継母の心得

トール

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第二部 第2章

341.だから大変なんだって!

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何事ですの!?

突然目の前が輝き、神々しく登場した正妖精は、大変慌てた様子でわたくしの名前を呼んだのだ。

『ベル! オリヴァーが教会に行っちゃった!』
「? 教会ぐらい行くのではなくて……って、こんな雷雨の中で行きましたの!?」
『そうだけど、そうじゃないんだ!』
「まさか、馬車が事故に!?」

そんな……っ、オリヴァー!!

「おかぁさま、おじさま、たいへん?」
「にゃ?」
『違うよ! オリヴァーは事故にもあってないし無事だけど、ドニーズが行方不明になってて、フローレンスが不安がってるんだよ!』

まぁ。正妖精ったらそれを早く言ってくださらないと。

「おじさま、ぶじ、ゆきゅえ、ふめー?」
「オリヴァーが無事で良かったわ……って、今ドニーズさんが行方不明って言いませんでした?」
『だから、さっきから大変だって言ってるよね!?』
「どに……フロちゃんの、おとぅさまよ!」

ノアがドニーズさんの名前を聞いて、ハッとしたように声を上げる。

「ふゅー?」
「しょうよ、ぺーちゃん。フロちゃん、わたちのおともだちよ」
「ちょむ、りゃっち?」
「しょう。おともだち」

ぺーちゃんが首を傾げると、ノアがフロちゃんについて丁寧に教えてあげている。

フフッ、すっかりお兄ちゃんね。っと、いけない。つい子供たちの可愛い会話に和んでしまいましたわ。

「それで、ドニーズさんに何があって、オリヴァーが教会に行く事になったんですの?」
『ドニーズが、聖水をもらいに教会に行ったんだけど、教会で行方不明になったんだ! それを聞いたオリヴァーが、教会に行っちゃって、そんな状況だから、屋敷内の使用人もピリッとした空気になっちゃって、フローレンスがそれに不安がってるんだよ~!』
「あなた、不安がってるフロちゃんを置いてここに来ましたの!?」
『あ』

正妖精はドニーズさんの件でパニックになっているのか、妖精通信でも良かっただろうに、あろうことかフロちゃんを一人置いて来てしまったのだ。

「それに、ドニーズさんの居場所は、卵たちがそばにいればわかりますのよね?」
『そ、それが……ドニーズに付けた卵たちと連絡が取れなくて……』
「な!?」
『だ、だからパニックになっちゃって……ボク……』

涙目になる正妖精に、ノアが「なかないのよ。だいじょぶなの」と慰め始めたではないか。

『ノアぁ~』

ウチの子、なんって良い子なのかしら!

「にしても……、卵たちとの連絡が途切れたなんて、ただ事ではないのではなくて?」
『そうなんだよ! 眷属たちがボクを拒否しない限り、連絡が取れないなんてないんだ。大体、ボクを拒否できる強い妖精なんて、同じ妖精王か、アカとアオだけだし……』

アカとアオってそんなに強い妖精でしたの?

「という事は、拒否ではなく、何らかの外因があって連絡を取れない状況という事ですわね……」
『妖精の居場所や通信手段を遮断するような外因って何さ!?』

真っ青になって、ノアに抱きつき震えている正妖精に、それはわたくしが知りたいですわよ。と言いながら、そういえば、通信できなる事象って前世でもありましたわね……と、ネットが繋がらないスマホを思い出す。

「もしかして、妖精の存在や通信をシャットアウトする場所にいるとか……?」

電波妨害するような、そんな所……。

『ボクら妖精にそんな場所……』
『ある!!』

ポンッと、突然マジックのようにノアの腕の中に現れたのは、お馴染みキノコ帽妖精のアオだ。

「アオ。どこ、いってたの。ちんぱい、ちたでしょ」
『ノア、ごめんなさーい。アオ、おしろで、あそんでた!!』

いないと思ったら、皇城に行ってましたのね。

『アオ、あるって、どういう事!?』
『けっかい、なか!! はいると、つうしんできない!! いばしょ、わからない!!』
『あ! そうだった!!』

結界の中……?

「ドニーズさんは教会に行ったきり、足取りがわからなくなったのですわよね……?」
『うん。卵たちも、教会に行ってから後、連絡が途切れたんだ』
「という事は、教会のどこかに、結界が張られた場所があって、そこにドニーズさんはいる。という事ね」
『そうだね……』
「オリヴァーは今、教会に向かっている……っ」

大変ですわ!!

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