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# 50 豚の背脂
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*月*日
おれの隣で砂浜に打ち上げられたセイウチの屍体のように吊革にぶら下がり、テレビン油を塗布されたか、あるいは豚の背脂をチャッチャされたみたいに濡れ光るザビエル禿げの頭をもたげたままの男も、この不条理に過ぎる世界から遁走もせずに生き抜いているのだろうから、少なくともおれよりも遥かに強い男なのだ。
なんの疑問もなく生きているわけもない。すべては家族のために、あまりにも理不尽な上司の命令やさまざまな軋轢に息も絶え絶えになりながらも、へこたれずに地面を舐めるように這いずり回っているのだから。
おれはといえば、決まりきったレールをただ走り続けることには、もうとうの昔に飽いているのだ。飽いたなどと、贅沢な悩みだということもわかっている。わかっているけれども、すべてを破壊しつくしたいという欲望が、抑えきれないほど耐えがたく膨満し、もうメルトダウン寸前だった。
おれの隣で砂浜に打ち上げられたセイウチの屍体のように吊革にぶら下がり、テレビン油を塗布されたか、あるいは豚の背脂をチャッチャされたみたいに濡れ光るザビエル禿げの頭をもたげたままの男も、この不条理に過ぎる世界から遁走もせずに生き抜いているのだろうから、少なくともおれよりも遥かに強い男なのだ。
なんの疑問もなく生きているわけもない。すべては家族のために、あまりにも理不尽な上司の命令やさまざまな軋轢に息も絶え絶えになりながらも、へこたれずに地面を舐めるように這いずり回っているのだから。
おれはといえば、決まりきったレールをただ走り続けることには、もうとうの昔に飽いているのだ。飽いたなどと、贅沢な悩みだということもわかっている。わかっているけれども、すべてを破壊しつくしたいという欲望が、抑えきれないほど耐えがたく膨満し、もうメルトダウン寸前だった。
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