継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャの日常 授業参観編7 〜

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ミーシャ視点


「さぁ! 皆、保護者を教室の中に入れるので、席に着きなさい!」

担任と共に数人の教師が入って来て、席に着くことを促している。

「皆、これから皇帝陛下と皇后陛下が来られる。失礼のないよう、ジロジロとは見ず、授業に集中するように!」
「「「「はい!」」」」

担任が教壇に立つと、後ろ側にいる先生たちに目配せする。すると先生たちは、廊下に集まっている保護者を中へ誘導しだした。

廊下側からは悲鳴が徐々に近付いて来ているので、お父様たちがやって来ているのだろう。

クラスメイトの保護者は中へと案内されたが、他のクラスの保護者も混ざっていたらしく、まだ廊下にはたくさんの人の姿がある。

「皇帝陛下、皇后陛下が入られます」

その声が聞こえた瞬間、教室が一気に静まった。

「皆、起立! 両陛下に礼!」

その号令に、みんながザッザッと騎士団のような音を立て、すぐさま立ち上がり、後ろを向いて頭を下げた。

「うむ。皆、そう緊張せず、いつも通りの授業をしてほしいのだ」

ネロおじ様の声だ!

優しいネロおじ様は、聞くと安心するようなほっこりする声なのだ。

「アタクシたちのことはいないものと思ってくれて結構よ。ほら、みんな顔をお上げなさい」

レーテおば様の声もする!

二人とも優しくて大好きだ。皇宮に遊びに行くと、いつも歓迎してくれるし、お姉様方やお兄様方も優しい。皇族はみんな優しくて、幼い頃は毎日でも遊びに行きたがっていたものだ。お母様曰く、ノアお兄様やアベルお兄様もそうだったとか。

「皆、皇帝陛下と皇后陛下にお顔をお見せするように!」

いつからここは騎士団の養成所のようになったのか。担任も他の先生たちも教官のようだ。

みんなが一斉に顔を上げると、そこにはうっとりする保護者たちと、にこやかなネロおじ様、キリリとかっこ綺麗なレーテおば様、そして、一歩後ろにお父様とお母様が並んでいたのだ!

「キャー!!」

誰かが悲鳴を上げ、倒れた音が耳に届く。
先生たちが慌てふためき、クラスメイトが両陛下の前で粗相したとあって、先生だけでなく、みんなの顔色もどんどん悪くなっている。

「まぁっ、大変ですわ! 貧血でしょうか。倒れた時にお怪我はございませんでした? 大丈夫そうですわね。先生方、お早く医務室へ運んで差し上げて。親御さんも付き添ってあげてくださいまし」

お母様が先生たちに指示をし、女生徒の保護者を連れ出しあっという間に、何事もなかったかのように片付けてしまったので呆気にとられる。

「緊張されていたのでしょう。他にも、調子の悪い方がいらっしゃれば、医務室に行って診てもらってくださいましね」
「うむ。夫人の言う通りだ。しかし、そこまで緊張することはない。朕は皆を取って食ったりはしないのだ」

ネロおじ様とお母様のぽやんとした態度に、みんなの表情が和らいでいく。

すごい……。

レーテおば様とお父様は、そんな二人を誇らしげに、愛おしそうに見ていたのが印象的だった。

「───では皇帝陛下、皇后陛下、保護者の皆様、授業を始めさせていただきます」
「うむ。いつも通りの光景を朕に見せてほしいのだ」

席に着くと、保護者は後ろにいるので見る事はできない。すごく気になるが、講義に集中しなければならない。
いつもよりも静かに授業は進み、このまま問題なく終わりそうだと思っていたのだが……、

「レーテ、ミーシャがおらぬのだ」

静かな教室に、声のトーンを落として呟いたネロおじ様の声が、思ったよりも響いた。

「静かにしなさいよ」
「でも、ミーシャがおらぬ。欠席しているのであろうか?」
「そんなわけないでしょ。欠席していたら、テオ様もイザベル様も来ないわよ」
「ぬ、確かにそうなのだ。いや、だがミーシャはどこにも見当たらぬぞ?」

ネロおじ様、頼むから今は黙っていてもらえないだろうか。

「キョロキョロしないの。アンタ皇帝なんだから、前だけ見てなさいよ」
「うぬ!? 皇帝だと前しか見てはならぬのか!?」
「おバカっ」

話がそれてくれた……。レーテおば様が話をそらしてくれたのだろう。でも、両陛下がみんなの前でそんな夫婦漫才して大丈夫なのだろうか。

「公爵、ミーシャはどうしたのだ?」

また話を戻した!? お父様、ネロおじ様を何とかして!! 大好きだけど、今はちょっと口を塞いでほしい!

「陛下、皆の迷惑になりますので、黙って前だけを見ていてください」
「やはり皇帝は前しか見てはならぬのか!?」

皇帝陛下って、こんなにおちゃめな方なのだ、とみんながほっこりし、この時は特にバレる事なく授業は終わったのだ。

はぁ……。ネロおじ様が可愛い人で良かった……。

「ミーちゃん、バレなくて良かったね」

コニーが隣の席からこっそり囁く。

「うん。どうなる事かと思った……、」
「では、これから三者面談を始めるので、呼ばれた生徒と保護者の方は別室へ来てください」

さ、三者面談……!?

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