継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
44 / 186
番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 天使たちのしゅぎょお1 〜ノア4歳

しおりを挟む


まだ妊娠が発覚する前、悪魔が滅んだすぐ後の事だ。ウォルトから詳しい話を聞いて知ったのだけど、わたくしがアベラルド様に攫われていた間、テオ様がノアに魔法を教えていたのだとか。
しかも皇城に連れて行き、指導していたと聞いて驚いた。
なんでも、イーニアス殿下の魔法もテオ様が教えているようで、今日がその指導の日だというではないか!

これは是非見学したいですわ!

と勢い勇んでやって来た皇城で、何だかよく分からない人に絡まれてしまいましたのよ。

「貴女がディバイン公爵夫人?」

わたくしを頭から爪先までジロジロ見て、ご自分のお名前を教えてくださらないこの女性は、見た目は15歳くらいかしら? 可愛らしい容貌をしているのだけど、お胸は豊満で、アンバランスな魅力がある方だわ。

「……どちら様でしょうか?」
「私の事、ご存知ないの!?」

皇帝陛下の愛妾や側妃様たちはもう離縁され、実家に戻られているし、第一皇女殿下はまだ10歳……。他に、現在皇族の次に位の高いディバイン公爵夫人という立場のわたくしに、ここまで高圧的な態度を取れる女性って、おりませんのよね。伯爵令嬢だった頃ならいざ知らず……。

という事は、若さ故の暴走かしら?

この位の年の頃には、怖いもの知らずに目上の方に絡むご令嬢がいらっしゃると聞きますし……。
きっと、若人の社交界で幅を利かせているご令嬢に違いはないのでしょうけど、わたくし、デビュタントしたばかりのご令嬢が出るパーティーに参加したことがないのでよく知りませんのよ。

もちろん貴族名鑑は覚えておりますから、お名前を教えてくだされば、どんなお家の方か分かりますけれど……。

はぁ……。ノアの勇姿を見に来たというのに、おかしな人に絡まれてしまいましたわね……。

「わたくし、お若い方のパーティーにはあまり出席いたしませんので、あなたのお顔を存じ上げないのですが、お名前をお聞かせいただけますかしら?」
「お若い方のパーティーって……あなたも私たちとそう変わらないのではなくて!?」

確かに年は3、4歳の違いでしょうが、精神的には30代なんですもの。

「ご挨拶していただけないようですので、わたくしは失礼いたしますわ」

それでもデビュタントされた立派なレディですもの。デビュタント前でしたら教えて差し上げますけれど、大人のレディへは、遠回しの注意しか出来ないのが暗黙のルールですものね。

貴族ってそういうところが面倒ですわ。

「なっ、ちょっと待ちなさいよ! 貴女、挨拶も出来ないの!?」

このご令嬢、きちんと教育を受け直した方が良さそうですわ。ここまでくると、遠回しの注意も何もございませんわよね。

「わたくし少し急いでおりますの。どなたかは存じ上げませんが、突然話し掛けてこられて、お名前も教えてくださらない方に時間を割く事は出来かねますわ」
「っ私は、この国の宰相の娘よ!! あなた何様のつもりよ!!」

これは、アレだわ。マナー教育を怠ったご令嬢というやつ。
昔のわたくしより酷いですわよ。

「まぁ、宰相というと、ハリス侯爵ですわね」
「そうよ! 私は、この国の“ナンバー2”の娘なの」

ハリス侯爵って確か、皇后様とテオ様に小間使いのように働かされて、疲れきって可哀想なほど頭が薄くなってしまったあの方ですわよね。

「ハリス侯爵はお人柄も良い、優秀なお方だと聞いておりましたが、ご令嬢の教育には失敗したようですわね」
「何ですって!!」
「この事は、ハリス侯爵にお伝えしますわ。まさか皇后様と皇族を侮辱なさるなんて」 

まさか宰相がナンバー2だと思っているなんて。
皇帝陛下の次の位は皇后、次いで皇族ですわよ。実質、皇后様と同等の権力を持つのはディバイン公爵ですが。

「私は皇后陛下も皇族の方々も侮辱なんてしてないわ……っ」
「先程、宰相がこの国のナンバー2と仰ったではありませんか。皇帝陛下に次いで高位の存在は、皇后陛下、それに続いて皇族、そしてディバイン公爵ですのよ。とはいえ、デビュタントしたばかりの子供ですもの。ハリス侯爵にはお伝えいたしますが、大事にする気はございません。あなたはお家にお帰りになって、もう一度学び直す事をおすすめいたしますわ」

ご令嬢は真っ赤になって震えているが、本当でしたら皇族侮辱罪というれっきとした犯罪ですのよ。
ハリス侯爵もお気の毒に……この事を聞いたらまた髪の毛が抜けてしまうかもしれませんわ。

何も言えなくなったご令嬢の横を通り抜け、わたくしはノアのいる場所へと急いだのだ。

このことが、ちょっとした騒動になる事など、知らぬままに───……




「イーニアス殿下、あの的に向け、力を抑えたまま火の魔法を放ってください」
「うむ!」
「ノアも、イーニアス殿下の魔法をよく見ているように」
「はい!」

皇城内にある騎士団の訓練場の一部を借りて、テオ様が子供たちに指導している姿が見える。

あのテオ様が、本当に先生をしていますのね……。

先程の事で少し遅くなってしまったが、まだ指導は始まったばかりのようでホッと安堵の息を吐く。

愛息子の勇姿は、目に焼き付けておきたいですもの!

「二人は魔力コントロールも上手く出来ている。後は魔法に慣れる事が大切だ」
「「はい!」」

子供たちは素直に言う事を聞いて頑張っていますのね。


「お、おいっ、あのご令嬢、何であんな格好してるんだ!?」
「ドレスがビリビリじゃないか……」

何だか周りの騎士たちが騒がしいですわね?

騎士たちの目線の先がわたくしの後ろだと気付き、後ろを見ると、ドレスの袖やスカートがビリビリに破けた、先程のご令嬢が立っているではないか!

「え」
「酷いわ! どうしてこんな事をなさるの!?」

はいぃぃ?!

しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?

藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」 愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう? 私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。 離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。 そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。 愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全8話で完結になります。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...