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第一章
第51話:アーニャのポーション4
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「あぁ~、生きてて良かったなー。ジルくんって、甘いものも上手に作れるんだね」
フレンチトーストを一口頬張り、うっとりとした表情を浮かべるルーナは、感激していた。
しっかりと味が染みた黄色い食パンに、芳ばしい焦げ目がついたフレンチトースト。上から少しかけられたハチミツが、トロ~リと皿にこぼれ落ち、朝日を反射するように照りを出していた。
我慢できずに食べてみたら、別世界にトリップしたような感覚に陥ってしまう。
砂糖のようなピュアな甘さはなくても、オレンジの花から作られたハチミツは、卵と牛乳にうまく絡み合う。うっすらと鼻に抜ける柑橘系の香りが、甘すぎないフレンチトーストを演出し、飽きにくい。毎日食べても飽きないかも……と思うほどに、ルーナは気に入っていた。
ん~~~、おいしい……!!
「おいしい?」
「すごくおいしいよー。ジルくんは本当にいい子だねー。よーしよーし」
食事中などお構いなしに、フレンチトーストを提供してくれたジルの頭をナデナデするほど、ルーナは上機嫌である。
昨夜はエリスとお泊り会を開き、寝不足ではあるものの、誰かと一緒に朝食を食べるのは、二年ぶりのこと。そこに、初めて食べる甘いフレンチトーストが出てこれば、ジルに軽くハグをしちゃうほどルーナのテンションは高まり、もう、ウキウキハッピーモーニング。
フレンチトーストよりもあま~い展開を迎えたジルは、ドキドキハッピーモーニングである。
そんな二人を眺めながら、アーニャとエリスもフレンチトーストをパクリ。エリクサー(微小)を持ち運んでいた緊張感が一気に吹き飛び、幸せの笑みを浮かべていた。
(甘いものをお願いしたのは私だけど、こんな極上の朝食を用意しないでよね。病み付きになるじゃないの。出来立てのハンバーグの肉汁のように、中から甘い汁が飛び出してくるなんて。おそらく、素材の魔力と空気中のマナを合成するという、錬金術の知識を活かした新たな創作料理よ。うぐぐっ、助手にして本当によかったわね)
などと、錬金術とは全然関係ないところで、アーニャは助手のありがたみを感じる。
このフレンチトーストを食べられるのは、私が錬金術を教えたおかげよ。二人とも私に感謝して食べるのね、と、自分の手柄を心の中で主張してマウントを取っていた。
しかし、エリスは知っている。ジルが睡眠学習のプロだということを!
「ねえ、ジル。これも夢で出てきた料理なの?」
「うん。フレンチトーストって言って、夢の中の父さんがたまに作ってくれてたの。おいしいんだけどね、毎日食べると虫歯になるって怒ってたかなー」
そ、そういうのは最初に言いなさいよ! 錬金術の知識を活かしたと思ってたじゃないの! と、アーニャは慌てながらも、フレンチトーストを頬張る。うーん! 甘くておいしい……と、すぐに落ち着いてしまうのだった。
「虫歯くらいなら、オーラルキュアポーションで治るよね。けっこう安価で買えると思うけど」
「それがね、夢の中ではポーションがなかったの。料理はおいしかったけど、病気になると怖~いところだったから。虫歯なんかね、痛くなった歯をドリルでギュイーーーン! って削るんだよ。痛くて動くと、父さんが押さえつけてきたし」
頬に手を添えたジルは、夢と勘違いしている前世の記憶を思い出していた。治療が痛くて、よく歯医者さんで泣いていたなー、と。
しかし、ジルの言葉だけでは、異世界の住人は恐ろしい想像をしてしまう。
通常、ドリルは鍛冶屋が使う工具であり、硬い金属を削り落とすために使用している。そんなものを、歯に当ててしまえば……。
「なにそれ、怖い。新しい拷問の間違いかな。大丈夫だった? あっ、夢なら大丈夫だよね」
「そういう問題じゃないわよ。あんた、よく耐えたわね。呪いで見る夢が、そんなに残酷なものだとは思わなかったわ」
「私は普通の夢を見るから、ジルくんの呪いが特別きつかったんだと思うよ。頑張ってたんだね、いい子いい子」
朝から歯医者の話をして、今日もジルは甘やかされる。
歯医者の治療が忘れられなくなってしまい、歯が痛くならないことを祈りながら、ジルはフレンチトーストを食べ始めるのだった。
フレンチトーストを一口頬張り、うっとりとした表情を浮かべるルーナは、感激していた。
しっかりと味が染みた黄色い食パンに、芳ばしい焦げ目がついたフレンチトースト。上から少しかけられたハチミツが、トロ~リと皿にこぼれ落ち、朝日を反射するように照りを出していた。
我慢できずに食べてみたら、別世界にトリップしたような感覚に陥ってしまう。
砂糖のようなピュアな甘さはなくても、オレンジの花から作られたハチミツは、卵と牛乳にうまく絡み合う。うっすらと鼻に抜ける柑橘系の香りが、甘すぎないフレンチトーストを演出し、飽きにくい。毎日食べても飽きないかも……と思うほどに、ルーナは気に入っていた。
ん~~~、おいしい……!!
「おいしい?」
「すごくおいしいよー。ジルくんは本当にいい子だねー。よーしよーし」
食事中などお構いなしに、フレンチトーストを提供してくれたジルの頭をナデナデするほど、ルーナは上機嫌である。
昨夜はエリスとお泊り会を開き、寝不足ではあるものの、誰かと一緒に朝食を食べるのは、二年ぶりのこと。そこに、初めて食べる甘いフレンチトーストが出てこれば、ジルに軽くハグをしちゃうほどルーナのテンションは高まり、もう、ウキウキハッピーモーニング。
フレンチトーストよりもあま~い展開を迎えたジルは、ドキドキハッピーモーニングである。
そんな二人を眺めながら、アーニャとエリスもフレンチトーストをパクリ。エリクサー(微小)を持ち運んでいた緊張感が一気に吹き飛び、幸せの笑みを浮かべていた。
(甘いものをお願いしたのは私だけど、こんな極上の朝食を用意しないでよね。病み付きになるじゃないの。出来立てのハンバーグの肉汁のように、中から甘い汁が飛び出してくるなんて。おそらく、素材の魔力と空気中のマナを合成するという、錬金術の知識を活かした新たな創作料理よ。うぐぐっ、助手にして本当によかったわね)
などと、錬金術とは全然関係ないところで、アーニャは助手のありがたみを感じる。
このフレンチトーストを食べられるのは、私が錬金術を教えたおかげよ。二人とも私に感謝して食べるのね、と、自分の手柄を心の中で主張してマウントを取っていた。
しかし、エリスは知っている。ジルが睡眠学習のプロだということを!
「ねえ、ジル。これも夢で出てきた料理なの?」
「うん。フレンチトーストって言って、夢の中の父さんがたまに作ってくれてたの。おいしいんだけどね、毎日食べると虫歯になるって怒ってたかなー」
そ、そういうのは最初に言いなさいよ! 錬金術の知識を活かしたと思ってたじゃないの! と、アーニャは慌てながらも、フレンチトーストを頬張る。うーん! 甘くておいしい……と、すぐに落ち着いてしまうのだった。
「虫歯くらいなら、オーラルキュアポーションで治るよね。けっこう安価で買えると思うけど」
「それがね、夢の中ではポーションがなかったの。料理はおいしかったけど、病気になると怖~いところだったから。虫歯なんかね、痛くなった歯をドリルでギュイーーーン! って削るんだよ。痛くて動くと、父さんが押さえつけてきたし」
頬に手を添えたジルは、夢と勘違いしている前世の記憶を思い出していた。治療が痛くて、よく歯医者さんで泣いていたなー、と。
しかし、ジルの言葉だけでは、異世界の住人は恐ろしい想像をしてしまう。
通常、ドリルは鍛冶屋が使う工具であり、硬い金属を削り落とすために使用している。そんなものを、歯に当ててしまえば……。
「なにそれ、怖い。新しい拷問の間違いかな。大丈夫だった? あっ、夢なら大丈夫だよね」
「そういう問題じゃないわよ。あんた、よく耐えたわね。呪いで見る夢が、そんなに残酷なものだとは思わなかったわ」
「私は普通の夢を見るから、ジルくんの呪いが特別きつかったんだと思うよ。頑張ってたんだね、いい子いい子」
朝から歯医者の話をして、今日もジルは甘やかされる。
歯医者の治療が忘れられなくなってしまい、歯が痛くならないことを祈りながら、ジルはフレンチトーストを食べ始めるのだった。
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