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第二部 第5章
546.強奪 〜 ??? 視点/イザベル視点 〜
しおりを挟む??? 視点
昔から俺は、何をするにも兄に勝っていた。双子ではあったが二卵性。外見は全く似ておらず、顔も身体も頭の出来も、全て俺が上だった。
祖父の代で国が滅び、俺のお陰で新たな国として認められた。それなのに、新たに建国した俺の国、その王に選ばれたのは、兄だった。
たった数秒、たった数秒の差だ。俺より早く産まれたというだけで、俺の国を奪い、俺がいないと何もできないくせに、俺の方が上なのに、何故! 奴は国王で俺は副王なのか!!
ありえんだろう!! 滅びた国をまた新たな国として認めさせたのも、この国の法律を制定したのも全部、誰のお陰で成したと思っている……っ
全て俺のお陰だ!
「俺よりも劣る者が、俺よりも上にいる事は許されない……絶対に!!」
ーーーーーーーーーーーーー
「───まさか、皇城に出入りする業者がエンプティだったなんて……、業者の選定をやり直す必要が出てきたわね」
「れ、レーテよ、落ち着くのだ……あわわ」
一見冷静な皇后様だけれど、怒りで目がすわっており、握られた拳は今にも隣に座ってお茶を飲んでいる皇帝陛下を殴りそうな怖さがある。
「門番の家族が盾に取られたのも問題だ」
テオ様は震える皇帝陛下を無かった事にして、問題点を挙げていく。大人たちが集まって、真剣に話をしているのは、ディバイン公爵家のリビングだ。
エリス王女たちロギオンの方たちには遠慮してもらったこの場で、妖精や影からの情報で、お父様が貴族街のとある屋敷に監禁されている事、門番が家族を人質にそれを見逃した事、そして、皇城に出入りする業者がエンプティの手の者だった事が発覚したのだ。
わたくしはお父様が監禁されている事が、心配でたまりませんわ。横に座っているオリヴァーも顔色が優れないのは、わたくしと同じ気持ちなのだろう。
「それでイザベル様、今日はアタシたちを集めてどうしたというの?」
皇后様が怒りを抑え、わたくしに向き直ると、皇帝陛下はほっとした顔で息を吐く。殴られなくて良かった、とでも思っているのかもしれない。
「皇后様、テオ様、わたくしとオリヴァーはお父様が心配で、何かできないかと、ロギオン国について調べておりましたの」
「ベル、君はまたそんな無茶を……」
心配そうに、しかし呆れた溜め息を吐いて、手を握られる。
「テオ様、ご心配をおかけして申し訳ありませんわ。けれど、何もしないでいる方が、恐ろしい事ばかり考えてしまって、落ち着きませんの」
「ベル……」
「それで、ロギオン国の歴史や、歴代の国王について調べていたのですわ」
オリヴァーに目配せし、頷いた弟が資料を手に持って立ち上がると、机の真ん中に置いたのだ。
「お姉様と調べていた所、歴代の国王の共通点がある事に気付いたのです」
弟は資料を捲り、国王の共通点を挙げ始める。皆、最初はわたくしのように、偶々ではないか、と思っていたようだが、ある一言で顔つきが変わる事となる。
「歴代の国王は皆一様に、国王となると同時に人格が豹変していました」
歴代が皆、というのは明らかに不自然だとわかるだろう。
「そこでわたくしは、アベラルド様の事を思い出したのですわ」
突然わたくしがアベラルド様の話を出すものだから、オリヴァー以外の者は訝しむようにわたくしに注目する。
ロギオン国とアベラルド様は、一切関係ないように思っているからだろう。
「アベラルド様は、1500年という年月を、己の魂を移し替えて生きてきましたわ」
「え、ええ。それは知っているけど……」
皇后様が、テオ様のように眉間に皺を寄せている。
珍しく、戸惑いが顔に出ておりますわね。
「わたくし、最初は悪魔が与えた能力だと思っておりましたのよ」
「アタシもそうだと思っていたけど、違うと言うの?」
「朕もそうだと思っていた」と皇帝陛下も首を傾げている。テオ様はわたくしの話に耳を傾け、静かに続きを待っていた。
「はい。悪魔が与えた能力は、人の特異魔法を奪うものだったとしたら、どうでしょうか」
「!?」
魂を違う身体に移すというものよりも、強奪という能力の方が、実にあの悪魔らしいではないか。
アバドンの陰湿な性格を考えると、聖者であり、誰より優しい性格であったアベラルド様を苦しめる為に、強奪の能力をわざと与えたんじゃないかって、そんな気がしますのよ。
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