31 / 187
その他
番外編 〜 ネロウディアスの模型展示会1 〜 ノア7歳
しおりを挟む※時系列はイーニアス殿下が8歳。ノア君が7歳頃のお話です。
ネロウディアス皇帝視点
「レーテ、朕は決めたのだ!」
「何?? 突然どうしたの?」
朕の執務室で、レーテが書類と睨めっこする中、朕は椅子から立ち上がる。
その勢いで、机に積まれた書類が朕に向かって雪崩れてきたが、今は気にしてはいけないのだ。
そのまま拳を握り、天井を見ながらこう宣言する。
「朕は、組立式模型愛好家の作品を集めた、展示会を開催する!!」
何を言ってるんだコイツは。という顔をしているレーテも変わらず可愛くて大好きなのだ。
レーテがこういう顔をするのは朕にだけだから、余計愛おしいのかもしれぬ。
……ちょっ、レーテ!? そんな蔑んだ顔をするのだけは止めてください。お願いします。
「朕が組立式模型を始めて早三年。つまり、組立式模型が販売されて三年が経つという事。そろそろ全領の模型愛好家を集めて、展示会を開催しても良い頃合いだと思う!」
「そういうのって、普通販売元がやるもんじゃないの?」
「もちろんディバイン公爵夫人には提案している!!」
「はぁ!? あんたアタシに話す前に、もう言っちゃったの!?」
ムムッ、もしかして……ヤキモチ!?
「あんた、前も勝手な事して大騒動になったのを忘れたとは言わせないわよ!? 報連相は大事だって、何度も言い聞かせているでしょうが!」
違ったのだ……。
「うぅ……、すまぬのだ」
「まったく……それで、イザベル様は何て言ってるわけ?」
「うぬ! ディバイン公爵夫人は乗り気だったのだぞ!」
「あら、そうなの? イザベル様、ショッピングモール建設で忙しくしているみたいだったけど……」
確かにディバイン公爵夫人は忙しそうだったから、朕が全て用意するとゴリ押ししてきた。
「大丈夫ですの?」と心配されたが、朕のこの模型愛は、誰にも負けぬ!
「レーテ、今や組立式模型は模型専門店が出来る程の人気を誇る。全領、いや、世界中から愛好家を集め、各々の自慢の作品を見せ合う場を設けるのは、模型生産国である我が国の責務なのだ!」
「いつからウチは模型生産国になったのよ。あんたもしかして、自分が全部やるから任せてくれとかなんとか言ったんじゃないでしょうね」
「な、何故分かったのだ!?」
「やっぱり!! 忙しいイザベル様がそんな面倒そうな事を今するとは思えなかったのよ!」
さすがレーテ。朕の事もディバイン公爵夫人の事もよく分かっているのだ。
「ディバイン公爵夫人に提案したのも、夫人が乗り気だったのも本当なのだ……。でも、ショッピングモール建設の後でって言われたから……、朕がやるからって……」
「このお馬鹿朕!」
レーテに怒られた……。
「もうっ、アタシも今レール馬車の事で忙しくしてるのよ! 手伝ってあげられないのに、どうするの!」
手が空いてたら手伝ってくれていたという事か! やっぱり朕のレーテは世界一優しい!
「それは大丈夫なのだ! ベル商会からも人が来るし、エリザも率先して準備してくれると言ってくれているのだぞ!」
「エリザが?」
「うむ。あの子は朕に似て組立式模型が大好きだからな。お互い一番自信のある模型を展示しようと約束したのだ」
「そう。エリザが……、エリザももう13歳だものね。そろそろ、大規模な催しを取り仕切らせるのも良いかもしれないわ」
レーテはそう言って、何かを思いついたように部屋を出て行ったのだ。
「レーテ……? あの、まだ話の途中……」
独り寂しく残された朕は、その後雪崩を起こした書類を泣きながら整理し、執務を続けたのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お父様、お母様から、組立式模型の展示会の企画書を書いて、ベル商会の人に渡すように言われたわ!」
その夜、子供たちとの晩餐で、第一皇女のエリザベスが嬉しそうに朕に言った話に衝撃を受けた。
「え、待ってエリザ、それは朕がやると……」
「ネロ、そろそろエリザにも催しを取り仕切る事を学ばせるべきでしょう。女性が嫁ぐだけの時代はもう終わったのよ。今や女性は、実業家や政治家、教育者、様々な場で活躍するようになってきているのだから」
レーテは朕の言葉を遮ると、もう頷く事しか出来ないよう、言葉巧みに説かれたのだ。
「エリザお姉様、わたしもご一緒したいです!」
そこへ目を輝かせたイーニアスが立候補する。それを皮切りに、他の子供たちも、ずるい! 自分も!! と言い出したので、食堂は一気に騒がしくなった。
「こらこら、あなたたちマナーが悪いわよ。ほら、ちゃんと席に着きなさい」
12人の子供たちを一瞬で黙らせる事の出来るレーテは、多分聖母の生まれ変わりなのだと思う。
いつもこうして家族が和気あいあいと食事出来るのは、レーテのお陰なのだ。
「皆、今回はエリザの学びの場として、組立式模型の展示会を開催する予定なのだ。皆も大きくなったら、エリザのように学ぶ機会を必ず与えるので、今回は姉を見守って欲しいのだ」
朕がそう頼むと、子供たちはすぐに、「はい」と良いお返事をした。
皆が良い子に育ってくれて、朕は嬉しいのだ。
「お父様は今回、フォローに回ってくださるとお母様から聞きました! 私、頑張るから、よろしくお願いします!!」
「うむ。朕と共に良い展示会にしようではないか」
こうして、朕たちのプロジェクトは始まったのだ。
1,544
お気に入りに追加
8,665
あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!
甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・

私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる