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番外編 〜ノア5歳〜 〜
番外編 〜 テオバルドの妖精 〜 ノア5歳、アベル0歳
しおりを挟むテオバルド視点
私の家族にはそれぞれに契約妖精(精霊)がいる。
ノアには青いキノコの妖精、アベルには人型の精霊、愛する妻には小さなマッシュルームの妖精がおり、家族どころか、イーニアス殿下にも赤いキノコ契約妖精がいるのだ。他にも皇帝陛下や皇后陛下には、契約しているわけではないが、連絡用の妖精が付いている。
そして私には……、
『テオ、アカ、すっごーい、じょーほー、てにいれた!』
『テオ、アオもっ、アオもやくたつ!! めーれーして!!』
『えー、何々? ボクも手伝うよ』
頼んでもいないのに、妖精たちが影のように働きたいと集まってくるのだ……。
「そのすごい情報とやらは聞かせてもらおう。後は間に合っている」
『アカ、ゆーしゅー!』
『アカずるーい!! アオも!!』
『ボクだって優秀さ!』
やかましい。なぜ契約もしていない私に集まってくる。
『アカ、きーた! ネロ、そくひ、ひつよー、むすめ、さしだす! かわりに、ちゅーおーせーふ、すいせん、してもらう!』
「ほぅ、まだそのような事を言う阿呆が残っていたか……」
皇帝陛下が一番嫌うやり方だ。放っておいても両陛下の怒りを買って消えていく運命だろうが……。
『その貴族にそう入れ知恵した者がいるんじゃないかなぁ。聞く限り、その貴族、ネロやレーテに全く詳しくないみたいだし』
『アオ、わかった!! そのきぞく、おとしいれる、とくするきぞく、いる!!』
「そうだろうな。恐らく、中央政権の席を狙ったものではなく、その貴族を消そうとする者の画策だ」
『どうする? このボクが調べてこようか?』
胸を張る正妖精も、赤と青のキノコも、主のそばにいなくてもいいのだろうか。
妖精は、どうにもスパイごっこをしたがる面倒な性格だ。
「いや、影に調べさせる。お前たちは帰れ」
『アオのいえ、ここー!!』
『アカ、ごほーびほしー!』
『つまんなーい。もっとボクらを頼ってよ!』
うるさい。
「人間に出来る事は、人間にさせる」
『ボク、テオのそういう所好きだけど、テオは転移出来る契約妖精、欲しくないの?』
「必要性を感じん」
だから早く帰れ。
『でもさぁ、いつまでもベル以外の女性に頼っていたら、ベルが悲しむんじゃないかなぁ』
「……何だと」
確かに考えようによっては、皇后を馬車代わりに利用しているのは、ベル以外の女を頼っていることになるのか……?
「私は、ベルに対して不誠実なことをしていたのか……っ」
『どっちかというと、レーテに対して不誠実じゃないかな?』
私ともあろう者が、ベルを不安にさせてしまうとは……。
「契約妖精……考えてみても良いかもしれんな」
『テオ、よーせー、けーやくする!?』
『アオびっくりー!!』
『テオと契約する妖精なら、高位の妖精でないとだね!』
なぜかキノコたちが騒ぎ出すが、お前たちには関係ないだろう。
「まぁいい。それよりも私はベルに謝罪しなければ」
『レーテに謝罪したほうが良いと思うけどなぁ』
結局妻は、私が謝罪すると初めは驚いていたが、優しく微笑んで許してくれたのだ。やはりベルは女神だ。
翌日───
『私、水の妖精王だから、君と相性が良い、と思う』
『わ、私だって、風の妖精王だから、相性が良いわよ!』
朝の訓練を終えた後のことだ。顔を洗い終わり面を上げると、目の前に水と風の妖精王がいたのだ。
「何だ突然」
『妖精と契約したいって、聞いた』
『あ、あなたは怖いけど、契約してあげてもいいわ!』
考えると言っただけだ。
『転移、得意』
『私も、空を飛ぶのが得意よ! それに、ほらっ、濡れた髪もすぐ乾かしてあげられるの!』
突然風が吹き、水で湿っていた私の髪が丁度いい具合に乾く。
なぜか得意なものを主張してくる妖精王たちに、どうすれば良いものかと息を吐く。そもそも、
「人間が二人の妖精王と契約して、身体に悪影響を及ぼさないのだろうか」
『大丈夫』
『あなた人間じゃないもの!』
私は人間だ。
「……いいだろう。契約をしてやる」
『うん。今から私たち、テオの契約妖精』
『やったー! 最強のパートナーを手に入れたわ!』
うるさい奴らがまた増えたな。
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