追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう

文字の大きさ
上 下
74 / 109
第七章

敵襲

しおりを挟む
 チーム『エンシェント』のアジトには、レイたちが集まっていた。
 リュウキとサリオがオークションから戻ってくるのを、今か今かと待っている。特に、レノは落ち着きなく、リビングをウロウロしては壁に向かってシャドーボクシングを繰り返していた。
 すると、レイが言う。

「レノ、落ち着きなさいよ」
「いや、マジでワクワクが止まんねぇんだ。なぁなぁ、最近のオレらヤバくね? ミドガルズオルムの素材装備に、学園内では注目の的。こんな立派なアジトを手に入れて、さらに貴族が開催するオークションでエピックスキルをゲット……いや、普通に考えたらおかしいって」
「……まぁ、気持ちはわかる。あたしだって、アジトを手に入れるのは早くて三年生になってから、遅くても学園の卒業前だって考えてたし。B級からA級に上がるのも、卒業後かなーって考えてたわ」
「だよな、マジで最高だぜ」

 二人の会話を聞きながら、アキューレはアピアに聞く。

「ね、ね。学園には『長期休暇』があるんだよね?」
「はい。1年間を四期に分けて学習しますので、合計四回休みがあります。春と秋の休暇は短いですけど、夏と冬の休暇は長いですよ」
「じゃ、夏になったらみんな、フリーデン王国に来て。わたし専用のビーチに招待する」
「専用ビーチですか? 素敵ですねぇ」
「うん。綺麗な砂浜、青い空、透き通った海……わたし、裸で泳ぐの。すっごく気持ちいいの」
「は、裸はちょっと……」

 苦笑するアピア。
 セバスチャンがルルカと一緒に、全員のお茶を淹れ直す。
 そして、レイの前に紅茶カップを置こうとして───……セバスチャンの動きが止まった。

「……ん、セバスチャンさん?」
「…………」

 静かに紅茶を置き、セバスチャンは言う。

「……アジトが、包囲されています。悪意のある何者かがいるようです」

 レイの目がスッと細くなり、気配を探る。
 
「……数は二十以上ね。やれやれ……どこかで恨みを買ったのかしら」
「れ、レイちゃん?」
「全員、戦闘準備。敵襲よ」
「ま、マジかよ」

 レイは双剣を手に取り、首をコキコキ鳴らす。
 アピアはハンドタイプの魔導銃を二丁手に持ち、アキューレは室内で弓が使えないと判断し、ナイフを装備。レノは拳をパシッと打ち付ける。ルルカもナイフを装備し、アキューレの傍へ。
 最初に動いたのは、セバスチャンだった。

「お嬢様。少し……数を減らして参ります」
「……わかりました。気を付けて」
「お、おいおい。セバスチャンさん一人で」

 セバスチャンは、リビングから出ていった。
 すると、アピアは言う。

「大丈夫です。セバスチャンは元S級冒険者ですから」
「「マジで!?」」

 レイとレノが驚愕し、アキューレは首を傾げていた。

 ◇◇◇◇◇

 セバスチャンは、普通に玄関のドアを開けて外へ。
 執事が付ける白手袋をキュッとはめ直し、誰もいない玄関前で言う。

「申し訳ございません。このアジトを守る者として……敷地内への無断侵入者に対して、命を奪うことにしています」

 ビキビキと、セバスチャンの細い身体に魔力が満ちていく。
 拳法の構えを取り、静かに告げた。

「何者か存じませんが……お覚悟を」

 ◇◇◇◇◇

 レイたちは、リビングの中心に集まり、それぞれ背を向けていた。
 レノは、小さく「ふぅ」と言い、小声で言う。

「……静かだぜ。マジで敵なんているのか?」
「……いる。わからない? すでに二階から侵入されてる」
「ま、マジ?」
「狙いが分からない以上、下手に動けないわね……」

 と───次の瞬間、リビングに小さな『箱』が投げ込まれた。
 瞬間、レノが動く。
 飛んできた箱を、外に向かって蹴り飛ばしたのだ。
 窓ガラスが割れ、箱が外へ飛んで行く。そして……外で箱が割れ、煙が噴き出した。

「レノ、ナイス!! 双剣技、『十字斬』!!」
「ぐあっは!?」

 飛び込んできた男を、レイは容赦なく斬り捨てた。
 そして、何人もの侵入者がリビングに雪崩れ込んできた。
 侵入者の一人が言う。

「エルフの女を出せ」
「え、わたし?」
「そいつを引き渡せば、命は取らん……どうする?」
「信じると思う?」

 レイは観察する。
 数は十五人。狙いはアキューレとルルカ。リーダー格の男は……強い。
 レイは、アピアとレノ、アキューレに告げた。

「あのリーダー格の男はあたしがやる。雑魚は任せていい?」
「ああ、任せとけ。リーダー!!」
「わたし、前に出る」
「援護はお任せください!!」

 こうして、アジトでの戦いが始まった。

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

 ◇◇◇◇◇

 俺は、クロスガルド王国に向かって飛んでいた。
 第二解放、かなり体力を消耗するけど仕方ない。アキューレが狙われているなら、早く戻らないと。
 それに……アジトには今、レイたちがいる。
 
「急げ急げ急げ『キュァァァァ───……』……ん?」
 
 ふと、鳥のような声が聞こえた。
 そして───ゾワリと背筋に冷たい汗が流れた。
 俺は反射的に真横へ飛ぶと、俺が飛んでいた場所に炎の塊が通過した。
 
「な、なんだぁ!?」

 急停止し、上空を見上げると───……とんでもない生物がいた。
 巨大な四枚の翼を広げ、長い首が三つ、頭も三つある『鳥』だった。
 頭が三つある鳥。一つの口からは雷が、もう一つからは炎が、最後の一つからは冷気が出ている。
 全然、気が付かなかった。

『『『キュォォォォォ───ンンン!!』』』
「くっ……イザベラの差し金かよ!!」

 どうやら、戦うしかなさそうだ。
 俺の中にあるエンシェントドラゴンの知識が教えてくれる。
 この、得体の知れないバケモノ鳥。
 大罪魔獣の一体、『強欲な魔鳥』ステュムパリデス。
 ステュムパリデスは、三つの口から異なる属性の魔力を溜め始めた。

「来やがれ、今日の晩飯にしてやるからな!!」

 俺は右手を巨大化させ、闘気を全開にして向かっていく。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...