継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
63 / 186
番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 イーニアスとアカ 〜 ノア4歳、イザベル妊娠発覚直後

しおりを挟む


「───というわけで、アカとアオがそれぞれノアとイーニアス殿下のそばにいれば、様々な場所に移動出来るようなのですわ」
『妖精と契約すると、そんな事も出来るようになるの!? アタシの能力の意味が!』
「いえ、全ての妖精がそうというわけではないようですの。わたくしはチロと契約しておりますが、特にそういった事は出来ませんもの」

皇后様との妖精通信で、今日あった衝撃的な出来事を伝えると、妖精って本当に便利ね! と結構ぞんざいな扱いになっていっている妖精たちにちょっとだけ同情しそうになった。

妖精も妖精で自由にしているから良いのだろうけど。

『ベル~、チロ、チカラナイノ……』

ごめんなさいと小さな身体をさらに小さくするチロに、そういう意味ではなかったのよ。と慰める。

「チロ……、あなたに力がないなんて、そんな事ありませんわ! 可愛くて、妖精通信も出来て、わたくしをいつも守ってくれているじゃない」
『ベル~』

ほっぺたに擦り寄るチロの頭を、人差し指でなでる。
マッシュルームのような帽子だが、感触はふわふわしていて不思議だ。

『でも、そうなってくると、お互い行き来がしやすくなって良いかもしれないわ。特にテオ様が領地に戻られている時、イーニアスの魔法の訓練がなかなか出来なかったから』
「移動に回数制限は無さそうですから、遊びや魔法の訓練の為だけに来る事も可能ですが……ノアを一人で皇宮に行かせるのはまだ心配ですわ……」
『そうね。ノアちゃんはまだ小さいし……アタシが常に居られればいいのだけど、ほとんど皇城で仕事しているから難しいわ。あのキノコたちに任せるのも不安よね……』

まったくですわ。アカとアオは自由すぎますもの。

「イーニアス殿下をこちらにお迎えするのは問題ございませんが、ノアが成長するまでは、皇宮に一人で遊びに行ってはダメだと伝えておきますわ」
『それが良いわ。アタシもイーニアスによく言っておくから』
「お願いしますわ」



皇后様と妖精通信を終えた翌日の事だ。

「ノア、きょうは、トランポをしよう!」
「はい! わたち、とらんぽだぁいすき!」
『アカも、トランポするー!』
『アオも、トランポするー!!』

朝食前にもかかわらず、当然のようにノアとイーニアス殿下が庭に駆けて行くのだけど……、え? イーニアス殿下、こんな朝早くにどうしたんですの!?

「あっ、イザベルふじん、おはようございます。おじゃましている!」

二人が裏庭のトランポリンで遊んでいる所を呆然と眺めていた時、イーニアス殿下と目が合い、殿下がこちらへやって来て挨拶してくれたのだ。
もちろんノアも「おかぁさま、おはよぉございます!」って挨拶してくれましたわよ。

「え、あ、はい。おはようございます」
「ノアとすこしあそんだら、かえるので、きにしないでほしい」
「はい? もしかして、殿下は転移が出来るか確認の為にお越しになったのですか?」
「うむ! じぶんのめで、たしかめることは、たいせつだとならったのだ」

素晴らしい教えですわね! けれど、皇后様がご心配なさっているのではないかしら……。

「ははうえには、きちんとつたえて、きたのだ!」

用意周到! 将来良い皇帝になりそうですわ。

「そうでしたか。それでしたら安心ですわね。ですが、次からはわたくしとテオ様にも、お越しになる前に妖精通信で教えてくださいましね?」
「うむ! きちんと、つたえるようにする!」

可愛いわぁ。

『アカ、テオにいったー!』
「あら、アカがテオ様には伝えてくださいましたのね」

起きたらテオ様もノアもいらっしゃらなかったから……。
妊娠が分かってから、わたくしだけ朝寝坊する事が増えましたのよね……。

「アカ、アオ、イーニアス殿下とノアを転移で連れ回したりしないようにしてくださいましね」
『アカ、アスと、たくさんあそびたい!』
『アオ、ノアに、キレーなとこ、みせたい!!』

これは……、ルールを設けないと危ないかもしれませんわ!


◇◇◇


「───ですから、アカとアオが子供たちを外に連れ出す可能性があるのですわ」
「……分かった。アレらには私からも注意しておく」

朝食の最中に、妖精の自由な気質をテオ様に訴えると、珍しく険しいお顔をされたテオ様が、わたくしをじっと見てくるので居心地が悪くなる。

どうなさったのかしら……?

「ノアとイーニアス殿下に何かあったらと思うと……もし、アカとアオが子供たちを妖精の世界に連れて行ってしまったら……」

そんな世界が存在しているかどうかは分かりませんけれど。

「大丈夫だ。それよりもベル、」

テオ様は、わたくしの話を遮り、より険しい表情で持っていたスプーンを置くと、久々に場の空気がピリッとしたものに変わる。

「テオ様?」
「その朝食はなんだ……」
「え?」

わたくしが食べている柑橘のゼリーが気に触ったのか、使用人たちの顔も青くなっていく。漂う緊張感に、ノアも食べるのを止めてしまっているではないか。

「? 美味しいですわよ」
「そうではない! なぜ君の前にはそのゼリーしか無い!?」

ああ、そういう事ですのね。

「つわりで、今お食事が辛くて……シェフがこのようにゼリーを作ってくれたのですわ」
「っ……ただでさえあまり食べないというのに……、食べられないだと!?」

何故か、テオ様が絶望の表情をされているのですが、今は子供たちの事を考えてくださいましね?
あら、ノアまでお父様の真似をして。さすがそっくりですわね。


しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】あなたの『番』は埋葬されました。

月白ヤトヒコ
恋愛
道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。 「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」 なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか? 「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」 そうでなければ―――― 「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」 男は、わたしの言葉を強く否定します。 「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」 否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。 「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」 「お断りします」 この男の愛など、わたしは必要としていません。 そう断っても、彼は聞いてくれません。 だから――――実験を、してみることにしました。 一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。 「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」 そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。 「あなたの『番』は埋葬されました」、と。 設定はふわっと。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。

和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。 「次期当主はエリザベスにしようと思う」 父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。 リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。 「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」 破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?  婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。

処理中です...