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春の訪れ
第450話、寒さは続く
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俺とメージュの騒動の翌日。ランスローとメージュが薬院を訪ねてきた。
薬院には暇を持て余したエルミナがいて、こたつでニコニコアザラシと丸くなるルミナにちょっかいをかけていたが、あまりにしつこく構うもんだから手を引っかかれた。
そんなエルミナの手を消毒していた時に、二人がやってきた。
「あれ、メージュじゃん。どうしたの?」
「いやー……その、村長に話があって」
「アシュト様。少しお時間を頂けないでしょうか」
「いいよ。ささ、入って入って」
来客用ソファに二人を座らせお茶の支度。
エルミナをチラッと見たが、ランスローたちの向かい側に座った……帰る気ないな。
メージュを見ると頷いたので、エルミナは放置した。
二人に紅茶を淹れ、ついでにエルミナのも淹れて座る。
「で、どうした? 昨日の件なら……」
「ち、違うの。その……」
「なによ、メージュらしくないわね。はっきり言いなさいよ」
メージュは、ランスローをチラッと見た。
ランスローは微笑んで頷く……え、なにそのやりとり。
「アシュト様。私はメージュを妻に迎え入れます」
「「ぶっ」」
「うわっ!? エルミナきったない!! あたしの服濡れたぁ!!」
俺とエルミナは紅茶を噴いた。
ランスローは無言でテーブルを拭く。
というか……迎え入れるって、決定事項なのね。
落ち着け落ち着け……よし、落ち着いた。
「え、えーと……妻ってことは、結婚?」
「はい」
「め、メージュ……えっと」
「あはは……その、昨日結婚を申し込まれました……はい」
「わーお……」
ランスロー、やりやがる。
二人を見ると、幸せそうに笑っている。
メージュは照れているが、ランスローがイケメン力で包み込んでいる感じだ。
ふと、エルミナが静かなことに気付いた。
「おいエルミナ、どうし───え」
「…………」
エルミナは、号泣していた。
これにはメージュとランスローも驚いた。
そして……前のめりになり、メージュの手をがっしり掴む。
「メージュ……おめでどぶ!! うぅぅ……げっごん、メージュがげっごん……」
「え、エルミナ……」
「わだじ……うれじい!!」
「……っ」
そして、メージュの涙腺も崩壊した。
テーブルをまたぎ、エルミナとメージュが抱擁した。
「えるみなぁぁ~~~……ありがどぉ~~~」
「うんうん、うれじい……今日は飲み会よぉぉ~~~」
「う~~んっ!! みんな呼ぶぅぅ~~~」
「お、おい……二人とも」
「アシュド!! 春になったらげっごんじぎ!!」
「え、あ、うん」
春になったら結婚式。
そうだな……教会も俺たちの結婚式から使ってないし、使わないと。
ランスローとメージュが帰り、エルミナも泣き疲れたのかソファで寝てしまった。
まさか、エルミナがこんなに泣くとは……メージュは『みんなからかう』とか言ってたけど、こんなにも泣いて喜んでくれる友達がいるじゃないか。
「みゃあ」
「ん、どうした?」
「結婚、するのか?」
「ああ。メージュがな。春になったら結婚式だ」
「ふーん……みゃう」
ルミナが俺にじゃれついてきたので、俺はそっとネコミミを揉んだ。
◇◇◇◇◇◇
メージュとランスローの結婚話は、たったい一日で村中に広がった。
ディアーナなんて結婚式のプランをいくつも用意してメージュに送ったしな。
ローレライはドラゴンロード王国にいるガーランド王に手紙を出したし、竜騎士団も宴会を開いた。ちなみにその宴会に酒樽を俺は送った。
だが、ちょっとだけ寂しそうな子がいた。
村の東屋で、ニコニコアザラシの子供を撫でている子を見つけた俺は、その子に近づく。
「ランスロー、結婚かぁ……」
「クララベル」
「あ、お兄ちゃん」
クララベルだ。
ランスローはクララベルが生まれた時から一緒にいる専属騎士だ。
なんとなくだけど、俺とは違う『兄』みたいな存在だったんだと思う。
俺はクララベルの隣に座り、ニコニコアザラシの子供に手を伸ばす。
「クララベル。ランスローの結婚、聞いたか?」
「うん。姉さま、パパにお手紙出してた……嬉しいんだけど、なんだか変な感じ」
「……ランスロー、好きだもんな」
「うん。あのね、ランスローはわたしがどこに行っても必ず一緒だったの。この村に来て、パパが連れてきてくれて……ランスロー、顔には出てなかったけど、すっごく心配してた」
「…………」
「お兄ちゃん……ランスロー、結婚したら……もう、わたしの騎士じゃないんだよね」
「それは……」
それは、俺にはわからない。
クララベルは寂しそうにニコニコアザラシの子供を撫でる。
なんて声をかけようか───そう思っていた時だった。
「姫様」
「あ……」
ランスローだった。
いつもの優しい笑顔で、クララベルの足元に跪く。
「姫様。お勉強の時間です。ローレライ様がお勉強を見てくれるそうなので、図書館に参りましょう」
「…………うん」
「……姫様?」
「ありがと、ランスロー。その……結婚、おめでとう」
「姫様……ありがとうございます」
クララベルは、寂しそうに笑う。
俺ですらわかったんだ。ランスローが気付かないはずがない。
ランスローは、クララベルの手をそっと取る。
「ランスロー?」
「姫様。私は結婚しても変わりません。姫様の忠実な騎士として、お仕えさせていただきます」
「……でも、いいの? メージュが……」
「騎士とはそういう者です。それに、私が妻を愛しているように、ドラゴンロード王国を、そして姫様も愛しております。愛の形は一つではありません。それに……貴女が御生まれになった時、あなたの騎士に任命された時、私は貴女に誓いました。貴女を、生涯守り抜くと」
「ランスロー……」
っく……イケメンすぎだろ!!
どう考えても愛の告白じゃねぇか……でも、愛の意味が違う。
ランスローは、くすっと笑う。
「それに! 逃げる姫様を追いかけられるのは私しかいません。この役目、他の騎士に渡すつもりなんて毛頭ございませんので!」
「……っぷ、あはははっ! そうだね。ありがと、ランスロー!」
「いえ。では、図書館へ……」
「その前に、ちょっとだけお散歩しよっ! じゃあ行くよーっ!」
「あ、姫様!? お待ちください!!……ではアシュト様、失礼します!!」
「お、おう……気を付けて」
走り出したクララベルを追い、ランスローは走り去った。
どうやら、クララベルの心配はなさそうだ。
すると、ニコニコアザラシの子供が座る俺の太股に上ってきた。
『もきゅ』
「ん、ははは。撫でて欲しいのか」
ニコニコアザラシの子供は、とーってももふもふだった。
薬院には暇を持て余したエルミナがいて、こたつでニコニコアザラシと丸くなるルミナにちょっかいをかけていたが、あまりにしつこく構うもんだから手を引っかかれた。
そんなエルミナの手を消毒していた時に、二人がやってきた。
「あれ、メージュじゃん。どうしたの?」
「いやー……その、村長に話があって」
「アシュト様。少しお時間を頂けないでしょうか」
「いいよ。ささ、入って入って」
来客用ソファに二人を座らせお茶の支度。
エルミナをチラッと見たが、ランスローたちの向かい側に座った……帰る気ないな。
メージュを見ると頷いたので、エルミナは放置した。
二人に紅茶を淹れ、ついでにエルミナのも淹れて座る。
「で、どうした? 昨日の件なら……」
「ち、違うの。その……」
「なによ、メージュらしくないわね。はっきり言いなさいよ」
メージュは、ランスローをチラッと見た。
ランスローは微笑んで頷く……え、なにそのやりとり。
「アシュト様。私はメージュを妻に迎え入れます」
「「ぶっ」」
「うわっ!? エルミナきったない!! あたしの服濡れたぁ!!」
俺とエルミナは紅茶を噴いた。
ランスローは無言でテーブルを拭く。
というか……迎え入れるって、決定事項なのね。
落ち着け落ち着け……よし、落ち着いた。
「え、えーと……妻ってことは、結婚?」
「はい」
「め、メージュ……えっと」
「あはは……その、昨日結婚を申し込まれました……はい」
「わーお……」
ランスロー、やりやがる。
二人を見ると、幸せそうに笑っている。
メージュは照れているが、ランスローがイケメン力で包み込んでいる感じだ。
ふと、エルミナが静かなことに気付いた。
「おいエルミナ、どうし───え」
「…………」
エルミナは、号泣していた。
これにはメージュとランスローも驚いた。
そして……前のめりになり、メージュの手をがっしり掴む。
「メージュ……おめでどぶ!! うぅぅ……げっごん、メージュがげっごん……」
「え、エルミナ……」
「わだじ……うれじい!!」
「……っ」
そして、メージュの涙腺も崩壊した。
テーブルをまたぎ、エルミナとメージュが抱擁した。
「えるみなぁぁ~~~……ありがどぉ~~~」
「うんうん、うれじい……今日は飲み会よぉぉ~~~」
「う~~んっ!! みんな呼ぶぅぅ~~~」
「お、おい……二人とも」
「アシュド!! 春になったらげっごんじぎ!!」
「え、あ、うん」
春になったら結婚式。
そうだな……教会も俺たちの結婚式から使ってないし、使わないと。
ランスローとメージュが帰り、エルミナも泣き疲れたのかソファで寝てしまった。
まさか、エルミナがこんなに泣くとは……メージュは『みんなからかう』とか言ってたけど、こんなにも泣いて喜んでくれる友達がいるじゃないか。
「みゃあ」
「ん、どうした?」
「結婚、するのか?」
「ああ。メージュがな。春になったら結婚式だ」
「ふーん……みゃう」
ルミナが俺にじゃれついてきたので、俺はそっとネコミミを揉んだ。
◇◇◇◇◇◇
メージュとランスローの結婚話は、たったい一日で村中に広がった。
ディアーナなんて結婚式のプランをいくつも用意してメージュに送ったしな。
ローレライはドラゴンロード王国にいるガーランド王に手紙を出したし、竜騎士団も宴会を開いた。ちなみにその宴会に酒樽を俺は送った。
だが、ちょっとだけ寂しそうな子がいた。
村の東屋で、ニコニコアザラシの子供を撫でている子を見つけた俺は、その子に近づく。
「ランスロー、結婚かぁ……」
「クララベル」
「あ、お兄ちゃん」
クララベルだ。
ランスローはクララベルが生まれた時から一緒にいる専属騎士だ。
なんとなくだけど、俺とは違う『兄』みたいな存在だったんだと思う。
俺はクララベルの隣に座り、ニコニコアザラシの子供に手を伸ばす。
「クララベル。ランスローの結婚、聞いたか?」
「うん。姉さま、パパにお手紙出してた……嬉しいんだけど、なんだか変な感じ」
「……ランスロー、好きだもんな」
「うん。あのね、ランスローはわたしがどこに行っても必ず一緒だったの。この村に来て、パパが連れてきてくれて……ランスロー、顔には出てなかったけど、すっごく心配してた」
「…………」
「お兄ちゃん……ランスロー、結婚したら……もう、わたしの騎士じゃないんだよね」
「それは……」
それは、俺にはわからない。
クララベルは寂しそうにニコニコアザラシの子供を撫でる。
なんて声をかけようか───そう思っていた時だった。
「姫様」
「あ……」
ランスローだった。
いつもの優しい笑顔で、クララベルの足元に跪く。
「姫様。お勉強の時間です。ローレライ様がお勉強を見てくれるそうなので、図書館に参りましょう」
「…………うん」
「……姫様?」
「ありがと、ランスロー。その……結婚、おめでとう」
「姫様……ありがとうございます」
クララベルは、寂しそうに笑う。
俺ですらわかったんだ。ランスローが気付かないはずがない。
ランスローは、クララベルの手をそっと取る。
「ランスロー?」
「姫様。私は結婚しても変わりません。姫様の忠実な騎士として、お仕えさせていただきます」
「……でも、いいの? メージュが……」
「騎士とはそういう者です。それに、私が妻を愛しているように、ドラゴンロード王国を、そして姫様も愛しております。愛の形は一つではありません。それに……貴女が御生まれになった時、あなたの騎士に任命された時、私は貴女に誓いました。貴女を、生涯守り抜くと」
「ランスロー……」
っく……イケメンすぎだろ!!
どう考えても愛の告白じゃねぇか……でも、愛の意味が違う。
ランスローは、くすっと笑う。
「それに! 逃げる姫様を追いかけられるのは私しかいません。この役目、他の騎士に渡すつもりなんて毛頭ございませんので!」
「……っぷ、あはははっ! そうだね。ありがと、ランスロー!」
「いえ。では、図書館へ……」
「その前に、ちょっとだけお散歩しよっ! じゃあ行くよーっ!」
「あ、姫様!? お待ちください!!……ではアシュト様、失礼します!!」
「お、おう……気を付けて」
走り出したクララベルを追い、ランスローは走り去った。
どうやら、クララベルの心配はなさそうだ。
すると、ニコニコアザラシの子供が座る俺の太股に上ってきた。
『もきゅ』
「ん、ははは。撫でて欲しいのか」
ニコニコアザラシの子供は、とーってももふもふだった。
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