、この刃の刃紋の形ですぐにアンタが作ったヤツだってわかったよ。何年弟子やってると思っていやがる、舐めんなよ」
老人が呻く。
「ジラール、テメェ……」
「知ってること吐がねぇと、ぶち抜いて、そこの釜戸で火葬してやる。そっちのネクラも動くな。大方ミュラーを盗聴していやがんだろ? この水晶使ってな」
ジラールがリューにそう告げると、小型の水晶を握り潰した。
リューはやれやれという顔をして、両手を上げる。
そして仕方なさそうに話す。
「お見通しでしたか。しかしどうしても私たちはラクシャイン、そしてフランツ=ヨーゼフを見つけ出したかった。魔法陣を見て確信したんです。この術式を解けるのは術者である、フランツ=ヨーゼフしかいないと……。しかしこれでわかりましたね。その老人の正体が」
ジラールがハーミットの狙いを定める。
「ああ。ジジイ、テメェがフランツ=ヨーゼフだな」
ジラールの言葉に、老人は不適に笑みを浮かべる。
「馬鹿だと思ったが、してやられたわい。そうだ、それがワシのもう一つの名じゃ」
「もう一つ?」
「クラウス、エミル、ヘルムート……。この三つの名前を使って、ワシらはこの国の情報を集めていた。ワシの担当は裏社会。もう一人は大衆の情報。お前の相棒に殺された奴は国政や軍事の情報だ。三人が集めた情報の塊がこの短刀には仕込んである」
「ジジイ! テメェの狙いはなんだ!?」
老人が遠い目をしながら、声を漏らす。
「……自由が欲しかった。そしてあの事を知った時、ただ命が惜しかった。だから、エミルと二人で共謀して、ヘルムートを嵌めた。表向きは奴がフランツ=ヨーゼフだったからな。死は偽装できると思った。しかしアヤツめ、まさか文書を保険にしていたとはな……。おかげで銃口を向けられるハメになったわい」
ジラールはハーミットをの撃鉄をガチャリと落とす。
「テメェは何を知っていやがる!? この短刀の中身を教えろ!」
老人が不気味な笑い声を上げ始めた。
「クッククク……、この国の闇……、……ロゼの計画じゃよ。それにしてもジラールお前さんは馬鹿じゃの。ヘルムートの死の偽装が見破られて、ワシが何もしてなかったと思うかね?」
ジラールが怒号を上げる。
今にもハーミットを放ちそうな勢いだ。
それを見たリューは思わず、身を伏せた。
「なんだとテメェ!!」
「その魔法陣の解術は確かにワシができる。しかし中身はすでに暗号化されている。解けるのはただ一人。エルドラ、ワシの身の安全を守ってくれる人間じゃ」
「誰だソイツは!?」
「そっちの辛気臭い若造が良く知ってるわい」
ジラールがリューを睨みつけると、リューはやれやれといった感じに肩をすくめた。
「……確かに私の依頼人の名前です。しかし私は何も聞かされてませんよ。エルドラの依頼はフランツ=ヨーゼフ、ラクシャインの二人を見つけること。文書を守ること。そしてあなた方の警護です」
すると老人が吐き捨てるように促す。
「ならとっとと、エルドラに短刀を渡せ。魔法陣ならすぐに解術してやるわい!」
すると少年兵達が慌てて鍛冶場に入ってきた。
必死な顔をして、リューに話しかける。
「大鷲! 敵襲だ!! ごめんなさい、水晶で話しても通じなかった」
その報告を聞いて、リューが眉間に皺を寄せる。
「クソ! また通信妨害か! ジラールさん、そこの老人を連れて逃げましょう!」
すると周囲が爆炎に包まれる。
そして炎の中から、金色の髪を揺らした男が姿を現す。
とっさにジラールはハーミットを構えて、出力を上げる。
すると陽炎の中から大気が揺らめくように、死の宣告が響き渡る。
「探したぞ。言ったよな、次に会ったら殺すと」
炎の影に目掛けて、ジラールが大きな光を集めた光弾をハーミットで撃ち放つ。
そしてリューと少年たちに向けて、覚悟を決めて呼びかけた。
「ここは俺が食い止める! みんな逃げろ!!」
その言葉を聞いて、リューはこくりと頷いた。
そして老人を連れて、子供たちとその場から立ち去る。
振り返ると、リューの瞳には、命を賭けた男の後ろ姿が映っていた。
しかし肝心のミュラーからの報告は一向に音沙汰が無い。
そのことにリューは不安を隠せないでいた。
ジラールは窯に焚べるために薪を取りに行っていたところであった。
リューが一人でいたところ、初老の老人が不意に現れる。
見かけからしてこの鍛冶場の主だと、リューは直感した。
リューが会釈すると、初老の老人は一瞥して、嘆息をする。
「ジラールの野朗はどこいった? 全く厄介ごとを持ち込みやがって。それになんだこの現場は? 散らかしやがって。整理整頓しとけって、何度言ったらわかりやがる」
その言葉を聞いてリューが申し訳無さそうに頭を下げる。
鍛冶場の主は、ジラールが整備途中だった武具を観察して、リューに尋ねる。
「これで全部か? アンタらの持ちもんは。仕方ねぇな。ジラールの代わりに俺が見てやろう」
老人の申し出にリューが感謝の言葉を述べようとすると、突然、老人の背後からジラールが現れた。
ハーミットを老人の背中に突きつけ、鋭い眼光を飛ばしていた。
「動くんじゃねぇ。他の奴は欺けても、俺の目は騙せないぜ。この短刀を盗む気だったな、ジジイ」
老人が振り返ろうとすると、ジラールは老人の足を引っ掛け、転ばせる。
そして倒れた老人に向けてハーミットの狙いを定める。
「この短刀、アンタが作ったな。魔法陣は解けなくても、この刃の刃紋の形ですぐにアンタが作ったヤツだってわかったよ。何年弟子やってると思っていやがる、舐めんなよ」
老人が呻く。
「ジラール、テメェ……」
「知ってること吐がねぇと、ぶち抜いて、そこの釜戸で火葬してやる。そっちのネクラも動くな。大方ミュラーを盗聴していやがんだろ? この水晶使ってな」
ジラールがリューにそう告げると、小型の水晶を握り潰した。
リューはやれやれという顔をして、両手を上げる。
そして仕方なさそうに話す。
「お見通しでしたか。しかしどうしても私たちはラクシャイン、そしてフランツ=ヨーゼフを見つけ出したかった。魔法陣を見て確信したんです。この術式を解けるのは術者である、フランツ=ヨーゼフしかいないと……。しかしこれでわかりましたね。その老人の正体が」
ジラールがハーミットの狙いを定める。
「ああ。ジジイ、テメェがフランツ=ヨーゼフだな」
ジラールの言葉に、老人は不適に笑みを浮かべる。
「馬鹿だと思ったが、してやられたわい。そうだ、それがワシのもう一つの名じゃ」
「もう一つ?」
「クラウス、エミル、ヘルムート……。この三つの名前を使って、ワシらはこの国の情報を集めていた。ワシの担当は裏社会。もう一人は大衆の情報。お前の相棒に殺された奴は国政や軍事の情報だ。三人が集めた情報の塊がこの短刀には仕込んである」
「ジジイ! テメェの狙いはなんだ!?」
老人が遠い目をしながら、声を漏らす。
「……自由が欲しかった。そしてあの事を知った時、ただ命が惜しかった。だから、エミルと二人で共謀して、ヘルムートを嵌めた。表向きは奴がフランツ=ヨーゼフだったからな。死は偽装できると思った。しかしアヤツめ、まさか文書を保険にしていたとはな……。おかげで銃口を向けられるハメになったわい」
ジラールはハーミットをの撃鉄をガチャリと落とす。
「テメェは何を知っていやがる!? この短刀の中身を教えろ!」
老人が不気味な笑い声を上げ始めた。
「クッククク……、この国の闇……、……ロゼの計画じゃよ。それにしてもジラールお前さんは馬鹿じゃの。ヘルムートの死の偽装が見破られて、ワシが何もしてなかったと思うかね?」
ジラールが怒号を上げる。
今にもハーミットを放ちそうな勢いだ。
それを見たリューは思わず、身を伏せた。
「なんだとテメェ!!」
「その魔法陣の解術は確かにワシができる。しかし中身はすでに暗号化されている。解けるのはただ一人。エルドラ、ワシの身の安全を守ってくれる人間じゃ」
「誰だソイツは!?」
「そっちの辛気臭い若造が良く知ってるわい」
ジラールがリューを睨みつけると、リューはやれやれといった感じに肩をすくめた。
「……確かに私の依頼人の名前です。しかし私は何も聞かされてませんよ。エルドラの依頼はフランツ=ヨーゼフ、ラクシャインの二人を見つけること。文書を守ること。そしてあなた方の警護です」
すると老人が吐き捨てるように促す。
「ならとっとと、エルドラに短刀を渡せ。魔法陣ならすぐに解術してやるわい!」
すると少年兵達が慌てて鍛冶場に入ってきた。
必死な顔をして、リューに話しかける。
「大鷲! 敵襲だ!! ごめんなさい、水晶で話しても通じなかった」
その報告を聞いて、リューが眉間に皺を寄せる。
「クソ! また通信妨害か! ジラールさん、そこの老人を連れて逃げましょう!」
すると周囲が爆炎に包まれる。
そして炎の中から、金色の髪を揺らした男が姿を現す。
とっさにジラールはハーミットを構えて、出力を上げる。
すると陽炎の中から大気が揺らめくように、死の宣告が響き渡る。
「探したぞ。言ったよな、次に会ったら殺すと」
炎の影に目掛けて、ジラールが大きな光を集めた光弾をハーミットで撃ち放つ。
そしてリューと少年たちに向けて、覚悟を決めて呼びかけた。
「ここは俺が食い止める! みんな逃げろ!!」
その言葉を聞いて、リューはこくりと頷いた。
そして老人を連れて、子供たちとその場から立ち去る。
振り返ると、リューの瞳には、命を賭けた男の後ろ姿が映っていた。
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