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第56話「ずっと追い求めていたレイの結末」

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 すると、俺の部屋のドアがコンコンと響き、ドアを開けると「ソウル様、お体は大丈夫ですか? 王位継承式の準備が整いました。王の準備ができ次第広場で行う予定です」と、ハチミツが声を掛けにきてくれたため、レイと一緒に部屋を出、煌びやかな衣装に着替える。


 レイはハチミツに「婚礼式も一緒にしたいのだが、大丈夫か? むしろそっちがメインだと助かる」とお願いしていた。


 ま、まて、婚礼!?
 レイが誰と……と考えていると、また【早く婚礼の儀式を終わらせて今晩めちゃくちゃに抱きしだいてやる】という声が響いた。

 ……って、俺か! けれど、あえて知らないフリをし、

「いやいやいや、レイ、誰と結婚する気だよ!」

 と聞くと、

「おまえに決まっているが」

 と俺の目を真っすぐに見ながら、真顔で答えた。


 ……いや、プロポーズは!? なんでプロポーズしてくれねぇの、いきなりすぎて心の準備が全然できてねぇ!! 俺様気質にも程がある。 嬉しさと複雑な気持ちを入り混ぜていると、「よかったですねぇ、ハチミツめ、嬉しいでございます」ハチミツは再度肘で脇をグイグイと突いてきた。


「いや、俺も嬉しいけど! でも、その……すげぇ嬉しいけど……子は? 俺、ポルニア国のヤツじゃねぇから、子を作れる可能性ってのも少ないだろうし」

「私は貴様といれたらそれだけで十分満足だが?」


 サラッと嬉しい言葉を言うレイに少し戸惑う。


「俺も嬉しいけど……でも、ほら、その……後々欲しくなったりしないかなって……」

「その時は養子をもらうなり色々考えたらいい。なんだ、不満か?」



 レイが俺との未来をそこまで考えてくれていたなんて……
 嬉しくて泣きそうになっていると、ハチミツが、「あの、そのことなんですが……」と口を開いた。


「なんだ!? ハチミツ、俺達の養子になるか!?」

「……何を言っています、なりませんよ。ハチミツめは一生お二人に仕えて生きていきます。そうではなくて、ソウル様、お子をお産みになられる身体ですよ」


 …………ん? 今、なんて?

「ご、ごめん、今何言った? もっかい言ってハチミツ」

「ソウル様はシャドウ国の住民ですので、ポルニア国みたいにフェロモンを出したり、皆をたぶらかしたりはしませんが、月一で発情期がきますよ。ソウル様のお体はハチミツめがきっちり管理しておりますので、今までお薬で制御させていただいておりました! あ、でもシャドウ国にいらした最初の月はすっかり忘れておりました。ソウル様大丈夫でしたか?」

 だ、大丈夫でしたかって……え? いつ? 俺全然記憶にない。

 心配しながらも何故か、えっへんと胸を張りながら得意げに言うハチミツの頬をつねる。


「……だ、そうだ。レイ、何か心当たりある?」


 レイに半笑いで話を投げかけてみると、表情を変えずに真顔で俺を見ている。そして、


「あるな。貴様を最初に抱いた時だ。貴様が媚薬と勘違いして購入してたのはストレスを軽減する薬だったから媚薬ではないぞ。恐らく、あの時と同時に発情期が来たんだろう。貴様のフェロモンのおかげで私は自分の下半身に膨らみを感じることができた」


 何食わぬ顔で答えるレイに顔が真っ赤になる。


「えっ!? なんで発情してるって言ってくれなかったんだよ!」

「私自身も自分の身体の変化で精一杯だったしな。あれからそういうフェロモンは貴様からは感じられなかったから、言うことをしなかっただけだ」


 そうだったのか……
 俺、全然知らなかった。だからレイもアクアニア国の定員も俺に何かを伝えようとしたけど途中でやめたのか。今やっとあの時のことが腑に落ちた。


 俺に聞こえてくるレイの心の声は、

 【信じられん。私の子種をエダに注げるということか? それなら今度から容赦なく中に出せるな。さっそく今夜は嫌というほど抱いてやる。ああ、気持ちが収まらん】

 いやらしいことだらけで、むしろやかましかった。


「……そうか、まあ、子が欲しくなったら言ってくれ」

 表情を変えずに言うレイ。
 さすがにポーカーフェイスすぎるだろ! ここはツッコまなきゃ気がすまない。


「嘘だ! 今晩俺を滅茶苦茶に抱く気のクセに! お、おもちゃまで使う気満々のクセに!」

「……貴様、勝手に人の心を読むな」

「いやでも聞こえてくるんだからしょうがねぇだろ!」

「ふん、仕方ないだろう。貴様が私をそうさせたんだからな。ちゃんと最後まで責任を取れ」


 【お熱いことで~】と冷やかすハチミツと後ろをついていき、無事にぶっつけ本番の王位継承式と婚礼式を終えた。シャドウ国の国民から盛大に祝われ、元ポルニア国の国民にも謝罪ができた。レイは元ポルニア国民の名を一人一人呼び、きちんと向き合い涙を流しながらながら何も力になれなかったこと、辛い思いをさせたことの謝罪をしていた。

 涙を流すレイは初めて見た。それほどまでに、レイの奥底にあった感情が元に戻っているということなんだろう。


「これからは不自由させない。何かあったらいつでも言ってくれ」


 これほどまでに力強い言葉はない。

 結果的にポルニア国から逃げるという選択となってしまったけれど、感情を取り戻しているレイを見ていたらこれでよかったんだと思う。

 ……このレイを、俺はずっと見ていたかったんだ。

 ずっと追い求めていたレイの結末に俺は今、たどり着くことができた。そう思える。






 レイはシャドウ国の城を広場から見上げ、深くため息を吐いた。そしてハチミツに、


「……この城、壊して一から作り直さないか? 中も辛気臭いし、あれでは心も荒んでいくだろう?」

 と、問いかけてた。ハチミツは目を輝かせ、「レイ様、賛成でございます! ハチミツめ、虹色のかわいいお城を作りたいでございます!」逆に作りたい城の提案をしている。


 ……虹色の城って。

「ハチミツはテーマパークにでもするつもりかよ」

 そうツッコむと、ハチミツとレイは「テーマパーク?」と声を揃えて聞いてきたため、砂の地面に石でテーマパークを書いていく。


「テーマパークっつーのは簡単に言えば娯楽だよ。皆が楽しめる場所。ジェットコースターとか、観覧車とか空中ブランコとか、メリーゴーランドとか、お化け屋敷とか、そういうのがあんの」


 あまり上手いとは言えない俺の絵を見て、二人とも「おおおー」と頷いていた。そして、まだまだ子どもなハチミツは「レイ様、ハチミツめ、テーマパークがほしいです! 遊びたいです!」とめちゃくちゃなことをお願いしていた。

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