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アンフラワー討伐

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「ヒヨリ、良く聞け。アンフラワーは半径約60~80メートルに根を張って、音で獲物を感知している。…ここから先に入れば奴のテリトリーだ。素早く片付けるのが重要だ。奴が技を使う前に、胴体を根と離す様に切る。」


な、なるほど。


俺はコクコクと頷く。


「技は蔦を使い相手を捕まえるのと、あの花の中心部の口から毒や睡眠液、麻痺、媚薬液を放出する。」


なるほど。


ん?一つおかしいのがあった気が。


「俺が一気に斬りかかるから、頭部、花の部分をバリアで包め。植物だから直ぐには死なない、切り離してから毒を撒かれても困る。」

ふむ!なるほど!

「了解!」


「スピード命だから、今から魔力を練っておけ、準備出来たら、行くぞ。」

俺は全身を巡る様に意識して、掌に集めた。


集中が上手くなってきている。

俺はウランにコクリと頷き合図した。

ウランは俺の腕を掴み、小さく術を唱えている。


ボコッと俺とウランの下の土が盛り上がったと思いきや、サーフィン?スノボーの様に高速で土が動き、アンフラワーに一直線に向かった。

スピードが凄まじく、俺は叫びそうになるのを口を押さえて必死に我慢した。

これも、説明してくれよ!!


地面の動きにアンフラワーがこちらを振り向くが、ウランの術と剣の方が早かった。

シュバンッ!!


真っ二つに切られたアンフラワーの花を俺は一気にバリアで包み込んだ。


コンマ何秒差でバリア内が紫の霧が舞う。


ひょえー!毒霧!!

危なかった!!


「ヒヨリ!まだ気を抜くな!このアンフラワーは大きい!幼体も近くにいるかもしれん。」


ウランの声に、ビクッと身体を強張らせる。


静まり返る森の中は風により木々の擦れる音が響き渡る。


カサカサと鳴る音にビクつくが、何も現れない。


大丈夫そうだ。


俺はアンフラワーを間近で見ようと、土で作った土台から降りる。


「ヒヨリ!!まだだ!!」

ぴょんっと降りた瞬間、ウランの慌てた声に振り向くと、足元からババッと地割れと共に根が意思を持ちヒヨリの足へと絡み付いた。


「ギャーーー!!」


一気に森の中へと引きずられる。
必死に地面に指を立てるが、物凄い力で、指が土と血に滲む。


「ヒヨリ!!刀で切れ!!」

ウランが必死に俺を追いながら叫ぶ。


ハッ!そうだ!!切ればいいんだ!


腰の剣を抜くと、既に森の木々の間からアンフラワーが姿を見せた。

先程のより小さく、これが幼体なのだろう。

切ろうと振りかぶった瞬間、ピンクの液体をアンフラワーが吐き出して、ヒヨリの顔に降りかかる。


一瞬の出来事に、最悪の事が頭を過ぎる。

毒霧!!


根を剣で切り、急いでバリアを張った所、颯爽と現れたウランに幼体は斬りつけられた。


ヒヨリはすぐさま、頭部にバリアを張る。



濡れた顔を取り出した布で拭くと、ピンク色で紫の毒とは違い、ホッとするが、睡眠液かば麻痺、バクバクする心臓をグッと拳で押さえ込む。


「ヒヨリ!!大丈夫か!?」


駆けつけたウランに肩を掴まれ、不安から泣きそうになる。

バクバクと心臓が激しくなり、徐々に身体が熱くなってきた。


「お、俺、ごめん!どうしよう…!何か浴びた!!」

うるうるとウランを見上げると、心配そうに眉を寄せて俺の頬を撫でてくれた。


「幼体には毒はない筈だ!どんな液体を浴びた!?症状は!?」


「バクバク心臓が鳴ってる。身体が熱いよ。浴びたのはピンク……加護がある筈なのに、何か苦しい…。」


どんどん息苦しく、熱くなる自分の身体に、不安と戸惑いで目が潤み始める。

恐怖で縋る様にウランの腹部に顔を擦り寄せ、服をギュッと掴む。


「…!!ヒヨ、お前が浴びたのは媚薬液だ。」



び、媚薬液…媚薬!?


ギョッと目を見開くと、顔を真っ赤に染めたウランが俺を見下ろしていた。


「ヒヨ…。すまん、媚薬は抜くしかない…。」


ウッ!!ですよね…。知ってます。


「俺は、転移魔法を使えないからガルディアのとこにも運べねえ…。同じくダイナのとこにも…。」


うん。わかってるよ。


ハアハア…熱く火照る身体をウランに預けると、ウランの心臓もバクバク言っているのがわかる。


「すまんが、…俺が、してもいいか?」


クスッと俺はつい笑ってしまった。
百戦錬磨の野獣のモテ男みたいな俺様オーラを1番最初出していたくせに、今じゃ俺みたいなひよっこにお伺いを立てている。


「ヒヨ?」


俺が返事を返さないから、狼狽えてるな。


なんか、可愛い奴。

失礼かな?


「…いいよ。ウラン…。っていうか、お願いしてもいい?」


俺が頬を硬い筋肉に今一度擦り寄せ、見上げると、真っ赤なウランが力一杯抱きしめてくれた。


「…!!わかった!」



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