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第二部 第2章
386.枢機卿の息子
しおりを挟む教会に呼び出されたわたくしたちを待っていたのは、枢機卿猊下とルネさん、そしてクレオ大司教だった。
「皆様にはご足労いただきまして、誠にありがとうございます」
と丁寧に挨拶する枢機卿は、先ほどからずっと、泣きそうな顔をしていて、いつも朗らかな大司教は反対に、真剣な表情で立っていた。
「ぅりぇお?」
ぺーちゃんはいつもと違う雰囲気に戸惑って、わたくしの腕の中からクレオ大司教に手を伸ばすが、力なく手を下ろしてしまった。それが何だかかわいそうになり、ぎゅっと抱きしめる。
「かぁちゃ」
「わたくしがここにおりますわ。大丈夫よ」
大司教を見ると、ギックリ腰がだいぶ良くなったようで、杖はついているものの、背筋は伸びている。
良かったですわ。なんて安堵していれば、そこへ枢機卿猊下が話しかけてきたのだ。
「ディバイン公爵夫人、あなたが助言してくださったお陰で、父との長年のわだかまりも解消し、子供の行方も……、わかりました。ありがとうございます」
「え!?」
お子様が見つかりましたの!?
「ナイトレイ子爵からの話で、マジックアイテムを使う事なく、探し出す事が出来ましたので、イーニアス殿下からお預かりしておりましたこの石は、お返しいたします」
と、イーニアス殿下の前に片膝をつき、恭しく石を差し出す枢機卿に、イーニアス殿下が「うむ」と可愛らしく頷き、石を受け取った。
皇后様の視線が、石に張り付いておりますわ!
「あ、そうでしたわ。枢機卿猊下にと、ドニーズさんからお預かりしておりましたものがありますの」
「ドニーズ様から、私にですか……?」
かなり驚いた顔をして、恐る恐る伺ってくる猊下に、それは驚きもしますわよね。とフロちゃんを誘拐した事を思い出す。
「ドニーズさんは、枢機卿猊下がお子様を探されていると聞いて、こちらを渡してほしいと、わたくしに託されましたの」
「これは……」
わたくしがお渡ししたのは、親指の先ほどの小さな猫の人形だ。
ドニーズさんがご自身の能力で作り出したもので、それが大小3つ、仲が良さそうに並んでいる。
「猫の、家族ですね……っ」
「ええ」
なぜ猫かドニーズさんに聞くと、何となくだ、と仰っていたので、他意はないようですが、おそらく、お子様が見つかったら良いですね。という願いが込められているに違いありませんわ。
「ポレット……っ」
枢機卿猊下はそれを大事そうに両手で包み込むと、ポレットさんの名前を呟いたのだ。
「ディバイン公爵夫人、ドニーズ様に私は、どれだけ謝罪しても足りない過ちを犯してしまいました。それなのにこのように素晴らしいものまでいただいてしまい……、どう、償ったら良いのか……っ」
「枢機卿猊下、確かにあなたがしてしまった事は、許せるものではありません。ですが、ドニーズさんはそれでも、同じ子を持つ親として、お子様と再会できる事を祈っているのですもの。それはドニーズさんの気持ちだと思って受け取って、大切にしてくださいまし」
そして、お子様と再会した時には、一緒に楽しんでいただきたいですわ。
「はい……っ、はい……っ」
ぼろぼろと涙をこぼす猊下は、きっとこの猫のファミリーのおもちゃを大切にしてくれるだろう。
「それで、見つかったというお子様はどちらに?───」
◇◇◇
『───孫は、息子の養子に、と考えていたんだ。手元に置いて、大切に育てようと……だが、おそらくディオネ一族の者の仕業だろう。何者かに誘拐され、そのまま行方知れずになってしまった……っ』
と、ナイトレイ子爵は語ったそうだ。もちろん必死で探したが、後の祭りだったそうで、ずっと探し続けているのだとか。
「私も、ナイトレイ子爵に会う前に、娘ではなく息子として調べ直していたのですが、それを聞いた時、エンプティが関わっているのではないかと思ったのです」
猊下はそう言って、わたくしの抱っこしているぺーちゃんを見つめた。
「そして、エンプティが関わった乳幼児の誘拐について調べてみると……、『フェリクス教皇』が、私の息子で間違いないと、判明しました」
ぺーちゃんが、枢機卿猊下の息子!?
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