死にたがりのユキと死神のハルナ

志月さら

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8.エピローグ‐死にたがりのユキと死神のハルナ‐

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 あのあと、ホテルの屋上で泣きじゃくっていたわたしたちは、結局警察に補導されてしまった。ホテルの従業員に見つかって、自殺志願者だと勘違いされて通報されたらしい。いや実際、ハルナは自殺しようとしていたわけだから否定できないのだけれど。

 おまけに捜索願いまで出されていたために、迎えにきたお母さんからも、学校でも、それはもうたくさん叱られた。
 寒い中薄着でいたから風邪も引いた。数日寝込んで久しぶりに登校すると、ハルナは学校にいなかった。

 児童相談所に保護されて、これからは児童養護施設で生活するらしい。学区が違うため転校するということも、そのとき知った。
 寂しかったけれど、もう二度と会えなくなるわけではないから、我慢できた。
 あのとき――ハルナが、わたしを救ってくれたように。わたしも、ハルナのことをちゃんと救えたのだろうか。そうだったらいいなと、そう、思っていた。

***

「由貴、こっちこっち!」
「春奈……! ごめん、お待たせ」

 約束の時間に十五分ほど遅れて、わたしは待ち合わせのカフェに着いた。先に到着していた春奈に両手を合わせて謝る。
 気にしなくていいよ、と春奈は見慣れた笑顔で言ってくれた。

「とりあえず座りなよ」

 促されて腰を下ろす。走ってきたせいで乱れた息を整えていると、ちょうどいいタイミングで店員さんが注文を取りにきてくれた。食べたかったケーキとハーブティーのセットを注文する。

「春奈、最近どう? 勉強大変?」
「んー、大変っちゃ大変だけど、でも楽しいよ」

 春奈は一人暮らしをしながら福祉系の大学で学んでいた。ソーシャルワーカーを目指していて、何やら色々と資格を取るために頑張っているらしい。

「由貴は教育実習どんな感じなの?」
「もうめっちゃ大変ー! わたしやっぱり先生向いてないかも……」
「まじか。じゃあ諦めるの?」
「うー……でももうちょっと頑張りたい。褒められたとこもあるし」
「そっか、まあ無理せず頑張って」

 近況を話しながら運ばれてきたケーキをつつく。中学生の頃とは環境が変わったけれど、春奈との交流はいまでも続いていた。

 ――死にたがりのユキも、死にたがりのハルナも、もちろん死神のハルナだって、もうどこにもいない。

 わたしはただの有村由貴で。
 彼女はただの清水春奈。
 悩んだり、苦しんだり、毎日、しんどいことはたくさんあるけれど。
 楽しいことも、嬉しいこともちゃんとあると知っているから。
 とりあえず、今日のところは。
 死にたい気持ちを感じることはなく、なんとか生きているのだった。



                                 END
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