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#194 異世界の女神たち
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「州崎パラダイス」という謎の少年のダイイングメッセージには、いったいどんな意味があり、そこには何が秘匿されているのだろう。
というのは、たったいま、自分が脳内で書き出した小説の冒頭だった、これだけだと何やらミステリっぽいのだけれど実のところ、ミステリはキライなのだ。
もし自分でミステリを書くとしたら、死屍累々、死体が山ほど出るが、一切謎解きはないメタミステリになるだろう、知らんけど。
もしくは、誰も死なない、ほのぼのミステリ。阿鼻叫喚の殺戮劇は、すべて脳内で行われるのだよ、ワトスン君。
いや、それじゃミステリじゃないだろと言われても困る、むしろフツーに謎解きをしてるだけの小説のどこが面白いのか自分にはよくわからない。
だっていったい誰がどういう手口で殺ったんだ、という殺人事件だけがミステリじゃあるまいし、不意に婚約を破棄されるだとか、信じ切っていたのに不倫されるとか、猛スピードで公道を逆走してくるワゴンやらバンとか、詐欺師なのか政治家なのかまるでわからない政治屋であるとか、ヒトとその人生はそれ自体が謎だらけではないか。
それはともかく自分は、借金取りに追われて命からがらこの町に逃げてきたのだった、もうかれこれ五ヶ月がたった。
借金取りは、返済できないならば臓器を売ればいいと言うのだった、先ずは腎臓から売れよ、と。
時がたつのは実に早いものだ、この西部劇にでも出てきそうなゴーストタウンといってもいいような寂れた街での生活に慣れ始めた頃、具体的には昨日だが、サブリーダーである男から、ある提案を持ちかけられた。
幸いなことにこれまでホームシックにもなったことがないし、不便も感じてはいなかったが、どこの馬の骨かわからないこのぼくを、村の人たち、いや、厳密にいえば人とはいえないかもしれないが、とにかく何も詮索せずに、いろいろと世話をやいてくれたのだった。
なので、自分としては居心地がよく、ついつい長居してしまったのだが、終の住処としてこの地がぼくに選ばれたのだろうか。
自分の人生なのだから何もかも自分が決めているように思えているが、どうなんだろう、怪しいものだ。
この世界は、ヒトを騙すことに長けているものが支配しているから、バカはそれをマネして、騙される方が悪いというおきまりの理屈を金科玉条にして騙しまくっている。
大学を出てもいい就職などないし、手っ取り早く、そして確実に稼ぐには金のあるところから、現金を引っ張ればいいとして、いわゆる闇バイトに参加し詐欺に加担する。
真面目に働くのが馬鹿らしい、そういう世の中なのだ、どれだけ闇があるのか見当もつかない今の政権をみていると、未来はないように思える。
世界は、ほんとうに強盗やら詐欺師だらけの世界に成り果ててしまった。
まあ、世界は行きつくところまで行くしかない、ヨゴレは大掃除できれいにするしかないのだから、何の心配もない。
問題は、自分だった。
この最果ての地に借金取りが来ることはないだろう、自分はうまく逃げおおせたのだ、ただ一つ困ったことに、ゲストとしての滞在なのか、或いは、ほんとうにこのコミューンの一員となるのかを、半年以内に決めなくてはならない、ということだ。
ゲストでの滞在は半年であり、コミューンの一員にならないならば、ここから出ていかなければならない。
だから、いまは未だお試し期間なのだが、もしコミューンに参加するのならば回避できない通過儀礼的なシキタリがあり、それがネックとなっていた。
そのシキタリとは、あまりにもわけのわからない理不尽なもの、とかではなく理に叶ってはいる。
しかし自分としては、決心しかねているのだった。
実のところ、自分はショーペン・ハウアーの説くように人生を諦めるなんてありえないと思っていた、何もかも諦めてやっと心の安寧を得る、諦念こそが人生の妙諦である、なんてネガティヴ過ぎると思っていたのだ。
だが、いまになってわかった、ショーペン・ハウアーは正しかった。
恋人をあきらめる
恋愛をあきらめる
結婚をあきらめる
幸せをあきらめる
恋人をあきらめる
恋愛をあきらめる
結婚をあきらめる
幸せをあきらめる
恋人をあきらめる
恋愛をあきらめる
結婚をあきらめる
幸せをあきらめる
自分は、呪文のように繰り返し繰り返し自分にそう言い聞かせながら、なんとか今まで生きてきたのだ。
だから、いまさら若い女性と結婚するなんて考えられない話だった。
しかし...
シキタリは、それを自分に要求していた。
さらにもうひとつ、気になる点があった。
彼らは人類ではない、かもしれない。
エルフ、ドワーフ、トロール、コボルド、セイレーン、ゴブリン、ハーピーゴーレム等々、亜人種だと思われる。
その特異点は、男性はまったく人類と変わりないが、女性の顔があまりにも奇異過ぎるのだった。
それは、醜いのではなかった。
彼女たちの顔立ちは、一様にみな綺麗なのだが、問題はその顔のつくりが2種類しかないということなのだ。
さまざまに異なっているはずの女性の顔が2種類しかない人間の亜種。
そしてその顔は、白石麻衣と齋藤飛鳥にそっくりだった。
というのは、たったいま、自分が脳内で書き出した小説の冒頭だった、これだけだと何やらミステリっぽいのだけれど実のところ、ミステリはキライなのだ。
もし自分でミステリを書くとしたら、死屍累々、死体が山ほど出るが、一切謎解きはないメタミステリになるだろう、知らんけど。
もしくは、誰も死なない、ほのぼのミステリ。阿鼻叫喚の殺戮劇は、すべて脳内で行われるのだよ、ワトスン君。
いや、それじゃミステリじゃないだろと言われても困る、むしろフツーに謎解きをしてるだけの小説のどこが面白いのか自分にはよくわからない。
だっていったい誰がどういう手口で殺ったんだ、という殺人事件だけがミステリじゃあるまいし、不意に婚約を破棄されるだとか、信じ切っていたのに不倫されるとか、猛スピードで公道を逆走してくるワゴンやらバンとか、詐欺師なのか政治家なのかまるでわからない政治屋であるとか、ヒトとその人生はそれ自体が謎だらけではないか。
それはともかく自分は、借金取りに追われて命からがらこの町に逃げてきたのだった、もうかれこれ五ヶ月がたった。
借金取りは、返済できないならば臓器を売ればいいと言うのだった、先ずは腎臓から売れよ、と。
時がたつのは実に早いものだ、この西部劇にでも出てきそうなゴーストタウンといってもいいような寂れた街での生活に慣れ始めた頃、具体的には昨日だが、サブリーダーである男から、ある提案を持ちかけられた。
幸いなことにこれまでホームシックにもなったことがないし、不便も感じてはいなかったが、どこの馬の骨かわからないこのぼくを、村の人たち、いや、厳密にいえば人とはいえないかもしれないが、とにかく何も詮索せずに、いろいろと世話をやいてくれたのだった。
なので、自分としては居心地がよく、ついつい長居してしまったのだが、終の住処としてこの地がぼくに選ばれたのだろうか。
自分の人生なのだから何もかも自分が決めているように思えているが、どうなんだろう、怪しいものだ。
この世界は、ヒトを騙すことに長けているものが支配しているから、バカはそれをマネして、騙される方が悪いというおきまりの理屈を金科玉条にして騙しまくっている。
大学を出てもいい就職などないし、手っ取り早く、そして確実に稼ぐには金のあるところから、現金を引っ張ればいいとして、いわゆる闇バイトに参加し詐欺に加担する。
真面目に働くのが馬鹿らしい、そういう世の中なのだ、どれだけ闇があるのか見当もつかない今の政権をみていると、未来はないように思える。
世界は、ほんとうに強盗やら詐欺師だらけの世界に成り果ててしまった。
まあ、世界は行きつくところまで行くしかない、ヨゴレは大掃除できれいにするしかないのだから、何の心配もない。
問題は、自分だった。
この最果ての地に借金取りが来ることはないだろう、自分はうまく逃げおおせたのだ、ただ一つ困ったことに、ゲストとしての滞在なのか、或いは、ほんとうにこのコミューンの一員となるのかを、半年以内に決めなくてはならない、ということだ。
ゲストでの滞在は半年であり、コミューンの一員にならないならば、ここから出ていかなければならない。
だから、いまは未だお試し期間なのだが、もしコミューンに参加するのならば回避できない通過儀礼的なシキタリがあり、それがネックとなっていた。
そのシキタリとは、あまりにもわけのわからない理不尽なもの、とかではなく理に叶ってはいる。
しかし自分としては、決心しかねているのだった。
実のところ、自分はショーペン・ハウアーの説くように人生を諦めるなんてありえないと思っていた、何もかも諦めてやっと心の安寧を得る、諦念こそが人生の妙諦である、なんてネガティヴ過ぎると思っていたのだ。
だが、いまになってわかった、ショーペン・ハウアーは正しかった。
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彼らは人類ではない、かもしれない。
エルフ、ドワーフ、トロール、コボルド、セイレーン、ゴブリン、ハーピーゴーレム等々、亜人種だと思われる。
その特異点は、男性はまったく人類と変わりないが、女性の顔があまりにも奇異過ぎるのだった。
それは、醜いのではなかった。
彼女たちの顔立ちは、一様にみな綺麗なのだが、問題はその顔のつくりが2種類しかないということなのだ。
さまざまに異なっているはずの女性の顔が2種類しかない人間の亜種。
そしてその顔は、白石麻衣と齋藤飛鳥にそっくりだった。
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