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秀次2
謝罪と抱擁(1)
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なんて切り出せばいいだろう。
友達になってほしいと、口にだして告げることがこんなにも難しいことだったなんて。
いざ、そう心の中で思うのだが、なかなか言葉にならない。
勇気を貰おうと、橋沼さんから貰った飴を食べてから美術室へいくのだが、飴も残り一個しかない。
もしもの時を考えてしまう。
向こうはそのつもりがなくて、俺だけ思っていたとして、それで気まずくなったらどうしよう。
今日こそはと気合を入れて口の中へ飴を放り込む。
甘いそれをコロコロと転がしながら美術室へと向かうが、そこにいたのは橋沼さんではなく見知らぬ顔だ。
部員だろうか。もしそうだとしたら部外者である俺は遠慮すべきだろう。
結局、言えず仕舞いだなとため息をつき、踵を返すが、
「あ、総一から聞いている。入りなよ」
と椅子から立ち上がり声を掛けられる。
橋沼さんのことを下の名で呼んでいる。もしかして友達だろうか。
それにしても随分と背の高い人だ。たぶん、橋沼さんと同じくらいだろう。バランスのとれた顔と身体、まるでモデルのような男だ。
「橋沼さんは?」
「ん、クラスの用事。後、十分くらいしたらくるよ」
「そうなんだ」
いつも座っている場所に腰を下ろす。
橋沼さんが来るまで彼もここにいるつもりなのだろうか。なんか、居心地が悪いな。
弁当を食うのは待つとして、その間、スマホでも弄っていようかとポケットから取り出す。
だけど意識は彼の方へと向いてしまい、はやく教室に戻ってくれないかなと心の中で思う。
「ねぇ」
声を掛けられ顔を向けると、
「君って、あの、卑怯者君だよね?」
といわれる。一体何を言い出すんだと睨みつければ、口元に浮かんでいた笑みが消えた。
あぁ、この人は葉月との間に起きた出来事を誰かに聞いて知っているんだ。
葉月が神野と話すようになってから気に入らない奴になった。
弁当を食べながら楽しそうにしている姿をみて、それが気にくわなくて、一人で屋上にいる時に、仲間と一緒に葉月の元へと行き、弁当を……。
「喧嘩を自分から吹っかけて、負けた腹いせに、担任に告げ口とかありえねぇから」
屋上でのことが教師に伝わったのは、そこにいた生徒が呼びにいったからだし、元々、葉月は印象が悪く、伸されていたのが俺達だったから、停学になったと思っていた。
「は、よく言うよ。お前等は処分も受けなかったんだろう?」
葉月に敵わないことが悔しくて、腸が煮え返りそうだったけれど、俺から仕掛けたことだ。告げ口をしようなんて思っていない。
だが、同じことか。俺は被害者ヅラをしていたのだから。
「だから、なんだって言うんだよ」
葉月の停学があけ、学校に戻って来た時には全て俺が悪いことになっていた。
誰かが勝手な噂を流して、そういうことになってしまった。それをこの男も信じているということだ。
「お前さ、美術室に来るなよ」
強い敵意。
その目は、葉月が停学になった時に神野から向けられたものと同じだ。
本気で相手を心配して、俺に敵意を向けているんだ。
羨ましいな。そんな風に心配をしてくれる人が橋沼さんにはいるのだから。
もやもやとするのは嫉みのせいだろう。
「橋沼さんから誘ってきたんだぜ」
挑発をするように、わざとらしく、そして相手がムカつくように笑ってみせる。
だが、相手は表情をかえることなく話を続けた。
「総一は知っているよ。お前がどんな奴かって」
その言葉に愕然とした。まさか、俺のしたことを知っていたなんて。
「そんな……」
彼に何を言われても平気だったのに、橋沼さんに知られていることはショックだった。
友達になってほしいと、口にだして告げることがこんなにも難しいことだったなんて。
いざ、そう心の中で思うのだが、なかなか言葉にならない。
勇気を貰おうと、橋沼さんから貰った飴を食べてから美術室へいくのだが、飴も残り一個しかない。
もしもの時を考えてしまう。
向こうはそのつもりがなくて、俺だけ思っていたとして、それで気まずくなったらどうしよう。
今日こそはと気合を入れて口の中へ飴を放り込む。
甘いそれをコロコロと転がしながら美術室へと向かうが、そこにいたのは橋沼さんではなく見知らぬ顔だ。
部員だろうか。もしそうだとしたら部外者である俺は遠慮すべきだろう。
結局、言えず仕舞いだなとため息をつき、踵を返すが、
「あ、総一から聞いている。入りなよ」
と椅子から立ち上がり声を掛けられる。
橋沼さんのことを下の名で呼んでいる。もしかして友達だろうか。
それにしても随分と背の高い人だ。たぶん、橋沼さんと同じくらいだろう。バランスのとれた顔と身体、まるでモデルのような男だ。
「橋沼さんは?」
「ん、クラスの用事。後、十分くらいしたらくるよ」
「そうなんだ」
いつも座っている場所に腰を下ろす。
橋沼さんが来るまで彼もここにいるつもりなのだろうか。なんか、居心地が悪いな。
弁当を食うのは待つとして、その間、スマホでも弄っていようかとポケットから取り出す。
だけど意識は彼の方へと向いてしまい、はやく教室に戻ってくれないかなと心の中で思う。
「ねぇ」
声を掛けられ顔を向けると、
「君って、あの、卑怯者君だよね?」
といわれる。一体何を言い出すんだと睨みつければ、口元に浮かんでいた笑みが消えた。
あぁ、この人は葉月との間に起きた出来事を誰かに聞いて知っているんだ。
葉月が神野と話すようになってから気に入らない奴になった。
弁当を食べながら楽しそうにしている姿をみて、それが気にくわなくて、一人で屋上にいる時に、仲間と一緒に葉月の元へと行き、弁当を……。
「喧嘩を自分から吹っかけて、負けた腹いせに、担任に告げ口とかありえねぇから」
屋上でのことが教師に伝わったのは、そこにいた生徒が呼びにいったからだし、元々、葉月は印象が悪く、伸されていたのが俺達だったから、停学になったと思っていた。
「は、よく言うよ。お前等は処分も受けなかったんだろう?」
葉月に敵わないことが悔しくて、腸が煮え返りそうだったけれど、俺から仕掛けたことだ。告げ口をしようなんて思っていない。
だが、同じことか。俺は被害者ヅラをしていたのだから。
「だから、なんだって言うんだよ」
葉月の停学があけ、学校に戻って来た時には全て俺が悪いことになっていた。
誰かが勝手な噂を流して、そういうことになってしまった。それをこの男も信じているということだ。
「お前さ、美術室に来るなよ」
強い敵意。
その目は、葉月が停学になった時に神野から向けられたものと同じだ。
本気で相手を心配して、俺に敵意を向けているんだ。
羨ましいな。そんな風に心配をしてくれる人が橋沼さんにはいるのだから。
もやもやとするのは嫉みのせいだろう。
「橋沼さんから誘ってきたんだぜ」
挑発をするように、わざとらしく、そして相手がムカつくように笑ってみせる。
だが、相手は表情をかえることなく話を続けた。
「総一は知っているよ。お前がどんな奴かって」
その言葉に愕然とした。まさか、俺のしたことを知っていたなんて。
「そんな……」
彼に何を言われても平気だったのに、橋沼さんに知られていることはショックだった。
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