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#24 シーシュポスの神話
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*月*日
穴を幾つか掘った。裏庭のさしあたり穴のないところを掘っているだけである。楡の木の木陰でゆらゆらと紫煙を燻らせながら眺めていると、穴と穴から出た土の山の眺めは、なかなか趣きのある日本庭園のような気にもなってくる。と、ピアノのえもいわれぬ調べが聴こえてくる。洋子の幻影が陽炎のように揺らめいている。あの日あの時、洋子は俺の腕の中で息を引き取った。空へと帰っていく小さな命をなんとか繋ぎとめようと、きつくきつくいつまでもこの手で抱きしめていた。
さて、午後からは掘った穴をひとつひとつ埋めていく作業。人はいうだろう。シーシュポスの神話みたいに、まったくの徒労ではないかと。無駄で無意味で不条理と。しかし、まったく意味のないものなどこの世に存在しないのだ。あれから10年。俺はこの作業を心の拠り所にしている。ポッカリと空いた心の穴を埋めていく作業。これがなければ、俺はとうの昔に命を絶っていただろう。
穴を幾つか掘った。裏庭のさしあたり穴のないところを掘っているだけである。楡の木の木陰でゆらゆらと紫煙を燻らせながら眺めていると、穴と穴から出た土の山の眺めは、なかなか趣きのある日本庭園のような気にもなってくる。と、ピアノのえもいわれぬ調べが聴こえてくる。洋子の幻影が陽炎のように揺らめいている。あの日あの時、洋子は俺の腕の中で息を引き取った。空へと帰っていく小さな命をなんとか繋ぎとめようと、きつくきつくいつまでもこの手で抱きしめていた。
さて、午後からは掘った穴をひとつひとつ埋めていく作業。人はいうだろう。シーシュポスの神話みたいに、まったくの徒労ではないかと。無駄で無意味で不条理と。しかし、まったく意味のないものなどこの世に存在しないのだ。あれから10年。俺はこの作業を心の拠り所にしている。ポッカリと空いた心の穴を埋めていく作業。これがなければ、俺はとうの昔に命を絶っていただろう。
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