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第一章 幼少期
第五矢 京の都
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時が経つのは速いもので、氏親の葬儀から五年の月日が過ぎていた。
いつものように勉強を終えた俺に承菊は言い放った。
「さてと、そろそろおぬしにも本格的な僧の修行を行ってもらう。」
「え、そんなのあるんだ。」
「あるに決まっておるだろう。それとも何にもせずとも僧になれると思うたのか。」
図星をつかれて、俺はギクッとした。
(勉強だけすればなれるものだと思ってた…)
そんな俺を尻目に承菊は話を続ける。
「京の都にある京都五山がひとつ、建仁寺まで行く。」
「京都五山?」
「拙僧ら、臨済宗の中でも最上位に位置する五つの寺だ。和尚とは話をすでに取り付けてある。」
(待てよ…京の都ってもしかして…!)
「京都府まで行くの!? 歩いて!?」
「当たり前だ。」
(静岡から京都まで徒歩…)
俺はがっくり肩を落とした。
数日後、俺たちは京の都へ行くために善得寺を出発した。
駿河国を抜けようとしていた時、目の前にゾロゾロと刀を持った人々が現れた。
山賊である。
「僧侶か、まあいい。金目のものを置いていけ。さもなくば…」
山賊たちはジリジリと刀を見せびらかしながら俺たちに近づいてくる。
そんな状況でも承菊は全く動じない。
「すまない。あいにく、おぬしたちが思うような金目のものはござらん。」
「ふざけるな!」
山賊たちが一斉に襲いかかってきた。
承菊はそんな山賊たちへザザザと近づいていき、真っ先に襲いかかってきた三人の山賊の攻撃を避けて、持っていた錫杖を振るって一撃で撃退した。
「えっ…」
そして三人が一気に倒されて怯んだ残りの山賊たちに素早く近づいていき、攻撃の余地を与えることなくあっという間に撃退した。
「進もう。」
目を丸くしている俺にそう言うと、承菊は再び歩き始めた。
しばらく歩くと、荒廃した町を通過した。俺はその光景を見て立ち止まる。
町には人がいる気配がなく、家々があったとされる場所には焼き焦げた柱だけがかろうじて残っていた。
「戦にでも巻き込まれたのだろう。これが乱世だ。」
俺はポツリと呟いた。
「俺たちの町もこうはなってほしくないな。」
「そうだな。あのみたらし団子を食べれなくなるのは拙僧も嫌だ。」
承菊は優しい声で俺の意見に賛同した。
「着いたぞ。」
三日三晩歩き続け、ようやく俺たちは京の都へとたどり着いた。
へとへとになりながらも、俺は京の都に釘付けになった。
俺たちの町もそこそこ栄えてはいたが、はっきり言って京の都は格が違った。
さすが衰えたとはいえ将軍家のお膝元。俺たちの町の数倍規模が大きく、都には人々が溢れ、たくさんの家や店が連なっている。
「今はこんなに栄えているが、昔―応仁の乱直後の都は何もない焼け野原だった。」
「とても昔焼け野原だったとは思えない。」
「ああ、かつての京の人々が復興に尽力したおかげだ。」
京の都を少し歩き、承菊は大きな寺の門の前で立ち止まった。門には建仁寺と書かれている。
門をくぐり、本堂まで行くと高貴そうな感じの和尚が仏に祈りを捧げていた。
「師匠。」
承菊が呼びかけると和尚はくるりと俺たちの方を振り向く。
「おお、承菊か。久しいのう。」
和尚は懐かしそうに承菊を見る。そして和尚は俺の存在にも気づいた。俺は慌てて頭を下げる。
「これからよろしくお願いします!」
「うぬ、おぬしが立派な僧侶になるようわしも力を尽くそう。」
それから僧侶になるための数年間にも及ぶ修行が始まった。
いつものように勉強を終えた俺に承菊は言い放った。
「さてと、そろそろおぬしにも本格的な僧の修行を行ってもらう。」
「え、そんなのあるんだ。」
「あるに決まっておるだろう。それとも何にもせずとも僧になれると思うたのか。」
図星をつかれて、俺はギクッとした。
(勉強だけすればなれるものだと思ってた…)
そんな俺を尻目に承菊は話を続ける。
「京の都にある京都五山がひとつ、建仁寺まで行く。」
「京都五山?」
「拙僧ら、臨済宗の中でも最上位に位置する五つの寺だ。和尚とは話をすでに取り付けてある。」
(待てよ…京の都ってもしかして…!)
「京都府まで行くの!? 歩いて!?」
「当たり前だ。」
(静岡から京都まで徒歩…)
俺はがっくり肩を落とした。
数日後、俺たちは京の都へ行くために善得寺を出発した。
駿河国を抜けようとしていた時、目の前にゾロゾロと刀を持った人々が現れた。
山賊である。
「僧侶か、まあいい。金目のものを置いていけ。さもなくば…」
山賊たちはジリジリと刀を見せびらかしながら俺たちに近づいてくる。
そんな状況でも承菊は全く動じない。
「すまない。あいにく、おぬしたちが思うような金目のものはござらん。」
「ふざけるな!」
山賊たちが一斉に襲いかかってきた。
承菊はそんな山賊たちへザザザと近づいていき、真っ先に襲いかかってきた三人の山賊の攻撃を避けて、持っていた錫杖を振るって一撃で撃退した。
「えっ…」
そして三人が一気に倒されて怯んだ残りの山賊たちに素早く近づいていき、攻撃の余地を与えることなくあっという間に撃退した。
「進もう。」
目を丸くしている俺にそう言うと、承菊は再び歩き始めた。
しばらく歩くと、荒廃した町を通過した。俺はその光景を見て立ち止まる。
町には人がいる気配がなく、家々があったとされる場所には焼き焦げた柱だけがかろうじて残っていた。
「戦にでも巻き込まれたのだろう。これが乱世だ。」
俺はポツリと呟いた。
「俺たちの町もこうはなってほしくないな。」
「そうだな。あのみたらし団子を食べれなくなるのは拙僧も嫌だ。」
承菊は優しい声で俺の意見に賛同した。
「着いたぞ。」
三日三晩歩き続け、ようやく俺たちは京の都へとたどり着いた。
へとへとになりながらも、俺は京の都に釘付けになった。
俺たちの町もそこそこ栄えてはいたが、はっきり言って京の都は格が違った。
さすが衰えたとはいえ将軍家のお膝元。俺たちの町の数倍規模が大きく、都には人々が溢れ、たくさんの家や店が連なっている。
「今はこんなに栄えているが、昔―応仁の乱直後の都は何もない焼け野原だった。」
「とても昔焼け野原だったとは思えない。」
「ああ、かつての京の人々が復興に尽力したおかげだ。」
京の都を少し歩き、承菊は大きな寺の門の前で立ち止まった。門には建仁寺と書かれている。
門をくぐり、本堂まで行くと高貴そうな感じの和尚が仏に祈りを捧げていた。
「師匠。」
承菊が呼びかけると和尚はくるりと俺たちの方を振り向く。
「おお、承菊か。久しいのう。」
和尚は懐かしそうに承菊を見る。そして和尚は俺の存在にも気づいた。俺は慌てて頭を下げる。
「これからよろしくお願いします!」
「うぬ、おぬしが立派な僧侶になるようわしも力を尽くそう。」
それから僧侶になるための数年間にも及ぶ修行が始まった。
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