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アルベロVSミドガルズオルム②/弱点
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突如、恐ろしい爆破音が聞こえた。
空気が振動し、周辺住居の窓ガラスが砕け、生き残っていた家畜が泡を吹いて倒れた。
アーシェとラピス、グリッツとフギルは鼻血を出し、気を失いかけた。
村の入口で戦っていたエステリーゼたちも鼻血が出た。
魔獣たちは耳、目、鼻、口から鼻血を出し、そのまま泡を吹いて倒れた。
無事だったのは、アルベロとミドガルズオルムだけだった。
「なんだ今の……すげえ爆発音」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ミドガルズオルムは、ノーダメージで爆発音がした方を見ていた。
アルベロは、少なくないダメージを受け、呼吸も荒い。
今の爆発が、リデルの放った『反逆物質砲』だと知る者はここにいない。そして、バハムートが即死したことも。
アルベロは、右腕を巨大化させ大地をえぐった。
「『召喚獣王の怒り』!!」
抉った地面を硬化させ、ミドガルズオルムに向かって飛ばす。
だが、少し進むと飛び道具となった地面はノロくなり、ミドガルズオルムはゆっくりとその場から回避。先ほどからこれの繰り返しだった。
「───……ああ、バハムートのやつ死んだっぽいな」
「なに……?」
「今の爆発、お前の仲間?」
「……知らない」
ミドガルズオルムの質問に答えられなかった。
本当に心当たりはない。そんなことより、アルベロは何度かの攻防で気付いた。
まず、ミドガルズオルムの能力である『スロウ』だ。これはミドガルズオルムを中心に半径二メートルほど展開される『領域』で、この領域に触れると全ての動きは遅くなる。
ミドガルズオルム自身、この能力を飛ばしたり、先にいる対象をノロくしたりはできない。あくまで、自分に接近するモノをノロくする能力のようだ。
直接攻撃、遠距離攻撃、共に効果が期待できない。
「んー……まぁいっか。って、ありゃりゃ?……魔獣、ほとんどやられちゃった。まぁいいや、住人もほとんど死んだっぽいし、ここも滅んだってことで」
ミドガルズオルムは適当に言うと、アルベロを見た。
「あとは───お前を始末して、おしまい」
「……っ」
アルベロは右手を構える。
───使うか。でも……使ったところで『スロウ』に対抗できるのか。
可能性があるとすれば『終焉世界』だ。召喚獣の能力を消し去る究極の右手ならあるいは。
だが、そもそも……アルベロは、一度もミドガルズオルムに触れていない。能力の発動条件は『五指で触れる』ことなのだ。いかに強力な能力とはいえ、この制約からは召喚獣の王だろうと逃れられない。
「お前の考えてること、わかるよ。オレに触れば勝てるんだろうけど、オレはそんな愚を犯さない」
「…………」
アルベロは、一筋の汗を流す。
完全侵食状態で戦う。そうすれば、アルベロはダメージをほぼ受けない。だが、ミドガルズオルムを倒すこともできない。
無駄な時間が過ぎるだけの戦いに意味はない。
「じゃ、やろうか……お前の体力が尽きた瞬間が、お前の最後だ」
ミドガルズオルムは両手に、魔法の球を生み出した。
◇◇◇◇◇◇
アルベロは、ミドガルズオルムの光玉からひたすら逃げていた。
ミドガルズオルムはひたすら光玉を撃ちまくり、アルベロは、それを躱したり『硬化』させた腕でガードしたり……体力だけが消耗される。
「はぁ、はぁ、はぁ───っ、っく」
「辛そうだね」
アルベロは動きを止め、右手を巨大化させ『硬化』させる。
光玉が右手に命中し、衝撃が伝わる。
「っくそ、どうすれば……!!」
「どーれ、少し強めにいくかぁ」
「!?」
光玉が巨大化した。しかも、連射の速度は変わっていない。
「っぐ、なんだこれ……!?」
「ほれほれー……くぁぁ、眠くなってきた。そろそろ諦めてくんね?」
ミドガルズオルムは一歩も動かず、手のひらをアルベロに向けたまま光玉を発射している。
そして、アルベロは違和感を覚えた。
「───……?」
なぜ、ミドガルズオルムは動かないのか。
『スロウ』の力がある以上、アルベロは近づけない。
ミドガルズオルムがアルベロに接近すれば、アルベロなぞ簡単に殺せるのではない。なのに、一歩も動かずに光玉を連射するだけ。
相手はかなりの面倒くさがり、そう言ってしまえば終わりなのだが……アルベロは何故か気になった。
「このまま動かなくても負ける……なら、イチかバチか!!」
アルベロは、賭けに出ることにした。
「おぉ?」
右手を巨大化させ光玉を弾き飛ばし、円を描くように走り出す。
「『召喚獣王の怒り』!!」
地面を抉った瞬間に『硬化』した大地がミドガルズオルムに飛んでいく。
だが、ミドガルズオルムは動かなかった……いや、歩きだす。
アルベロはさらに走る。
「もう一丁!! 『召喚獣王の怒り』!!」
「んん?」
硬化した大地がミドガルズオルムへ。
そして、アルベロはさらに走り、大地を抉る一撃を繰り出した。
「───……やべ」
「やっぱりそうか……!! お前、速く動けないんだな!?」
「…………」
ミドガルズオルムの顔色が変わった。
そう。ミドガルズオルムの弱点は『動きが遅い』ことだった。
ミドガルズオルムはヨタヨタと走り出す───だが、アルベロはそれをさせない。
「逃げ道を無くす───『召喚獣王の怒り』!!」
ミドガルズオルムの逃げ場を徹底的に潰す。
大地の隙間ができないくらい、地面を削りミドガルズオルムへ放る。そして、焦り出したミドガルズオルムは光玉を飛んできた大地に向けて発射……だが、『硬化』を付与された大地に傷一つ付けられなかった。
「や、やっべ……でも、この間を掻い潜って攻撃するのはお前でも無理だろ! 知ってるぞ、『硬化』したモンはお前でも壊せないってな!」
「そうだよ───でも、掻い潜ったり壊す必要はない」
「え」
アルベロは跳躍し、右手を限界まで巨大化させ五指を開く。
右腕を伸ばし、ミドガルズオルムに言った。
「真上からの攻撃なら逃げられない。いくらノロくなろうが、お前の逃げ道はない!!」
「やっべぇ!? この───」
「遅い!! 潰れろ、『召喚獣王の怒り』!!」
アルベロは、全力で右手を振り下ろした。
ミドガルズオルムの周囲に迫る大地、そして上空から迫る巨大な右手。
二メートル圏内に入った瞬間にノロくなる。だが、ノロくなるだけで動きが止まるわけではない。
「やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ちくしょう、逃げ道……」
「だぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
「う、っぎぉ、ぉぉぉぉぉ……」
ゆるり、ゆるりと……ミドガルズオルムは四方からの大地と上空からの右手に潰された。
空気が振動し、周辺住居の窓ガラスが砕け、生き残っていた家畜が泡を吹いて倒れた。
アーシェとラピス、グリッツとフギルは鼻血を出し、気を失いかけた。
村の入口で戦っていたエステリーゼたちも鼻血が出た。
魔獣たちは耳、目、鼻、口から鼻血を出し、そのまま泡を吹いて倒れた。
無事だったのは、アルベロとミドガルズオルムだけだった。
「なんだ今の……すげえ爆発音」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ミドガルズオルムは、ノーダメージで爆発音がした方を見ていた。
アルベロは、少なくないダメージを受け、呼吸も荒い。
今の爆発が、リデルの放った『反逆物質砲』だと知る者はここにいない。そして、バハムートが即死したことも。
アルベロは、右腕を巨大化させ大地をえぐった。
「『召喚獣王の怒り』!!」
抉った地面を硬化させ、ミドガルズオルムに向かって飛ばす。
だが、少し進むと飛び道具となった地面はノロくなり、ミドガルズオルムはゆっくりとその場から回避。先ほどからこれの繰り返しだった。
「───……ああ、バハムートのやつ死んだっぽいな」
「なに……?」
「今の爆発、お前の仲間?」
「……知らない」
ミドガルズオルムの質問に答えられなかった。
本当に心当たりはない。そんなことより、アルベロは何度かの攻防で気付いた。
まず、ミドガルズオルムの能力である『スロウ』だ。これはミドガルズオルムを中心に半径二メートルほど展開される『領域』で、この領域に触れると全ての動きは遅くなる。
ミドガルズオルム自身、この能力を飛ばしたり、先にいる対象をノロくしたりはできない。あくまで、自分に接近するモノをノロくする能力のようだ。
直接攻撃、遠距離攻撃、共に効果が期待できない。
「んー……まぁいっか。って、ありゃりゃ?……魔獣、ほとんどやられちゃった。まぁいいや、住人もほとんど死んだっぽいし、ここも滅んだってことで」
ミドガルズオルムは適当に言うと、アルベロを見た。
「あとは───お前を始末して、おしまい」
「……っ」
アルベロは右手を構える。
───使うか。でも……使ったところで『スロウ』に対抗できるのか。
可能性があるとすれば『終焉世界』だ。召喚獣の能力を消し去る究極の右手ならあるいは。
だが、そもそも……アルベロは、一度もミドガルズオルムに触れていない。能力の発動条件は『五指で触れる』ことなのだ。いかに強力な能力とはいえ、この制約からは召喚獣の王だろうと逃れられない。
「お前の考えてること、わかるよ。オレに触れば勝てるんだろうけど、オレはそんな愚を犯さない」
「…………」
アルベロは、一筋の汗を流す。
完全侵食状態で戦う。そうすれば、アルベロはダメージをほぼ受けない。だが、ミドガルズオルムを倒すこともできない。
無駄な時間が過ぎるだけの戦いに意味はない。
「じゃ、やろうか……お前の体力が尽きた瞬間が、お前の最後だ」
ミドガルズオルムは両手に、魔法の球を生み出した。
◇◇◇◇◇◇
アルベロは、ミドガルズオルムの光玉からひたすら逃げていた。
ミドガルズオルムはひたすら光玉を撃ちまくり、アルベロは、それを躱したり『硬化』させた腕でガードしたり……体力だけが消耗される。
「はぁ、はぁ、はぁ───っ、っく」
「辛そうだね」
アルベロは動きを止め、右手を巨大化させ『硬化』させる。
光玉が右手に命中し、衝撃が伝わる。
「っくそ、どうすれば……!!」
「どーれ、少し強めにいくかぁ」
「!?」
光玉が巨大化した。しかも、連射の速度は変わっていない。
「っぐ、なんだこれ……!?」
「ほれほれー……くぁぁ、眠くなってきた。そろそろ諦めてくんね?」
ミドガルズオルムは一歩も動かず、手のひらをアルベロに向けたまま光玉を発射している。
そして、アルベロは違和感を覚えた。
「───……?」
なぜ、ミドガルズオルムは動かないのか。
『スロウ』の力がある以上、アルベロは近づけない。
ミドガルズオルムがアルベロに接近すれば、アルベロなぞ簡単に殺せるのではない。なのに、一歩も動かずに光玉を連射するだけ。
相手はかなりの面倒くさがり、そう言ってしまえば終わりなのだが……アルベロは何故か気になった。
「このまま動かなくても負ける……なら、イチかバチか!!」
アルベロは、賭けに出ることにした。
「おぉ?」
右手を巨大化させ光玉を弾き飛ばし、円を描くように走り出す。
「『召喚獣王の怒り』!!」
地面を抉った瞬間に『硬化』した大地がミドガルズオルムに飛んでいく。
だが、ミドガルズオルムは動かなかった……いや、歩きだす。
アルベロはさらに走る。
「もう一丁!! 『召喚獣王の怒り』!!」
「んん?」
硬化した大地がミドガルズオルムへ。
そして、アルベロはさらに走り、大地を抉る一撃を繰り出した。
「───……やべ」
「やっぱりそうか……!! お前、速く動けないんだな!?」
「…………」
ミドガルズオルムの顔色が変わった。
そう。ミドガルズオルムの弱点は『動きが遅い』ことだった。
ミドガルズオルムはヨタヨタと走り出す───だが、アルベロはそれをさせない。
「逃げ道を無くす───『召喚獣王の怒り』!!」
ミドガルズオルムの逃げ場を徹底的に潰す。
大地の隙間ができないくらい、地面を削りミドガルズオルムへ放る。そして、焦り出したミドガルズオルムは光玉を飛んできた大地に向けて発射……だが、『硬化』を付与された大地に傷一つ付けられなかった。
「や、やっべ……でも、この間を掻い潜って攻撃するのはお前でも無理だろ! 知ってるぞ、『硬化』したモンはお前でも壊せないってな!」
「そうだよ───でも、掻い潜ったり壊す必要はない」
「え」
アルベロは跳躍し、右手を限界まで巨大化させ五指を開く。
右腕を伸ばし、ミドガルズオルムに言った。
「真上からの攻撃なら逃げられない。いくらノロくなろうが、お前の逃げ道はない!!」
「やっべぇ!? この───」
「遅い!! 潰れろ、『召喚獣王の怒り』!!」
アルベロは、全力で右手を振り下ろした。
ミドガルズオルムの周囲に迫る大地、そして上空から迫る巨大な右手。
二メートル圏内に入った瞬間にノロくなる。だが、ノロくなるだけで動きが止まるわけではない。
「やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! ちくしょう、逃げ道……」
「だぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」
「う、っぎぉ、ぉぉぉぉぉ……」
ゆるり、ゆるりと……ミドガルズオルムは四方からの大地と上空からの右手に潰された。
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