継母の心得

トール

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第二部 第4章

512.お母様の騎士だから

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わたくしの目の前に、可愛いノアが、両手を広げ立っている。後ろ姿で表情はわからないが、凛々しい顔をしているに違いないと思わせる、堂々とした背中なのだ。

「ノ、ノア……」
「わたちのおかぁさま、いじめたら、めっ!」

何が起きたのかわからない、というように、さすがの王女たちも目を丸くし、皇后様も口を開けてノアを見ている。

そういえば、皇后様には念話が届いてなかったみたいですわ。

「ははうえ!」
「ぺぇちゃ、みょ、ぃにゅー!」

ノアの横からイーニアス殿下が時間差で現れ、皇后様の所へ一直線に走る。

「殿下! ダメですわっ」

そのまま行けば、今度はイーニアス殿下が捕まってしまう……っ

「ひっちゃーちゅ、ピカッ」

大男が殿下に手を伸ばし、皇后様が必死の形相でイーニアス殿下の名前を叫んだ時だった。大男の前にフロちゃんが現れて、光を発したのだ!

「ぎゃー! 目が……っ、目がぁ!!」
「クソッ、目つぶしか!」
「油断した……っ」
「いきなり何!?」

何だか聞き覚えのあるような、ないようなセリフ……ゴホンッ、言葉が聞こえてきて唖然とする。フロちゃんの発光で、大男も王女たちの目にもダメージを与える事が出来たのだ。

『おじょうちゅん、よくやった、でござんちゅ!』
「まちゃ、ちゅまりゅにょにょ、きっちぇ、ちまった……」

フロちゃん、あなた、小さな侍でしたの?

上から落ちてきたので、危ないと思ったら、風がフロちゃんを受け止めて、ふわりふわりとわたくしのそばに移動してきたではないか。

「フロちゃん、無茶をして……」
「よーてーたん、ふりょ、ちゅおぃ!」

えっへんと胸を張る二歳児……いえ、三歳になったのかしら。に、前世で見たあの清楚で可憐な将来の聖女が、どんどんお転婆になっていっている事に、少し罪悪感が湧いた。

もしかして、わたくしのせいでフロちゃんが脳筋聖女に……?

「ははうえ……ぐすっ、ぶじで、よがっだ……っ」
「イーニアス……っ、無茶をしないでちょうだい」

首にイーニアス殿下をぶら下げた皇后様も、わたくしの後ろに転移してきて、殿下が救出した事を知る。
皇后様が涙目なのは、幼いイーニアス殿下が、自分の為に無茶をしたからだろう。誰だって、愛する息子を危険な目にあわせたくないものだ。

「皇后様っ、イーニアス殿下、ご無事ですの!?」

わたくしはまだ、動けないのですけれど、必死で振り返りながら状況を聞く。

「ずび……っ、うむ! ははうえを、とり、かえしたぞ」
「イーニアス……」

あら? 助けられたはずの皇后様の表情が、何だが浮かないような……?

「かぁちゃ、ぺぇちゃ、ぃにゅ……」
『あっちゅも、いるでござんちゅ!』

頭上から声が聞こえてきて見上げると、風に包まれたぺーちゃんが、ぷかぷか浮きながら、わたくしの膝の上に移動してくるではないか。風の珍獣、ももんちゅがぺーちゃんを風の魔法で守ってくれているらしい。

「まぁっ、ぺーちゃんにももんちゅまで!」

ぺーちゃんがここにいるのは、とてもマズいのですけれど……

『おぼっちゅん、ぞんぶんに、やるでござんちゅ!』
「はい!」

ももんちゅが、モモンガらしく両手足を広げて、天井を一周しながらノアの肩へ降りてきて、息子に危険な事をさせようとするので、わたくしつい、声を張り上げましたのよ。

「ノア、このまま神殿に逃げましょう!」

けれどノアは、振り向かずに王女たちを見据え、はっきり言ったのだ。

「おかぁさま、ここ、わたちのおうちよ。ちんでん、おうち、ちがうの」
「ノア……」
「わたち、おかぁさまも、アスでんかも、おうちも、みーんな、まもりゅの!」

だってね、私はお母様の騎士だから。そんな声が聞こえてきた気がした。

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