継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
上 下
32 / 187
その他

番外編 〜 ネロウディアスの模型展示会2 〜 ノア7歳

しおりを挟む


ネロウディアス皇帝視点


「素晴らしいデス皇女殿下! ここまでまとまった企画書が書けるなんて、今から将来が楽しみデース!」

ベル商会から派遣された、このちょっと癖のある話し方をする女性は、エレール・モア・ティッシューという、ティッシュー男爵家の夫人らしい。何でも外国から嫁いで来たそうで、若くして(30代)ベル商会の管理職にまで上り詰めた優秀なイベントプランナーなのだとか。

イベントプランナーが何かはよくわからぬが、ディバイン公爵夫人が、この夫人に任せれば大丈夫だと太鼓判を押す者なので、朕も安心して見ていられるのだ。

「アイデアはお父様が、数字の面ではお母様が助言をくださったので、お父様とお母様のお陰です」

我が娘ながら、謙虚で良い子なのだ!!
照れながら話す姿も可愛いのだぞ。

「それでも、皇女様自身が企画し、まとめ上げたものデス。素晴らしいデースネ!」

うむうむ。そうであろう。朕の娘はすごいのだ!

「ありがとうございます」

エリザは将来ベル商会で働きたいと言っていたから、今回の事は良い経験になるだろう。
レーテもきっと、それを思って提案したのだな。やはり朕のレーテは優しく聡明な聖母なのだ!

「それで、今回の組立式模型の展示会は、かなり大規模になりそうデスが、ここまで数字も出していますし、会場を先に押さえておくべきではないかと思いマース」
「では、規模は企画書から変える必要はないのでしょうか」
「はい! 問題ありまセン! こちらの企画書は大きな変更なく進める事が可能デース」
「良かったぁ!」

朕をチラリと見る娘に、うむと頷く。

「ただ、ここに書いてある会場候補の皇城は、一般参加の方が気軽に来られないので却下デス」

な、何だと!? それでは、朕の参加が難しくなるではないか!?

「そこをどうにか皇城には出来ぬのか!?」
「無理デスネ~」
「!?」

朕が楽しみにしている模型の展示会が……っ、いや、どこであろうと必ず参加してやるのだ! 愛娘の企画した、大好きな模型の展示会、朕は諦めぬぞ!!

「う~ん……あっ、確か“おもちゃの宝箱”帝都支店が先日庶民街にも出来ましたよね!」

エリザが思いついたようにティッシュー夫人に問いかける。

「はい。庶民の皆様にも大変ご好評いただいておりマース」
「確か、元商家のお邸を丸ごとおもちゃ屋にしたと聞いています。それなら、空きスペースもあるのではないかと思うのです!」

そうなのか? 初めて知ったのだ。

「なるほど、おもちゃの宝箱でしたら一般の方も参加しやすいデース。実はディバイン公爵夫人は、イベントスペースというものを庶民街の支店に作られているのデス。そちらが使用出来るか、確認しておきマース!」

さすが朕の愛娘なのだ! すぐに会場候補を出すとは、レーテに似たのだな。

うんうん頷いていると、いつの間にか打ち合わせが終わり、二人はお別れの挨拶をしていた。

「では、よろしくお願いします!」
「またご連絡いたしマース」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それから三ヶ月後、朕が待ちに待った組立式模型の展示会前日───

三ヶ月前から大々的に告知していた甲斐もあってか、出展者が相当数集まり、もはや今日が本番ではないかと言わんばかりの熱気に包まれている。

ディバイン公爵夫人が、塗装、組立の作業ブースを作ってくれた事で、ギリギリまで出展する作品を作り込もうとする者たちでブースは溢れているし、会場は会場で、作品を新素材のケースの中に入れたはいいが、角度で悩んでいる者も多数見受けられた。

勿論朕も、自らの大作を持ってきているのだが、出展ブースはクジで決まるので、ドキドキでクジを引く列に並んでいる所なのだ。

「おおっ、ジェラルド国王! そなたも参加していたのか!」

そこで偶々出会ったのが、リッシュグルス国の国王だった。

「ネロウディアス皇帝陛下! もちろんですっ、こんな楽しそうな集まりに顔を出さないわけありません! 僕の渾身の作品を持って来たので、早く陳列したくてウズウズしています!」

お互いお忍びで来ている為、一般貴族のような格好をしているが、ジェラルド王を護衛している者は顔を半分マスクで隠しているので、余計目立って全く忍べておらぬ……。少し怖いのだ。

……ん? この者はどこかで……、

「もしや、ユニヴァ殿か!?」

ジェラルド王の兄の、ユニヴァ殿ではないかとつい声を上げてしまう。すると、

「ネロウディアス皇帝陛下、申し訳ありませんが、少し声を抑えていただけますと助かります」
「うぬ?! すまぬのだ。しかし、兄弟で我が国へお忍びとは、国は大丈夫なのか?」
「問題ありません。身代わり……ゴホンッ、優秀な部下もおりますので、上手くやっております」

今身代わりって聞こえたが!?

「そ、そうなのか……。ユニヴァ殿は作品の出展はするのだろうか?」

あえてマスクには触れず、作品について質問してみると、「私は弟の付き添いですから、出展する気はありませんし、弟の作品に勝てる腕も持ってはいませんので。大体弟の作品以外に興味もありません」と即答されたのだ。

「そ、そうか……」

じゃあ何しに来たんだ。とはさすがに言えなかったのだ。


しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

4度目の転生、メイドになった貧乏子爵令嬢は『今度こそ恋をする!』と決意したのに次期公爵様の溺愛に気づけない?!

六花心碧
恋愛
恋に落ちたらEND。 そんな人生を3回も繰り返してきたアリシア。 『今度こそ私、恋をします!』 そう心に決めて新たな人生をスタートしたものの、(アリシアが勝手に)恋をするお相手の次期公爵様は極度な女嫌いだった。 恋するときめきを味わいたい。 果たしてアリシアの平凡な願いは叶うのか……?! (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

処理中です...