聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~

さとう

文字の大きさ
150 / 227

戦闘準備

しおりを挟む
 一夜明け、ロイは目を覚ました。
 毛布をグルグル巻いて芋虫のような姿のアオイを見て、ゆっくり立ち上がる。
 身体に包帯が巻かれている姿を確認し、手足を伸ばし、軽くジャンプする。
 すると、アオイが起きた。

「む……」
「あ、悪い。起こしたか」
「いや……ん」

 アオイが起きると、毛布が落ちた……毛布の下は裸で、形のいい胸が見えてしまう。
 ロイは目を反らすが、アオイは気にしていない。
 
「身体の調子はどうだ?」
「あ、ああ。傷も塞がってきた。さすがアオイだな……綺麗に斬られた傷は治りが速いって聞くけど、まさか一晩でここまで……」
「褒めてくれるのは嬉しいが、複雑な気分だ」

 アオイは立ち上がる。
 全裸で身体を伸ばし始めたので、ロイは慌てて顔をそむける。

「見て構わんぞ。私の全ては、あなたの物になるからな」
「い、いや……は、早く着替えてくれ」
「ふふ、わかった」

 アオイはシーツを破いてサラシを作り、胸に巻く。
 そして、器用に下着を作り、乾かした衣服を着た。長い髪をシーツで作ったリボンで結び、雷聖剣イザナギを腰に提げる。

「よし……!! さて、腹ごしらえしたら行こうか。と言いたいが……これからどうする?」
「問題点を整理しよう」

 ロイは椅子に座り、昨日の残りであるトウモロコシを手に取った。
 アオイもトウモロコシを齧り、鍋の水をカップに注ぐ。

「まず、王都の中じゃ戦意が奪われてまともに戦えない……だよな、デスゲイズ」
『ああ。戦意を奪い、暴力を禁ずる。そして欲求を高め、強制的に交わらせる。それがバビスチェの聖域だ。最初はくだらないと思ったが、人間相手にこうもハマるとはな』
「つまり、王都の中じゃ戦えない。だったら……どうする?」
「……王都の、外?」
「それも考えた……でも」
『無駄だろうな。バビスチェが聖域の領域を広げたら、それで終わりだ。その気になれば、魔王は全員、人間界を『魔王聖域アビス』で覆える。そうしないのは『ルール』だからだ』
「つまり、外におびき寄せるのも無理ってことだ」
「……そういうことか」

 アオイはトウモロコシを一本完食。カップの水をグイっと飲む。

「ああ。愛の魔王バビスチェの聖域を解除するしかない。デスゲイズ、聖域はどうすれば解除できる?」
『いくつか方法はある。まず、致命傷を負わせること。そうすれば聖域の維持はまず不可能だ』
「……できると思うか?」
『厳しいな。バビスチェの戦闘力は四人の中で最低だが、それでも四人の魔王に仕える侯爵級、公爵級が束になっても傷一つ負わせることはできん』
「ふぅむ……では、他に方法は?」

 アオイがさらにトウモロコシに手を伸ばす。
 どうやら朝食はしっかり食べるタイプのようだ。

『もう一つは、解除せざるを得ない状況に追い込む。だがこれも現実的ではないな。バビスチェの手番では、愛に狂った人間が同士討ちを始めるのが一般的だ。このまま聖域を維持すれば、愛に狂った人間たちの自滅行為が始まる。ただ待つだけなら、バビスチェは聖域を数年は持たせられる』
「おいおい、マジかよ……」
『持続力は、四人の中でもトップレベルだ。そうなれば、一つしかない』
「お、手があるのか」
『ああ。致命傷を負わせるのに近いやり方だ。ロイ、アオイ……お前たちにしかできない、な』

 デスゲイズは『作戦』を二人に話した。
 すると、アオイが首を振る。

「せ、拙者にそんな大役を……!?」
「……現状、それしかないか。でも、本当にできるのか? 俺、あまり自信ない」
『我輩がサポートする。恐らくだが……いける、と思う』
「お前……自信なさそうだな」
『う、うるさい』
「アオイ、どうする」
「……やろう。戦えるのが拙者たちだけなら、やるしかあるまい」
「ああ。っと……そういえば、エレノアたちは」
『……恐らく、バビスチェの聖域に囚われているだろうな。七聖剣があれば、ある程度の耐性はあるだろうが』
「……アテにはできないな。殿下やスヴァルト先輩も?」
『わからん』

 すると、部屋の隅で丸くなっていたシェンフーが起きた。

『くああ……』
『さて、もう一つの情報源だ。悪いがロイ、我輩のことはコイツに伏せておくぞ』
「ああ。シェンフー、おいで」
『おい、犬じゃないぞ』

 シェンフーは、身体をぶるっと震わせ、ロイの太腿へ飛び乗った。
 ロイはシェンフーを撫で、顎をすりすりしたり、お腹をわしわし触る。すると、気持ちよくなったのか、喉をゴロゴロ鳴らした。

『ごろごろ……』
「犬というかネコだな。虎もネコの仲間と聞いたことがある」
「かわいいなぁ……もふもふだ」
『んん~……気持ちいいぞ』
「って、和んでる場合じゃないな。おいシェンフー、バビスチェのこと、何でもいいから話してくれ」
『バビスチェ様? あたし、ペットだから知らん。たぶんだけど、あたしの裏切りはとっくに伝わってる。バビスチェ様の聖域に踏み込んだら、あたしも囚われるし、あんたらが負けたらあたしも死ぬ』
「だよなあ……うーん」
『あ、でも……アンジェリーナから聞いたことある。バビスチェ様は聖域の維持こそ魔王で最長だけど、強度は一番弱いって』
「……それ、いい情報だな」
『ごろごろ……』

 ロイはシェンフーをモフり、アオイに言う。

「アオイ、活路が見えて来た。俺とお前で、バビスチェの『魔王聖域アビス』を解除するぞ」
「ああ。そうすれば、七星剣士全員で戦える……!!」
「だな。作戦前に、エレノアたちを探したいけど……今回はスピード勝負だ。聖域に踏み込んだ瞬間、勝負が始まる」
「うむ。拙者たちが戦っているのを察知して、来てもらうしかないな」

 アオイが頷く。
 すると、シェンフーがロイの胸に甘えるように頭を擦りつけた。

『なあ、本当に……人間が、魔王様を倒すのか?』
「ああ、倒す」
『……ヒトと魔族の戦いはもうずっと続いている。七聖剣士が魔王トリステッツァ様を追い詰めたのが最後で、もう何年も魔王を追い詰めた聖剣士はいない。でも……トリステッツァ様は討伐された。もしかしたら、お前たちがバビスチェ様を討伐するのかも……』
「当然だろう。魔王は、人間の敵だ」
『……ロイ、お願いがある。バビスチェ様配下の魔族には、手を出さないでほしい。純粋に、バビスチェ様を慕っている魔族も多いんだ。今は魔界にいるけど……なんとなく思う。お前たち人間は、いつか魔界に踏み込んでくる、って』
「シェンフー……」

 シェンフーは喉をゴロゴロ鳴らす。
 ロイはシェンフーを抱きしめた。

「大丈夫。俺たちが倒すのは魔界貴族と魔王だけだ。何の意味もない侵略はしない」
『うん……』
「よし。アオイ、準備ができたら行こう」
「ああ」

 ロイとアオイは立ち上がる。
 ロイは『狩人形態』へ変身し、魔弓デスゲイズを手に取った。

「バビスチェの『魔王聖域アビス』の解除───……半日以内にケリを付ける」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...