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チート過ぎる男

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「ヒヨリ♡」

「ガルディア!!」

ティーンとアルの安堵する声が聞こえてくる。

突然闇の霧から現れたガルディアに盗賊達も動揺する。

だが、ガル本人の瞳にはヒヨリしか見えておらず、真っ直ぐヒヨリの方へと足を進める。


「ガル!!」

突然現れたガルに涙しながら手を伸ばす。

ヒューはガルへの警戒からなのか、毛を逆立てながら唸っている。

そして、あの傲慢のヒューからは考えられないほど、微かに震えていた。

ヒュー?

ヒューの様子から、ヒヨリはガルの強さが、本当にとてつもないのだと実感した。

あのヒューが、警戒し、震えている。

それを感じたのは盗賊達も同じだった。

獣人は気を感じるらしく、人より察知能力には長けているようで、皆耳を伏せ、震えながら、威嚇していた。

タキもそうだ、ヒューの援護に向かいたいが、足がすくみ動かない。


すると、ガルの存在が一瞬、微かにぼやけたと思えば、ヒヨリは既にガルの腕の中にいた。

へ?


周りも、ヒューでさえ、一瞬の事に気づかず、ヒヨリを加えたままの口で固まっていた。


「ヒヨリ、寂しかった。今夜は寝かさない。」

愛おしそうに抱き込むガルに、ヒューは唸り、二本足で立ち上がる。

「ヒヨリは俺の番だー!!返せ!!」

獣の姿から体を少し人化させ、ヒューは吠える。

すると、ガルはチラッと視線をヒューに移し、指を鳴らす。

鳴らした、指の音と同時くらいに空が暗くなり、光出した。
そして、空から轟音の如く、稲妻が降り注ぎ、ヒューを狙う。

咄嗟に避けたが、後ろ足が当たり、切り裂くような悲鳴がヒューから上がった。

後ろ足が雷のせいか、焼け焦げ匂いと微かに煙が上がる。


「ヒュー!?…が、ガルお願い!殺さないで!!」

先程、助けを求めたが、その攻撃の威力に、ヒューの生命の危機を感じ、ガルに涙ながら頼んだ。

「なぜ?お前を俺から奪おうとしたのだろう?」

キョトンとしながら、ガルは指を鳴らす。

また、稲妻が音と共に、ヒューを襲う。
後ろ足をやられたせいか、反応が遅れ、今度は前足に直撃した。

「ガァァァ!」

呻く声に、ヒヨリは必死にガルに縋り付きながら頼む。


「でも、助けてくれたんだ!お願い!ガル!やめて!殺さないで!」

ガルは平然とまた指を鳴らそうとしたのをヒヨリは掌で止めた。
そして、意識をこちらに向けようと、ガルの耳元で呟く。

「ガル…。お願い聞いてくれたら、朝から晩まで1日中ガルの好きな事してあげる。」

ガルは強張るように、全身を硬直させ、ゆっくりとヒヨリを見た。

目が合い、ほっとしながら、ヒヨリはエメラルドの瞳を見つめ返した。

「本当か?ヒヨリ?」

伺う視線に、顔を赤らめながら、頷いた。


「本当だ。ティーンとの契約もあるだろ?あれは一回で1日だけど、1日中何度でも聞いてやる。どうだ?」

ガルは、ツーッと鼻血を流しながら、頷いた。

「わ、わかった。ヒヨリ。約束だぞ。殺さない。」

そんなやり取りの隙をつき、痛めた足のまま、ヒューはガルに飛びつき、腕に噛みつく、通常の獣より、獣人の方が威力は数倍あり、ギチギチと肉に食い込む音がした。

ヒィィ!ガル!腕!


殺さないでと頼んで、直ぐの惨事にヒヨリは顔を青くする。

ガルは平然とヒヨリを片手で抱きしめた状態、鼻血を出しながらうっとりと見つめている。

それに苛立ち、より顎を使い、牙を食い込ませるヒュー。

ギチギチ、と肉の音。

「が、ガル…!い、痛くないの?ヒューも辞めて!!」

ヒヨリの蒼白の顔をうっとりと見つめるガル。

可愛い…心配をしてくれているのか?

ああ!可愛い…。


ガルは腕に噛みつくヒューに視線を向けた。


「ライオンの獣人か…毛の色が、光の具合で黒にも青にも見えるな。…おまえ、キメラだな。他のモノを感じる。…だが、お前じゃ俺には勝てない。諦めろ。」

ガルは腕からヒューを振り払う動作をした。

それだけで、ヒューは吹き飛び、地面に叩きつけられる。

「ヒュー!!」
盗賊達はヒューに声をかけるが、恐怖で動かない。
タキは必死に、動くよう、自分の足を叩く。

あまりの力の差に、先程とは逆にヒューを心配する事になるヒヨリは、オロオロとガルの腕の中で慌てる。

「ガル、あまり傷つけないで、彼、14歳なんだ。子供の時捨てられて、何が良いことで悪いことかわからないんだよ!だから、あまり痛くしないで?」

ヒヨリはガルの傷ついた腕に手を当て、治療しながら、潤む瞳で訴えた。

「…なるほどな。ライオンの親は子供に厳しいという。見た目が違う我が子を捨てたのだろう。…ヒヨリが言うなら見逃してやる。もう、動けないだろうしな。」

ガルの一言にホッと胸を撫で下ろす。

「ガル、まずウランを治療したいから、下ろして?」

ヒヨリの要望に、頷き、下ろす。
ヒヨリはウランの元へ走り、傷の具合を見る。

「ウラン、ウラン!ごめんね!ありがとう!」

まだ意識のあるウランに涙を流しながら治療をすると、片手を上げ、泣くヒヨリの涙を拭った。

「また、ちゃんと守れなかったな。」
悲しそうに呟くウランに、ヒヨリは首を振った。

「俺、無傷だし、ウランの壁が無かったらガルは間に合わなかったよ!」

ニコッと笑うと、ウランも苦笑を浮かべた。

安心したのか、ふっと目を瞑るウランを完全治療をすませた。

次に腕を広げて、待つガルを制しながら、ヒューに近づいた。

ヒューは眉間にシワを寄せながら、苦痛に耐えていた。

「ヒュー…今から傷を治すね?完璧に治すと、また戦いになりそうだから、70%の状態にするよ?残りは安静にすれば完治するから。…ごめんね、ありがとう。…俺はまだ、ヒューとは一緒にいけない。ヒューが、仲間を大切なように、俺を助けてくれたギルドメンバーが大切なんだ。…ヒューが同じギルドだったらよかったのにな!…また会えるの楽しみにしてるから。」

俺は精一杯の気持ちを伝えながら、傷を癒した。

ヒューは無言で切ないピンクの瞳で俺を見つめていた。

最後に、俺はヒューにお別れを意味して、鼻にキスを落とした。

「またな。ヒュー!ありがとうな!」

俺はガルの元へ掛けて行った。

ガルは俺を抱っこすると、不機嫌な顔をして、自分の鼻をチョンチョンと突っつく。


ったく、こいつは。

俺はガルの鼻にキスを落とすと、ガルは口元を嬉しそうに笑わした。

本当にこいつが敵じゃなくて良かったわ。
このチートめ!!

俺はタキとジーンに視線をむけ、頷くと、タキとジーンはコクリと頷き、ガルへと走った。遅れて盗賊達も、走り、森の中へ消えて行った。

「助かったよ。マスター。」

ティーンはため息をつき、ガルの肩を叩いた。

「ティーンさん、やっぱりもしもの時用にマスターを呼んでおいてよかったですね。」

アルもホッとしる。

「えっ?これも作戦だったの?」
キョトンとする俺にティーンは頷いた。

「ああ、ガルを王都に入れるには国王の承諾がいるから、王宮に報告ついでに、話を盛って、許可をもらった。…しかも、こいつ、待てずに近くまで来ていたようでな。鬼ザメやキツネより、倒した後のヒュー達が不安でアルに随時報告させていたんだ。…少し、ヒヤヒヤしたがな。」

フーッと息吐くティーンに、俺はすごいと思った。経験からの読む力って重要だな。

「ヒヨリ、早く帰ろう。楽しみ過ぎて死にそうだ。」

既に腫らした股間で、俺の尻をグイグイ突っつくガルに、俺はタラっと汗を流す。

ヤベ、早まったか?

仲間でも危険人物だと言うことを忘れていた。



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