継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャ15歳の日常4 〜

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「はぁ~! もう大満足! この世のものとは思えないほど美味しかったわ~!!」
「本当、クロエ様々だね!」
「内装も素敵だし、ミーちゃんのお祝いも出来たし、素敵な休日になったね。連れてきてくれてありがとう。クーちゃん」
「おほほほっ、崇め奉るがよいぞ」

三人は幸せそうな顔で、モンプティシェリを出る。
このまま街に繰り出すのだろうと思っていたのだが、

「さ、今度はホテルを楽しみましょう!」
「待ってました!」
「エステや温泉だけでなく、他にも色んなアクティビティもあるんだって」

まさかのホテルで遊ぶ気満々だった。

「ホテルで遊ぶの?」
「もちろんよ! 滅多に来れないんだから、堪能するわよー!」
「でも……」

このままここにいれば、お兄様と出会う確率が上がってしまう。

「ああ、お金の事なら気にしないで! パパからたっぷり軍資金巻き上げてきたから!」
「私もお小遣い持ってきたよ」
「同じく!」

そうではない。だが、こんなに楽しそうな三人に帰ろうとはとても言えなかった。

「私エステ行きたい!」
「ヨガもいいよね」
「乗馬も出来るんだって!」

エステやヨガなら、男女別れているから、お兄様に出会う事もないはず……。

「じゃあ、ヨガの後エステにする?」
「乗馬は!?」
「乗馬はアカデミーでも出来るでしょ」
「そんなぁ!」
「あっ、見てこれ、オリジナルのアロマキャンドルやバスソルトも作れるんだって!」
「えーっ、楽しそう!」

ホテルのラウンジでアクティビティの内容が描かれたパンフレットを見ながら盛り上がっているので、なんとなく頷いていたら、ホテルの入口が騒がしくなり、私たちは何だろうと顔を上げる。

「何か騒がしくない?」
「入口に人が集まってるね」
「ホテルのスタッフも集まってない……?」

誰か倒れでもしたのだろうか?

そう思っていたら、タンカで運ばれて行く人が見えて、私たちは心配そうにそれを眺めていた。すると、また、タンカで運ばれて行く人が……、しかも立て続けに二人だ。

「え、何? 毒でもまかれたの!?」
「怖いよ……」
「にしては、皆嬉しそうに群がってない?」

入口でざわつく群衆が、どんどんこちらへと移動してくる。
キャーキャーと叫ぶ声も耳に届く。

「何かこっちに向かって来てない?」
「あ、また運ばれてる人がいる……」
「やっぱり毒!?」

一体何が起きているのだろうか?
と、その時、

『ミーシャ!! ミーシャだぁ!! なにしてるのー!!』

青いキノコが、飛んで来たのだ。

「……ミーシャ?」

当然、青いキノコと契約している人物が近くにいる。そしてその人物はもちろん……、

“ノアお兄様”

私たちの前でピタリと止まった群衆に、今すぐ逃げ出したくなった。

『ミーシャ、そのめがね、なにー? かおにたくさん、よごれある!!』

もう黙れ。この、キノコめ。

「な、何で私たちの前で止まったの……?」
「わからないけど、中心に誰かいるみたい……」
「ねぇ、移動しようよ……」

人混みが割れ、中心に立っていた人物と目が合う。

「ミ……、」
「ノア! こちらだっ」

アスお兄様の声がした途端、「キャーッ」と黄色い声が上がり、その場が騒然とした。
そのお陰で、人混みの中心にいた人物と私たちの間に大量の人が流れ込み、あっという間に見えなくなったのだ。

「ちょ、うそでしょう!? 今の、の、の……、ノア様ぁ!? 今日はラッキーデイ!?」
「いやぁ! 公子様が目の前にいるー!? もしかして今日は世界最期の日!?」
「ノア様……一瞬だったけど、噂に違わぬ……ううん、噂以上に美しい人だったね……」

こちらも群衆と同じく、キャーキャーとはしゃいでいるが、アスお兄様に助けられた……。

でも、目が合ったし、キノコはいたし、絶対バレた。

「ミーシャ、どうしたの? 顔色悪いよ……」
「ミーちゃん?」
「ミーシャ、大丈夫?」

もし、お父様に伝わったら……、アカデミーを辞めさせられる───……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「───アス殿下、一体どういうおつもりですか」
「ノア、何のことだ?」
「ミーシャのことです。先程、おかしな格好をしたミーシャをラウンジで見かけました。話しかけようとした所、殿下が……、」
「ははっ、そう目くじらを立てるな。ミーシャはお忍びで友人たちと遊んでいたのだ。邪魔をするのも悪いと思ってな」
「そうですか……お忍び……」
「ディバイン公爵家の人間は、何かと注目されるのだろう。偶には友人たちと好きに遊ばせてやれば良い。構い過ぎると嫌われてしまうぞ」
「そう、ですね……。年が離れた妹ですから、つい構い過ぎてしまうようです」
「うむ。何事もなかったかのように接してやるのだぞ」
「はい……」

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