聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~

さとう

文字の大きさ
220 / 227

虹の彼方・大罪の魔王デスゲイズ①/喪失

しおりを挟む
「……ぅ」

 エレノアが目を覚ますと、身体が動かなかった。
 気が付くと、十字架に磔にされていた。しかも、自分だけではない……王城の最上階にある円形の広場を囲うよう、七つの十字架が並んでいた。
 そして、広場の中央に玉座があり、ササライが座っている。
 そして、その背後に、七魔剣士が跪いていた。
 ササライが、最初に目覚めたエレノアを見てニッコリ笑う。

「や、エレノアちゃん」
「……あんた。なに、これっ……!?」

 四肢が拘束され、動けない。
 そして、聖剣が七本、ササライの目の前にある台座に刺さっていた。

「あんた……!!」
「あはは。ごめんね、もうきみたちの出番は終わり。シナリオを変えちゃったし……最後は、ボクとロイの一騎打ちだ」
「ロイ……!?」
「彼はもう、魔王と言っても過言じゃない。今の彼なら、単身でトリステッツァやパレットアイズを倒せるだろうね。まあ……ボクには勝てないけど」

 ササライは、足を組み替える。

「正直、恐ろしいよ。たった一人の人間に、ここまでシナリオを狂わせられるなんて。あの傷であんな芸当ができるのも不思議だ……彼がもっと強くなる前に殺した方がいい」
「……はっ、あんたさ、ロイにビビったのよね? だからシナリオを曲げて、殺しに来たんだ」
「……ま、否定しない。一瞬だけど、恐怖したのは事実。だから……本気でいく」

 ササライは立ち上がり、両手で印を結ぶ。

「『大魔帝国シャングリラ・吸魔状態』」

 すると、莫大な魔力がササライ……そして、ササライの『聖域』に集まっていく。
 その桁違いの魔力に、エレノアが愕然とした。
 
「な……なに、この魔力!?」
「世界を覆う『大魔帝国』は、人間と魔族の魔力によって維持してる。ふふ、魔界も気付いてないけど、魔力の吸収対象は人間だけじゃなくて、魔族も入ってるんだ。今、このボクの『聖域』に全ての魔力を集中させた……つまり、ボクはこの世界で最強の魔族であり、魔王であり、存在となった。あはは……最強ってつまんないと思ってるけど、案外悪くないね」

 人間界、魔界、全ての魔力が、ササライの『忘却王城彼方永久ぼうきゃくおうじょうかなたとこしえ』に集中していた。
 馬鹿げた魔力だった。
 人間がどうにかできる存在ではない。目の前にある七本の政権が、まるで棒切れのように見えた。
 ササライはニヤリと笑い……炎聖剣フェニキアを手に取る。

「ねえエレノアちゃん。今のボクなら……できると思う?」
「な、なにを……」
「ははっ」

 ササライが炎聖剣フェニキアの刀身を掴み、力を込めると……刀身に亀裂が入った。

「な、や、やめ……やめてェェェェェェェ!!」
「やーだ、ねっ」

 バキン!! と……炎聖剣フェニキアの刀身が折れた。
 そのまま、ササライは柄と砕けた刀身を投げ捨てる。

「折れちゃった。あはは、こんなのさっきまでのボクじゃできないや」
「ぁ、ぁ……」
「七つの聖剣は、人間の希望だったかなぁ? まあ……もう希望なんてないよ。シナリオは大幅変更。やっぱりボクに脚本家の素質はないや」

 そして、光聖剣サザーランドを手にし、パチンと指を鳴らす。
 すると、眠っていた七聖剣士たちが目を覚ました。

「はい注目。これ、何かわかるかな?」
「え、え?」
「な、なんだ……?」

 ララベル、サリオスが周囲を見て、自分を見て驚く。
 ユノが起き、スヴァルトが舌打ちし、ロセは砕け散った炎聖剣フェニキアを見て歯を食いしばる。アオイは泣いているエレノアを見て、歯を食いしばっていた。

「光聖剣サザーランド」
「やめろォォォォォォ!!」

 光聖剣サザーランドが、砕け散った。

「氷聖剣フリズスキャルヴ」
「あ……」

 氷聖剣フリズスキャルヴが砕け散った。

「地聖剣ギャラハッド」
「やめなさ……ぁ」

 地聖剣ギャラハッドが砕け散った。

「雷聖剣イザナギ」
「貴様ァァァァァァ!!」

 雷聖剣イザナギが砕け散った。

「風聖剣エアキャヴァルリィ」
「ちょ、やめ」

 風聖剣エアキャヴァルリィが砕け散った。

「闇聖剣アンダンテ」
「このクソ野郎ォォォォォォ!!」

 闇聖剣アンダンテが砕け散った。
 こうして、七本の聖剣が砕け散り……人間の希望も砕け散った。
 サリオスは手をパンパン払い、満足したように言う。

「さて、あとは八咫烏を始末して終わり。ふぅ、新しい魔界の構想もあるし、忙しくなるよ。七魔剣士のみんな、まだまだ頑張ってもらうからね~」
「「「「「「「……………」」」」」」」

 七魔剣士も、今のササライに圧倒されていた。
 ササライは満足そうに微笑み、中央まで歩いて両手を広げた。

「さあ!! ボクの世界が始まる!! あっはっはっは!! なんだろうね、この万能感……いやあ、楽しい楽しい、あっはっはっは!!」

 希望が砕け散り──ササライの世界が始まる。

 ◇◇◇◇◇◇

 その時だった。
 どこからか『虹』が輝き、流星のように放たれた。
 青空を駆ける虹が、真っすぐ向かって飛んできた。

 ◇◇◇◇◇◇

 その虹は──ササライたちのいる王城の最上広場に落ちてきた。
 エレノアは、思わず声を出す。

「……え?」

 それは、一本の矢。
 その場にいる誰もが、声も出せず硬直していた。
 矢……つまり、ロイ。
 ロイの矢が、飛んできた。
 虹色の矢に魔力がまとわりつき、形となる。
 鏃が『核』となり、魔力が溢れ、人の形となる。
 最初はニヤニヤしていたササライだが……徐々に変わる姿を見て、笑みを消し……信じられない物を見る眼となり、驚愕の表情となった。

「…………」

 現れたのは、女だった。
 白銀のロングヘア、側頭部に生えた二本のツノ、そしてドレス。
 この場でその姿を知っているのは、ササライともう一人。

「で……デスゲイズ?」
「嘘だ」

 ササライが真っ先に否定した。
 自分の胸を押さえ、魔王宝珠を確認する。
 封印は解けていない。だが、封印からデスゲイズが抜けていた。

「あれが……」と、ユノ。
「で、デスゲイズ殿?」と、アオイ。
「だ、誰?」と、サリオス。
「……え?」と、ロセ。
「うわ、美人……」と、ララベル。
「……どういう状況だ?」と、スヴァルト。

 七魔剣士たちも困惑している。
 だが、誰よりも困惑しているのは、ササライだった。

「嘘だ!? バカな、封印は解けていない!? 封印から……ぬ、抜け出した!? そんなことできるわけない!! 魔王宝珠封印を抜け出すなんて、お前でもできるわけがない!!」
「…………」

 デスゲイズは、俯いていた。
 覇気がない。
 戦う意思もない。ひどく強いが、ひどく弱い感じだった。
 俯いているので、表情が見えない。

「───……はっ」

 ササライが動いた。
 一瞬でデスゲイズの懐に潜り込み──そのまま胸に手を突き刺した。
 手を抜くと、手には心臓が握られていた。
 デスゲイズはたたらを踏んで後退したが、倒れない。

「まあいい。今のボクは、キミより強い……ほぉら」

 デスゲイズの心臓を握りつぶすと、ササライの手には虹色の『魔王宝珠』が握られていた。

「封印を抜け出す方法を見つけたようだけど、不完全だったようだね。意思のない抜け殻みたいじゃないか……まあ、そういうことで」

 ササライは、デスゲイズの魔王宝珠を握り潰し、バラバラと破片が床に落ちる。
 
「これが、最後の策かな? つまり──彼はもう」
「…………ん」
「は?」
「……………ん」

 デスゲイズの口が、動いていた。
 次の瞬間、砕け散った魔王宝珠が一瞬で復元され、虹色に輝いた。
 そして、デスゲイズの胸に戻り、肉が一瞬で盛り上がる。

「なっ……ま、魔王宝珠を、復元!? バカな……!?」
「…………ん」
「え……?」

 デスゲイズの髪が逆立ち、デスゲイズの身体が少しずつ浮いていく。
 魔力が視認できるほど濃くなり、虹色の輝きがデスゲイズを包み込む。
 圧倒的な『力』が噴き出した。
 地震が起きた。青空に亀裂が入った。世界が叫び出した。
 そして、顔を上げたデスゲイズの瞳は虹色に輝き、ギザギザの牙を見せつける。

「ササライ……」
「ひっ」

 ササライは、生まれて初めて『怯え』を見せた。
 そして、デスゲイズが絶叫した。

 ◇◇◇◇◇◇




「貴様だけは………絶ッッッッッッ対に許さん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...