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第55話「新たな契約」
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御者から「手の甲の紋章」を問われ俺も付けられていた左手の青い羽の紋章が消えていた。
「……うん、消えてる」
「だとすると、私はレイ様と交わした契約はもう解かれたと思い、馬車で朶様にお話ししたことをお伝えさせていただきます。ポルニア国の民には愛が芽生えない呪いにかかっておりました。一部の記憶が書き換えられております。レイ王の父である王父がかけた呪いです。王父は愛する人に裏切られたことで能力を使って国に呪いをかけました。もちろん、その呪いは禁術でありました為に、王父は死に至ることとなりました。後にポルニア国全員、私も含め『愛』というものは分からなくなってしまいました。何故私が愛というものが消えたことが分かったかというと、それは、やはり馬車の御者に仕えさせていただいた故の長年の経験でしょうかねぇ、ハッハッハ」
御者はその後も俺に話してくれた通りのことをレイに話した。
ミケ様が追い求めている、『王の子を授かる』という名目の『愛』。ポルニア国にはレイと同じように、子を孕むことができる民が半数以上いたことなど、御者しか知り得ないであろう情報を包み隠さずレイに話す。
全てを一通り聞き終えたレイは、「なるほど」と頷いた。
「この話はレイ様より先に朶様にお話しをしていたので今までお話できませんでしたことをお許しください。もっとも、こんな架空じみた話はレイ様にお話ししたところで分かってもらえるとも思っておりませんでしたが……」
ブラックジョークを交えながら御者はまた『ハッハッハッ』と声高らかに笑った。
「なので、ポルニア国の呪いは、ポルニア国にい続ける人は引き続き呪いに悩まされていくと思います。王父が掛けた呪いはそういうことです。分かっていただけましたでしょうか、レイ様」
御者は片足を地について、レイに問いた。レイも御者に頷き「確かに、ポルニア国にいる間はそういう話を御者から聞いても受け入れられていなかったと思う。だが、シャドウ国の民になったことで何かの呪縛から解き放たれたように今、心が軽い。今まで感じることができなかった温かい気持ちも芽生えている。御者の話は今だから理解できる。……話してくれてありがとう」と、頭を下げてお礼を口にした。
「そして、二人に今一度私と、ポルニア国とは違う、新たな契約を交わしてほしい。これは私を想い支えてくれたおまえ達とだから成す契約だ」
レイは俺と御者の目を交互に見ながら告げた。俺と御者はレイに頷き、それぞれ契約を交わす。が、レイの声がダダ洩れなので、御者と交わした契約が何なのか俺には分かってしまった。
【エダの名を外に漏らされたらたまらん。これは絶対に契約として結んでやる!】という声が脳内に響いてきたため、恐らく御者と交わした契約は『俺の本名を外に漏らさない』という内容だったようだ。
レイが可愛くて笑いそうになる。
そして俺がレイと交わした契約は、『レイの心の声の情報を誰にも漏らさない』というものだった。密かにレイの心の声らしきものを楽しんでいたのに、レイには俺がレイの心の中を知っていることを知られてしまっていた。さすがはレイだ。
「貴様が時折私に問うことが明らかにそうだったからな。だから、貴様はマゼンダから私を守ることができたんだろう? アイツは狙った獲物は逃がさないからな」
「う、うん……」
「感謝しているぞ、エダ」
「………………」
けれど、レイの心の中はレイが思うようには制御できそうにもなく、【ああ、くそカワイイぞエダ。よし、私が王になったのだから、エダを私の婚約者として迎い入れよう】と、恥ずかしすぎる声がまた響いた。
もーーーー、だから聞こえてるんだって! 無意識なんだろうけど、恥ずかしいんだから、ちっとはこっちの身にもなってくれよ! 心臓がもたねぇ!!
新しく手の甲に付いた紋章は青色だったものが白色に変わっていた。
個人的には白色の方が好きだ。レイの色って感じがする。
御者はレイと契約を交わした後、「ハッハッハッ、では、レイ様達のお荷物はここに置いておきます」馬車で運んでくれたと思われる俺とレイの荷物をテーブルに置いて俺の部屋から出て行った。結果、俺はレイとまた二人きりになってしまった。
心の中を読めるという能力をレイには早々とバレてしまった。恥ずかしくなりレイと顔を合わすことができないでいると、レイは御者が机に置いてくれた自分のバッグを広げ、「そういえば持ってきたぞ」と、机の上に出して広げたものは、アクアニア国で買った夜の営みに使うアダルトなグッズ等だった。
「……なっ、なんで持ってきてんだよ」
ーーって、こんな時にレイの心聞こえねぇし!!
「貴様と使うために決まってるだろ。これらはまだ使ってなかったしな。せっかくだから初夜に使うか……」
……ん? レイから発せられた声を俺は聞き逃さない。すかさず、「初夜とは?」と聞き返すと、レイは耳を真っ赤にさせた。
「……貴様、私の心を覗くな」
「いや、覗いてない! レイが言ったんだろ!」
「言うわけないだろ、バカか」
相変わらずツンツンなレイ。けれど心の中では【……迂闊だった! エダに優しくしたいのに今までの意地が邪魔して素直になれんぞ。……くそ、これも聞こえているのか? どこまで聞こえている……?】と思っていることがばっちりと聞こえてくる。
口では俺のことを『貴様』と呼びながらも、心の中では『朶』と呼んでくれていることに感極まって胸が押しつぶされそうだ。
「……うん、消えてる」
「だとすると、私はレイ様と交わした契約はもう解かれたと思い、馬車で朶様にお話ししたことをお伝えさせていただきます。ポルニア国の民には愛が芽生えない呪いにかかっておりました。一部の記憶が書き換えられております。レイ王の父である王父がかけた呪いです。王父は愛する人に裏切られたことで能力を使って国に呪いをかけました。もちろん、その呪いは禁術でありました為に、王父は死に至ることとなりました。後にポルニア国全員、私も含め『愛』というものは分からなくなってしまいました。何故私が愛というものが消えたことが分かったかというと、それは、やはり馬車の御者に仕えさせていただいた故の長年の経験でしょうかねぇ、ハッハッハ」
御者はその後も俺に話してくれた通りのことをレイに話した。
ミケ様が追い求めている、『王の子を授かる』という名目の『愛』。ポルニア国にはレイと同じように、子を孕むことができる民が半数以上いたことなど、御者しか知り得ないであろう情報を包み隠さずレイに話す。
全てを一通り聞き終えたレイは、「なるほど」と頷いた。
「この話はレイ様より先に朶様にお話しをしていたので今までお話できませんでしたことをお許しください。もっとも、こんな架空じみた話はレイ様にお話ししたところで分かってもらえるとも思っておりませんでしたが……」
ブラックジョークを交えながら御者はまた『ハッハッハッ』と声高らかに笑った。
「なので、ポルニア国の呪いは、ポルニア国にい続ける人は引き続き呪いに悩まされていくと思います。王父が掛けた呪いはそういうことです。分かっていただけましたでしょうか、レイ様」
御者は片足を地について、レイに問いた。レイも御者に頷き「確かに、ポルニア国にいる間はそういう話を御者から聞いても受け入れられていなかったと思う。だが、シャドウ国の民になったことで何かの呪縛から解き放たれたように今、心が軽い。今まで感じることができなかった温かい気持ちも芽生えている。御者の話は今だから理解できる。……話してくれてありがとう」と、頭を下げてお礼を口にした。
「そして、二人に今一度私と、ポルニア国とは違う、新たな契約を交わしてほしい。これは私を想い支えてくれたおまえ達とだから成す契約だ」
レイは俺と御者の目を交互に見ながら告げた。俺と御者はレイに頷き、それぞれ契約を交わす。が、レイの声がダダ洩れなので、御者と交わした契約が何なのか俺には分かってしまった。
【エダの名を外に漏らされたらたまらん。これは絶対に契約として結んでやる!】という声が脳内に響いてきたため、恐らく御者と交わした契約は『俺の本名を外に漏らさない』という内容だったようだ。
レイが可愛くて笑いそうになる。
そして俺がレイと交わした契約は、『レイの心の声の情報を誰にも漏らさない』というものだった。密かにレイの心の声らしきものを楽しんでいたのに、レイには俺がレイの心の中を知っていることを知られてしまっていた。さすがはレイだ。
「貴様が時折私に問うことが明らかにそうだったからな。だから、貴様はマゼンダから私を守ることができたんだろう? アイツは狙った獲物は逃がさないからな」
「う、うん……」
「感謝しているぞ、エダ」
「………………」
けれど、レイの心の中はレイが思うようには制御できそうにもなく、【ああ、くそカワイイぞエダ。よし、私が王になったのだから、エダを私の婚約者として迎い入れよう】と、恥ずかしすぎる声がまた響いた。
もーーーー、だから聞こえてるんだって! 無意識なんだろうけど、恥ずかしいんだから、ちっとはこっちの身にもなってくれよ! 心臓がもたねぇ!!
新しく手の甲に付いた紋章は青色だったものが白色に変わっていた。
個人的には白色の方が好きだ。レイの色って感じがする。
御者はレイと契約を交わした後、「ハッハッハッ、では、レイ様達のお荷物はここに置いておきます」馬車で運んでくれたと思われる俺とレイの荷物をテーブルに置いて俺の部屋から出て行った。結果、俺はレイとまた二人きりになってしまった。
心の中を読めるという能力をレイには早々とバレてしまった。恥ずかしくなりレイと顔を合わすことができないでいると、レイは御者が机に置いてくれた自分のバッグを広げ、「そういえば持ってきたぞ」と、机の上に出して広げたものは、アクアニア国で買った夜の営みに使うアダルトなグッズ等だった。
「……なっ、なんで持ってきてんだよ」
ーーって、こんな時にレイの心聞こえねぇし!!
「貴様と使うために決まってるだろ。これらはまだ使ってなかったしな。せっかくだから初夜に使うか……」
……ん? レイから発せられた声を俺は聞き逃さない。すかさず、「初夜とは?」と聞き返すと、レイは耳を真っ赤にさせた。
「……貴様、私の心を覗くな」
「いや、覗いてない! レイが言ったんだろ!」
「言うわけないだろ、バカか」
相変わらずツンツンなレイ。けれど心の中では【……迂闊だった! エダに優しくしたいのに今までの意地が邪魔して素直になれんぞ。……くそ、これも聞こえているのか? どこまで聞こえている……?】と思っていることがばっちりと聞こえてくる。
口では俺のことを『貴様』と呼びながらも、心の中では『朶』と呼んでくれていることに感極まって胸が押しつぶされそうだ。
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