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脇役剣聖、合流する
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「ふう……おしまい」
俺は『冥狼斬月』を鞘に入れ、首をコキコキ鳴らす。
エミネムを見ると、槍を持ったまま呆然としていた。なので、近づいて頭をポンと撫でると、我に返ったのか慌てて首をブンブン振る。
「あわわっ……らら、ラスティス様、お怪我は!?」
「大丈夫だ。お前こそ平気か?」
「は……はい」
エミネムは、たった今俺が倒したドラゴンを見て唖然とする。
ああ、そうか、そういうことか。
「こいつを倒してもダンジョンは消えない。ダンジョンの核はそのまま残っているからな」
「え、えっと……そ、そうなんですね」
「ああ。こういうのは……あった、あそこだ」
俺が指さしたのは、ドラゴンの後ろにある扉。
このダンジョンの最深部で、お宝がある場所だ。冒険者だったら大喜びで向かい、お宝を回収してダンジョンを脱出するのだが……今回の目的はダンジョンの踏破。
エミネムと二人で奥の部屋へ。
エミネムは、俺が首チョンパしたドラゴンを見てゴクリと喉を鳴らす。
「じょ、上級魔族か、それ以上の圧を感じましたけど……ラスティス様、無傷で、一分しないうちに倒しちゃいました……すごい」
「たぶん、ドバトより強いな。まあ、動きもノロいし、攻撃も単調で見切るのは容易かった。サイズもデカいから簡単に斬れるしな」
「そ、そうなんですか? この外殻、すごく堅そうですけど……」
「ま、俺にかかれば……そうだ。こいつの外殻、少し持っていくか。サティ、エミネム、フルーレ。お前たち、武器はあるけど防具はちゃんとしたのないだろ? けっこう硬いし、いい防具が作れる」
俺は抜刀し、転がっているドラゴンの頭の鱗を削ぐように斬る。
ついでに、牙を数本とツノも斬った。ヴォーズくんがいれば持ってもらうんだが……まあ、今回は俺が持つしかない。
ふろしきに素材を包み、奥の扉を開ける。
そこにあったのは、光る結晶の山。
「わぁ~……すごいです」
「あのドラゴンの魔力カスだな」
「……魔力、カス?」
「ああ」
俺は、透明な結晶……大きさはどれも手のひらで包めるくらいだ……を、手に取る。
数は数千個。手のひらで包める大きさだが、けっこう重い。
「あのドラゴンがダンジョンで領域を展開してるってのは言ったよな」
「は、はい」
「上級魔族と違って、ドラゴンの展開した領域は閉じられていないし、練度も低い。だから、ほつれた領域の魔力がカスとなって落ちることがあるんだ。ここは、そのほつれた部分だろうな」
「この結晶、すごいものなんですか?」
「ああ。こいつは、武器防具の素材の繋ぎとしては最高のモンだ。名のある鍛冶屋に見せたら泣いて喜ぶようなモンだぞ……よし、三つあればいいか。こいつも回収しておく」
俺はふろしきに、魔力カスを三つほど入れる……うぐ、重い。
「あの、私もお土産にいくつか持って帰っていいですか?」
「いいぞ。でも、けっこう重いからな」
「はい……よし」
エミネムは、自分のカバンに結晶を入れる。
とりあえず、これで素材は確保した。俺は『冥狼斬月』の柄に触れ、一瞬で抜刀する。
すると、部屋の壁が崩れ、奥にデカい魔力カス……いや、このダンジョンの『核』があった。
「わぁ、大きい魔力の結晶ですね。まさか、あれが」
「あのドラゴン、そしてダンジョンの核だ。よしエミネム、お前は壊せ」
「はい!! でも……あんな綺麗な物を壊すの、ちょっとだけ躊躇っちゃいます」
エミネムは槍を具現化し、クルクル回転させ突きを放つ。
核が砕け散ると、ダンジョンの領域も解除された。そして、俺とエミネムはただの横穴に立っている。
「あ、あれ?」
「どうやら、領域が解けたな……こりゃ運がいいぞ。ほら、すぐ出口だ」
横穴を出ると、すぐ外に出れた。
ドラゴンの領域が解け、ダンジョンが消滅した。
「外、近くてラッキーでしたね」
「大抵は崩れたり、閉じ込められたりするんだ。ぶっちゃけ、大規模ダンジョンの踏破は命懸けになるパターンが多いぞ」
「え……」
「とりあえず、これでダンジョンは踏破。さーて、用事は済んだし、ギルハドレットの街に向かうか。たぶん……地図を見ると、二日くらいかかるな。悪いな、もう少しおっさんと二人で我慢してくれ」
「そ、そんな!! 私、ラスティス様と一緒なら何日でも……」
「はっはっは。そりゃうれしいな」
「はうっ!?」
エミネムの頭を撫でると、顔を赤くして俯いてしまった。
うーん……若い女の子だし、こういうスキンシップは避けるべきかな?
◇◇◇◇◇◇
それからエミネムと二人、ギルハドレットに向けて進んだ。
まあ、特に面白いことはない。
すごい偶然だったのは、ギルハドレットの街が見えて街道を歩いていた時だった。
「あ!! 師匠~!!」
「ん? おお、サティたちか」
なんと、サティ、フルーレ、ヴォーズくんの三人と合流できた。
まさか、町が見えたと同時に、街道の分かれ道で偶然会うとは思わなかった。
サティは、俺を見るなり走り出し、俺の胸に飛び込んできた。
「うおっと、危ないぞ」
「えへへ、師匠にやっと会えましたっ!! 師匠聞いてください、あたしたち小規模ダンジョンを全部踏破して、すっごく強くなって」
「落ち着きなさい。全く……」
「ふわっ」
フルーレがサティの首根っこを掴み、俺から引き剥がす。
「久しぶりね」
「ああ。サティを見る限り、そっちの成果は上々らしいな」
「そっちも。ふふ……エミネム、相当なレベルになってるわ。私と同格か、それ以上……あなた、何をしたの?」
「枷を外した。ちゃんとした方法でな……っと、ちょうどいいや。少し木陰で休憩しよう。いろいろ報告もあるし、情報をすり合わせてからギルハドレットの街に行こう」
というか、素材が重いのでヴォーズくんに預けたい。
俺たちは近くの木陰に移動し、荷物や情報を整理した。
「小規模ダンジョンは全て踏破。私とサティが交代で戦いながら、ダンジョンのボスを討伐したわ。最初は苦戦したけど、最後の方はソロで問題なく終えたわ」
「ああ。かなり強くなったな……」
「ふふん」
サティが胸を張る……あれ、なんか胸が大きくなったか? 成長期ってやつか。
「で、あなたは?」
「こっちも予定のダンジョンは全て踏破した。それと、エミネムの『枷』を外した」
「そう。それで……その強さは?」
フルーレは、エミネムを見る。
やはり、対峙しただけでわかるか。
俺はエミネムを見て頷くと、エミネムは『神器』を出した。
「なっ!? じ、神器……!? エミネム、あなた、神スキルの神髄に迫ったの!? ラスティス、どういうこと!?」
「言っただろ。ちゃんとした方法で枷を外した、って」
「ちゃんとした方法……?」
俺はフルーレに説明すると、仰天していた。
「か、神の完全顕現!? その状態の神を屈服させると、『臨解』だけじゃなく『神器』まで解放されるの!? そんな……というか、神の完全顕現は禁忌のはずよ!!」
「わかってる。でも、俺が神を倒したから問題ない」
「……私やサティは、神器を出せないのかしら」
「わからん。『神魔解放』は一度しか使えないし、あとは……お前たち自身で神に認めさせるくらいか」
「……何年かかるかしらね」
「まあ、なんとかなるさ。よし、話は終わりだ。みんな、ギルハドレットの街に行こう」
立ち上がり、背伸びをする。
サティはいつの間にかエミネムに寄りかかって寝ていた……どうも静かだと思った。
エミネムに起こしてもらうと、目元を擦る。
「す、すみません……寝てました」
「知ってる。さ、町はすぐそこだ。たぶん、もう祭りは始まってる。領主邸に荷物を置いたら、みんなでメシでも食いに行こうか」
「ごはん!! そういえば、お腹空きました!!」
「俺もだ。それと、祭りだし出し物もいっぱいやってるはずだ。お小遣い渡すから、みんな好きに遊んでいいぞ」
「やったあ!! えへへ、フルーレさん、エミネムさん、いっぱい遊びましょうね!!」
「やれやれ、子供ね……」
「ふふ。でも、サティらしいです」
「あ、ヴォーズくん。きみの奥さんもたぶん到着してる。これまでの給金払うから、いっぱい楽しんでくれ」
「あ、ありがとうございます!!」
さて、町は祭りだが……俺は公衆浴場で、これでもかとのんびりさせてもらいますかね!!
俺は『冥狼斬月』を鞘に入れ、首をコキコキ鳴らす。
エミネムを見ると、槍を持ったまま呆然としていた。なので、近づいて頭をポンと撫でると、我に返ったのか慌てて首をブンブン振る。
「あわわっ……らら、ラスティス様、お怪我は!?」
「大丈夫だ。お前こそ平気か?」
「は……はい」
エミネムは、たった今俺が倒したドラゴンを見て唖然とする。
ああ、そうか、そういうことか。
「こいつを倒してもダンジョンは消えない。ダンジョンの核はそのまま残っているからな」
「え、えっと……そ、そうなんですね」
「ああ。こういうのは……あった、あそこだ」
俺が指さしたのは、ドラゴンの後ろにある扉。
このダンジョンの最深部で、お宝がある場所だ。冒険者だったら大喜びで向かい、お宝を回収してダンジョンを脱出するのだが……今回の目的はダンジョンの踏破。
エミネムと二人で奥の部屋へ。
エミネムは、俺が首チョンパしたドラゴンを見てゴクリと喉を鳴らす。
「じょ、上級魔族か、それ以上の圧を感じましたけど……ラスティス様、無傷で、一分しないうちに倒しちゃいました……すごい」
「たぶん、ドバトより強いな。まあ、動きもノロいし、攻撃も単調で見切るのは容易かった。サイズもデカいから簡単に斬れるしな」
「そ、そうなんですか? この外殻、すごく堅そうですけど……」
「ま、俺にかかれば……そうだ。こいつの外殻、少し持っていくか。サティ、エミネム、フルーレ。お前たち、武器はあるけど防具はちゃんとしたのないだろ? けっこう硬いし、いい防具が作れる」
俺は抜刀し、転がっているドラゴンの頭の鱗を削ぐように斬る。
ついでに、牙を数本とツノも斬った。ヴォーズくんがいれば持ってもらうんだが……まあ、今回は俺が持つしかない。
ふろしきに素材を包み、奥の扉を開ける。
そこにあったのは、光る結晶の山。
「わぁ~……すごいです」
「あのドラゴンの魔力カスだな」
「……魔力、カス?」
「ああ」
俺は、透明な結晶……大きさはどれも手のひらで包めるくらいだ……を、手に取る。
数は数千個。手のひらで包める大きさだが、けっこう重い。
「あのドラゴンがダンジョンで領域を展開してるってのは言ったよな」
「は、はい」
「上級魔族と違って、ドラゴンの展開した領域は閉じられていないし、練度も低い。だから、ほつれた領域の魔力がカスとなって落ちることがあるんだ。ここは、そのほつれた部分だろうな」
「この結晶、すごいものなんですか?」
「ああ。こいつは、武器防具の素材の繋ぎとしては最高のモンだ。名のある鍛冶屋に見せたら泣いて喜ぶようなモンだぞ……よし、三つあればいいか。こいつも回収しておく」
俺はふろしきに、魔力カスを三つほど入れる……うぐ、重い。
「あの、私もお土産にいくつか持って帰っていいですか?」
「いいぞ。でも、けっこう重いからな」
「はい……よし」
エミネムは、自分のカバンに結晶を入れる。
とりあえず、これで素材は確保した。俺は『冥狼斬月』の柄に触れ、一瞬で抜刀する。
すると、部屋の壁が崩れ、奥にデカい魔力カス……いや、このダンジョンの『核』があった。
「わぁ、大きい魔力の結晶ですね。まさか、あれが」
「あのドラゴン、そしてダンジョンの核だ。よしエミネム、お前は壊せ」
「はい!! でも……あんな綺麗な物を壊すの、ちょっとだけ躊躇っちゃいます」
エミネムは槍を具現化し、クルクル回転させ突きを放つ。
核が砕け散ると、ダンジョンの領域も解除された。そして、俺とエミネムはただの横穴に立っている。
「あ、あれ?」
「どうやら、領域が解けたな……こりゃ運がいいぞ。ほら、すぐ出口だ」
横穴を出ると、すぐ外に出れた。
ドラゴンの領域が解け、ダンジョンが消滅した。
「外、近くてラッキーでしたね」
「大抵は崩れたり、閉じ込められたりするんだ。ぶっちゃけ、大規模ダンジョンの踏破は命懸けになるパターンが多いぞ」
「え……」
「とりあえず、これでダンジョンは踏破。さーて、用事は済んだし、ギルハドレットの街に向かうか。たぶん……地図を見ると、二日くらいかかるな。悪いな、もう少しおっさんと二人で我慢してくれ」
「そ、そんな!! 私、ラスティス様と一緒なら何日でも……」
「はっはっは。そりゃうれしいな」
「はうっ!?」
エミネムの頭を撫でると、顔を赤くして俯いてしまった。
うーん……若い女の子だし、こういうスキンシップは避けるべきかな?
◇◇◇◇◇◇
それからエミネムと二人、ギルハドレットに向けて進んだ。
まあ、特に面白いことはない。
すごい偶然だったのは、ギルハドレットの街が見えて街道を歩いていた時だった。
「あ!! 師匠~!!」
「ん? おお、サティたちか」
なんと、サティ、フルーレ、ヴォーズくんの三人と合流できた。
まさか、町が見えたと同時に、街道の分かれ道で偶然会うとは思わなかった。
サティは、俺を見るなり走り出し、俺の胸に飛び込んできた。
「うおっと、危ないぞ」
「えへへ、師匠にやっと会えましたっ!! 師匠聞いてください、あたしたち小規模ダンジョンを全部踏破して、すっごく強くなって」
「落ち着きなさい。全く……」
「ふわっ」
フルーレがサティの首根っこを掴み、俺から引き剥がす。
「久しぶりね」
「ああ。サティを見る限り、そっちの成果は上々らしいな」
「そっちも。ふふ……エミネム、相当なレベルになってるわ。私と同格か、それ以上……あなた、何をしたの?」
「枷を外した。ちゃんとした方法でな……っと、ちょうどいいや。少し木陰で休憩しよう。いろいろ報告もあるし、情報をすり合わせてからギルハドレットの街に行こう」
というか、素材が重いのでヴォーズくんに預けたい。
俺たちは近くの木陰に移動し、荷物や情報を整理した。
「小規模ダンジョンは全て踏破。私とサティが交代で戦いながら、ダンジョンのボスを討伐したわ。最初は苦戦したけど、最後の方はソロで問題なく終えたわ」
「ああ。かなり強くなったな……」
「ふふん」
サティが胸を張る……あれ、なんか胸が大きくなったか? 成長期ってやつか。
「で、あなたは?」
「こっちも予定のダンジョンは全て踏破した。それと、エミネムの『枷』を外した」
「そう。それで……その強さは?」
フルーレは、エミネムを見る。
やはり、対峙しただけでわかるか。
俺はエミネムを見て頷くと、エミネムは『神器』を出した。
「なっ!? じ、神器……!? エミネム、あなた、神スキルの神髄に迫ったの!? ラスティス、どういうこと!?」
「言っただろ。ちゃんとした方法で枷を外した、って」
「ちゃんとした方法……?」
俺はフルーレに説明すると、仰天していた。
「か、神の完全顕現!? その状態の神を屈服させると、『臨解』だけじゃなく『神器』まで解放されるの!? そんな……というか、神の完全顕現は禁忌のはずよ!!」
「わかってる。でも、俺が神を倒したから問題ない」
「……私やサティは、神器を出せないのかしら」
「わからん。『神魔解放』は一度しか使えないし、あとは……お前たち自身で神に認めさせるくらいか」
「……何年かかるかしらね」
「まあ、なんとかなるさ。よし、話は終わりだ。みんな、ギルハドレットの街に行こう」
立ち上がり、背伸びをする。
サティはいつの間にかエミネムに寄りかかって寝ていた……どうも静かだと思った。
エミネムに起こしてもらうと、目元を擦る。
「す、すみません……寝てました」
「知ってる。さ、町はすぐそこだ。たぶん、もう祭りは始まってる。領主邸に荷物を置いたら、みんなでメシでも食いに行こうか」
「ごはん!! そういえば、お腹空きました!!」
「俺もだ。それと、祭りだし出し物もいっぱいやってるはずだ。お小遣い渡すから、みんな好きに遊んでいいぞ」
「やったあ!! えへへ、フルーレさん、エミネムさん、いっぱい遊びましょうね!!」
「やれやれ、子供ね……」
「ふふ。でも、サティらしいです」
「あ、ヴォーズくん。きみの奥さんもたぶん到着してる。これまでの給金払うから、いっぱい楽しんでくれ」
「あ、ありがとうございます!!」
さて、町は祭りだが……俺は公衆浴場で、これでもかとのんびりさせてもらいますかね!!
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