めがね村のラガンくん

シュンティ

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 不思議なことに、めがね村のラガンくんだけは、小学校に上がる時分になっても、両の目のまわりにめがねが浮かび上がってこなかった。
 
 ラガンくんのお父さんと、お母さんはめがねをかけていたけれども、めがねを外しても何とかものが見えた。これは大人としてはたいへん珍しいことであった。
 二人はラガンくんの子育てを、めがねを外して行ってきた。めがねをかけたままの方が見えやすくて楽は楽なのだが、子育てはめがねを外してというのが二人の方針だった。

 ラガンくんにめがねが浮かび上がってこないのは、このような両親の子育てのしかたが理由だったと考えられる。というのも子どもは親をまねて育つから、親がめがねを外して子育てをすればラガンくんにめがねが浮かび上がってこないのは、至極当然の帰結である。

 ラガンくんはめがねがないことで、みんなからよくバカにされていた。
「どうしてぼくにめがねが浮かび上がってくるように、父さんと母さんはめがねをかけて育ててくれなかったのか」
 ラガンくんは両親の真意をはかりかねた。

 ラガンくんは大人になったら遠い国へ行こうと思っていた。遠い国へ行けば、めがねがないことを、とやかく言われることもないだろうと考えたからだ。
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