27 / 127
第二章 秘められた悪意
消えた証拠
しおりを挟む
執務室に戻ったエフェルローンは、すぐさま手元の資料に目を通した。
ダニーから受け取った遺留品リストと予めキースリーから渡されていた捜査資料を見比べる。
「…………」
「先輩、どうしたんです? そんな怖い顔をして……」
ルイーズが訝しそうにエフェルローンを見る。
「無い……」
何処を探してみても。
キースリーから渡されていた資料に、[日記]というフレーズが何処にも見当たらない。
「何が無いんです?」
同じように、ルイーズも資料に目を通しながらそう尋ねる。
エフェルローンは神妙な面持ちで腕を組むと、机に両足を乗せてため息を一つ吐いた。
「[日記]だよ、[日記]って単語がどこにもない」
「えっ、本当ですか? でも、昨日までは確かにありましたよね?」
驚いたようにそう言うと、ルイーズは自分の机から立ち上がる。
そして、エフェルローンの前まで来ると、その手からリストの資料を引き抜いた。
「これがダニーさんが持っていたリストですか……」
そう呟きながら自らの席に戻ると、ルイーズはエフェルローンから奪った資料と手元の捜査資料とを見比べ始める。
そして、数分後――。
「確かに、見当たりませんね。でも昨日までありましたよね、[日記]っていう単語」
ルイーズはそう言って眉を顰めると、資料を机の上に置いた。
「…………」
消された証拠品。
差し替えられた捜査資料。
嫌な結論がエフェルローンの脳裏に過ぎる。
――内部の人間の犯行、か。
考えたくは無かったが、その可能性は十分高い。
(それも、唯の内部犯って訳じゃない。これだけ用意周到となれば、かなり上の人間、それも上層部の人間が絡んでいる犯行と見るべきだろう)
もしそうだとするならば、この事件―—只の殺人事件から、かなり危険な案件に跳ね上がる。
下手をすれば、殺される可能性も出て来るだろう。
「なるほど。キースリーの奴、それを分かっていて俺に振ったって訳か」
エフェルローンは苦々しくそう言い放つと、手元の資料を机の上に乱雑に放り投げた。
(あいつ、どれだけ俺のこと殺したいんだ……)
おもむろに腕を組み、じっと宙を凝視するエフェルローンなのであった。
ダニーから受け取った遺留品リストと予めキースリーから渡されていた捜査資料を見比べる。
「…………」
「先輩、どうしたんです? そんな怖い顔をして……」
ルイーズが訝しそうにエフェルローンを見る。
「無い……」
何処を探してみても。
キースリーから渡されていた資料に、[日記]というフレーズが何処にも見当たらない。
「何が無いんです?」
同じように、ルイーズも資料に目を通しながらそう尋ねる。
エフェルローンは神妙な面持ちで腕を組むと、机に両足を乗せてため息を一つ吐いた。
「[日記]だよ、[日記]って単語がどこにもない」
「えっ、本当ですか? でも、昨日までは確かにありましたよね?」
驚いたようにそう言うと、ルイーズは自分の机から立ち上がる。
そして、エフェルローンの前まで来ると、その手からリストの資料を引き抜いた。
「これがダニーさんが持っていたリストですか……」
そう呟きながら自らの席に戻ると、ルイーズはエフェルローンから奪った資料と手元の捜査資料とを見比べ始める。
そして、数分後――。
「確かに、見当たりませんね。でも昨日までありましたよね、[日記]っていう単語」
ルイーズはそう言って眉を顰めると、資料を机の上に置いた。
「…………」
消された証拠品。
差し替えられた捜査資料。
嫌な結論がエフェルローンの脳裏に過ぎる。
――内部の人間の犯行、か。
考えたくは無かったが、その可能性は十分高い。
(それも、唯の内部犯って訳じゃない。これだけ用意周到となれば、かなり上の人間、それも上層部の人間が絡んでいる犯行と見るべきだろう)
もしそうだとするならば、この事件―—只の殺人事件から、かなり危険な案件に跳ね上がる。
下手をすれば、殺される可能性も出て来るだろう。
「なるほど。キースリーの奴、それを分かっていて俺に振ったって訳か」
エフェルローンは苦々しくそう言い放つと、手元の資料を机の上に乱雑に放り投げた。
(あいつ、どれだけ俺のこと殺したいんだ……)
おもむろに腕を組み、じっと宙を凝視するエフェルローンなのであった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!


無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる