聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~

さとう

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虹の彼方・大罪の魔王デスゲイズ②/怒り

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 ブチ切れたデスゲイズは、牙を剥き出しにしてササライに近づく。
 一歩一歩、静かに歩を進める。ササライは無意識に一歩下がるが、首をブンブン振って気を取り直す。

「ふ、フン……もう考えるのはやめだ。デスゲイズ、たとえ復活しようが、過去の遺物であるキミと、未来に向けて力を蓄え、強化してきたボクとじゃ、力の差がある!!」

 ササライが七魔剣士たちに手を向けると、全ての七魔剣が飛び出した。
 そして、全ての剣が融合し、漆黒の刃を持つ刀となり、ササライの手に収まる。

「虹魔剣アルカンシエル……ククク、これが本来のボクの剣。七魔剣っていうのは、ボクの本来の剣を七等分して、分け与えただけのモノさ」
「あ、主……」
「ああ、もう君たちの役目は終わりだよ。ご苦労様」

 ササライは、アークレイたちに笑顔を向けると、剣を一閃。
 虹色の衝撃波が、アークレイたちを吹き飛ばした。
 それぞれが壁に激突。そのまま壁にめり込み、完全に拘束される。

「あ、主……な、なぜ!!」

 アークレイの叫びに、ササライはめんどくさそうに言う。

「きみらは、シナリオ上では『七聖剣士の当て馬』だから、シナリオが変わった今、もう役目は終わってるんだよ。まあ、よく働いてくれたし『忘却王城』の一部として、死ぬまで魔力を吸い続けてあげる」
「そ、そんな……ぅ、ぉぉぉ」

 すると、アークレイたちの魔力が吸い上げられていく。
 あまりにやり口に、エレノアが叫んだ。

「あんた、最低すぎる……!!」
「あはは、それはどう」

 デスゲイズの拳が、ササライの顔面にめり込んだ。

「もぁっぶぁ!?」

 一瞬で接近された。
 剣を振る間もなく、デスゲイズは牙を剥き出しに、瞳をギラつかせ言う。

「貴様だけは楽に死なせん!! ササライ……我輩を、この大罪の魔王デスゲイズを本気で怒らせたこと、後悔する間も与えんぞ!!」
「ぐ……は、はひゃは!! 後悔なんてないね、いいね、これが本当の、魔王を倒して世界を手に入れるシナリオか!!」
「違う。これは貴様をブチ殺す公開処刑だ!!」

 デスゲイズの背に、七枚の翼が展開する。
 虹色に輝く翼、そして両手で結ぶ印。

魔王聖域アビス展開」

 上空に、巨大な『七つの扉』が開く。

「『大罪魔王七天虚空神殿たいざいまおうしちてんこくうしんでん・冥滅天魔《めいめつてんま》』」

 巨大な扉が小さくなり、全ての扉が同時に開いた。

「『暴食バアル・ゼブル』、『色欲アスモダイ』、『強欲グリード』、『嫉妬レヴィヤタン』、『怠惰ベールフェゴル』、『憤怒サタン』、『傲慢ルシファー』」

 それぞれの扉から現れたのは、七体の怪物。
 そのうち一人は、ササライも見覚えがった。

「ば、バビスチェ……」
「おひさ~♪」

 アスモダイと融合したバビスチェは、ササライに向かって手を振った。
 バアル・ゼブルは無数の口を持つバケモノ。
 グリードはヤギのような獣。
 レヴィヤタンは巨大な魚。
 ベールフェゴルは二足歩行の牛。
 サタンは、巨大なドラゴン。
 ルシファーは、スーツを着た麗人。
 全てが、デスゲイズが生み出した、魔王を超える超生物。それらすべてを解放し、デスゲイズはササライを殺そうとしていた。

「いいかお前ら、ササライを殺さずにいたぶれ。徹底的に、徹底的にだ。命乞いをし、醜く、無様に死を冀うまでだ……やれ」

 デスゲイズが命じると、七体の怪物が一斉に動き出す。
 ササライは、剣を構えて叫んだ。

「ははは!! いいね、これこそ……シナリオを超えたシナリオだ!!」

 ◇◇◇◇◇◇

 デスゲイズが指を鳴らすと、エレノアたちを拘束していた十字架が消滅した。
 全員が地面に着地……デスゲイズが何者か知らないので警戒しているが、エレノアが言う。

「味方です!! デスゲイズ、あんた……出てこれたの?」
「…………ああ」

 背後では、ササライが七体の怪物相手に戦っている。
 だが、劣勢……デスゲイズはもう見てもいない。
 折れた聖剣をチラッと見て、パチンと指を鳴らすと、虹色の光に包まれた聖剣が一瞬で復元された。
 そして、光に包まれた聖剣が浮き上がり、それぞれの元へ向かう。

「すっご……一瞬じゃん」
「聖剣はもともと、我輩の権能で作り出した武器だ。この程度、なんてことない」
「あ、あの……エレノアちゃん、この方は?」
「あ、えっと……デスゲイズです。なんと言いますか、魔王なんですけど」
「「「え?」」」

 ロセ、ララベル、サリオスが首を傾げる。
 スヴァルトは、エレノア、ユノ、アオイの反応が薄いことに気付いた。

「……お前ら、知ってやがったのか?」
「う……その、言えなくて」
「フン。こっちにも事情があったのだ。ええい、痛々しい連中め」

 デスゲイズが指を鳴らすと、七人の怪我が一瞬で治る。
 ララベルの腕も生え、嬉しそうに手を押さえた。

「わお、ありがとう!!」
「気にするな……どうやら、終わりが近いな」

 すると、腕を食い千切られ、足が砕け、顔面が腫れあがり、自慢の魔剣がへし折られたササライが、巨大なヤギに頭を齧られながら引きずられてきた。
 デスゲイズは、虹色の炎でササライに傷を一瞬で癒し、拘束し、自分の元へ引き寄せる。

「ササライ、これも貴様のシナリオか?」
「は、ははは……」
「ははははは、楽しいなあ? 我輩のシナリオでは、これから貴様は永遠に、我輩の『七体の怪物』と遊ぶことになるぞ? 我輩の『魔王聖域アビス』の中で、永遠に……ククク、楽しい、楽しいなあ?」
「い、いやだ……嫌だ」

 ササライは、涙目になり首を振る。
 すると、上空に浮かぶ七つの扉が融合し、一つの巨大な扉となった。
 扉が開くと、七体の怪物がそこへ戻る。

「死は一瞬だ。それじゃあつまらない……貴様は永遠に苦しむ。殺さない、絶対に殺さない。わかるか!! 貴様は死なない!! 永遠に苦しむんだ!! くははは、はははははははははははははははははははは!!」
「い、嫌だ、嫌だァァァァァァァァァァァァ!!」

 虚空神殿の扉から、いくつもの鎖が飛び出し、ササライの全身に巻き付く。
 そして、ゆっくりと引っ張り上げていく。

「嫌だ、嫌だ、嫌だァァァァァァァァァァァァ!! 誰か、誰か助け、たすけてェェェェェェェ!! おい魔剣士、助けろ、助けろォォォォォォ!! やだやだやだやだァァァァァァァァァァァァ!!」

 子供のように暴れ、涙を、鼻水を垂らすササライ。
 嘲笑うデスゲイズは、扉の前までゆっくり近づき、ササライに言う。

「ああ、忘れていた……これはもらっておく」

 デスゲイズは、ササライの胸に手を突っ込むと、三つの魔王宝珠を抜き取った。
 パレットアイズ、トリステッツァ、バビスチェの宝珠である。
 力を奪われると同時に『大魔帝国シャングリラ』も解除された。魔界貴族たちの洗脳も解け、魔獣たちの支配も終わる。

「デスゲイズ、やだ……」
「忘れるな。貴様は……我輩を怒らせた」

 ササライは扉に引きずり込まれ、闇に消えた。
 扉が閉まり、ゆっくりと消えていく。
 そして、ササライの『忘却王城』も解除……何もない平原にエレノアたちは立ち、力を限界まで吸われた七魔剣士たちが気を失って倒れていた。
 エレノアが、周囲を見渡して言う。

「お、終わった……の?」
「ああ。魔界貴族の支配も消え、魔獣たちも解放された。まあ……ほとんど倒されたようだがな。この戦い、人間の勝利だ」
「……なんか、全部あんたのおかげみたいな気もするわ」
「……そんなことはない。これは、人間の勝利だ」

 デスゲイズは、エレノアたちを見ずに言った。
 エレノアは笑い、デスゲイズの背中をポンと叩く。すると、アオイとユノも駆け寄ってきた。

「デスゲイズ、すっごい美人だね」
「ああ、そなたには感謝してもしきれないな」
「…………」

 そして、ロセとララベル、スヴァルト、サリオスも近づいて来る。

「あの、デスゲイズさんでしたっけ……あなたのことを聞かせて欲しいんですけど~」
「それもだけど、アンタに感謝!! 腕もうれしいっ!!」
「……とんでもねー強さだな。まあ、感謝する」
「その、ありがとうございました!!」

 ロセ、ララベル、スヴァルト、サリオスも笑う。
 デスゲイズは何も言わない。
 そして、キョロキョロしながら、エレノアが言った。

「ね、デスゲイズ。八咫烏は?」

 デスゲイズは、何も言わなかった。
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