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ヒューの正体

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バシュッ!

ティーンに絡み付いた植物をヒューが爪で刈り取る。

「すまん!助かった。」
絡み付いた植物の破片を払い、暗器を敵に投げつけるティーン。

狐の部下の腕に命中し、敵は怯む。怯んだ瞬間、ヒューに投げ飛ばされ気絶する。

ティーンは魔法で捕縛する。
ヒューはウランとヒヨリの援護へと向かった。

それを見たヒューはアルへと視線を向ける。

ティーンは暗器を狐の部下の背中に投げつけ、命中させ捕縛。

アルは狐と一対一となる。

「チッ!」
舌打ちする狐にアルは風の刃を向けるが素早い動きで避けられた。

「ティーンさんありがとうございます!コイツは任せて、ヒヨリを!」

ティーンは頷き、ヒヨリ達の方へ向かう。


「そんなこと言っていいんですか?先程から防御しか出来ていませんが。」

狐の回し蹴りを腕で受け止めて、上空へ飛ぶ。

「一対一なら余裕だよ?うちのマスターと違って弱いな狐のギルドマスター。」

ニヤッと笑い風の刃を放つ。

「逃げているだけの男に言われたくないですね!」

風の刃を交わし、獣化を強める。

アルは十字刃物を出し、風で操る。

「今度逃げるのはお前だ!」

狐は刃物を避けるが、軌道を変えて、追ってくる。

「な!チッ!」

避けつつ、10本の刃中二本を爪で止めるが残り8本に襲われる。

狐の肩と足に2本刺さりながらも、避けるが、何度避けても軌道を変えて戻ってくる刃物に狐は焦った。

焦り、アルから意識を逸らしてしまい、気付いた時にはアルがなぜか目の前にいた。

「ハッ!グアッ!!」

アルの風の球が狐の腹に命中し、暴風のように暴れ狂う風の圧力で吹っ飛び、木に激突し、意識を失った。

アルは狐を縛り上げる。


「どうだ!ヒヨリ考案の技の威力は!」


残る俺の仕事は……。

アルは風の囁きを使い、ある者に連絡を取る。


*******


「ヒヨリ!!」

ヒューは鬼ザメの部下からの炎攻撃を避け、爪で切り裂く。

「グアッ!」

残り、部下3人と鬼ザメ!

ヒューの蹴りが、部下の脇腹にヒットし、蹲るが、魔法を使おうと手を伸ばしたところをティーンに捕縛される。

ティーン、ヒューも加わり、鬼ザメはグッと顔を歪めた。

自分の部下も残り2名、オーク達も減り、残り五体ほど。

このままでは負ける!!

何か隙は……。

ふと、鬼ザメは気付いた。何故追い込まれてもヒヨリは逃げるだけなのか、ギルドメンバーでもあるのに。

ニヤッと顔を笑わせて、鬼ザメは両手を上げた。


「降参だ。俺達の負けだ。」

視線で部下に合図をし、部下達も頷き、両手を上げた。

ティーン、ヒュー、ウランは怪しげに3人を見るが、ヒヨリはホッと溜息をついて、ウランの背中から少し離れた。

必死にしがみ付いていたのを一歩、たった一歩が隙を招いた。

鬼ザメはニッと笑うと、足から水魔法を繰り出し、ヒヨリ目掛けて放つ。

ウランは咄嗟にヒヨリを抱き込むと、ウランの背中に水の刃が刺さる。

「ウラン!!」

ウランの背中に手を回すと、温かい血が流れ、ヒヨリの手を真っ赤に染める。

そして、刺さった水の刃が溶けて、ヒヨリの首に巻き付いた。

ぐっ!!
引っ張られるように、鬼ザメの元に行き、ヒヨリの首をより締め付けた。

「ガハッ!」
苦しく悶えるヒヨリに、ティーン達の顔色が変わる。

「ヒヨリ!!」

「おっと、近づくな?コイツがどうなってもいいのか?」

鬼ザメのニヤついた顔にティーンは体を硬らせる。

「ヒヨリから離れろ!!」

ヒューの呻くような叫び、興奮と怒りからか、ヒューの周りを青い炎のようなオーラが纏う。

それを遠目から気付いたジーンが焦る。

「よせ!落ち着けヒュー!」

だが、苦しむヒヨリの顔にヒューの怒りは治らず、全身の獣化が始まった。

ウオオオオオオオオオ!!

ヒューは咆哮を上げ、姿を変えていく。

ヒヨリは苦しみながらも、ぼやける瞳でヒューを見た。

茶色い毛並みだったヒューが青黒く艶やかに光毛並みとなり、獅子の姿へと変わった。

雄の巨大なライオン…しかも、青黒い毛並みにピンクの瞳。

「ヒュー?」

「な、な、青黒いライオンだと!?こんな、ライオンの獣人見たことないぞ!!」

ヒューはシュンッとその場から一瞬の速さで、鬼ザメの間合いに入る。

怯んだ鬼ザメはコンマ何秒魔法を放つのが遅れ、ヒューの鋭い牙に肩を噛まれた。

「ギャーーー!!」

鬼ザメの悲鳴に、部下は顔を青白くし、数歩下がるが、ティーンに捕縛される。


鬼ザメの血で汚れた口周りを舌で舐めながら、鬼ザメの身体を前足で踏みつける。

ボキボキッと鬼ザメの肋骨の折れる音が響く。

「ウガッ!!」

鬼ザメは口から吐血し、意識を失う。

失ったせいか、ヒヨリの首に巻き付いた水も、消えた。

ハアハアハアと必死に息をするヒヨリ。

そして、アルの加勢により、残りのオークも片付けたジーンがヒューに駆け寄る。

「馬鹿野郎!せっかく目立たなくしていたのに!」

ジーンの言葉に、ヒューは頷き、ヒヨリの服に噛み付いた。

「ハアハアッ!?へっ?ヒュー?」

グイと顎の力で持ち上げられたヒヨリ。

「ヒュー離して、ウランを助けなきゃ!」

もがくが、離さないヒューに、アルとティーンの顔が厳しくなる。

「ヒヨリを離せ。」

アルの言葉に、いつの間にか集まった盗賊達の中からタキが現れる。

「協定は、敵を倒すまでだったはず。お前らの言うことをもう聞く必要ないってさ。」

ニヤッと笑うタキに、ヒューは頷く。

「ヒュー!やめて!とにかくウランを!」

ヒヨリはヒューに話しかけるが、何も言わず、ヒューはヒヨリを加えたまま、盗賊達の後ろへ歩き出した。

盗賊達はヒューとヒヨリの壁になるよう剣を構えてティーン達の前に立つ。

「くっ!貴様ら!!」
ティーンは眉間にシワを作り、戦闘態勢に入る。

「いやだ!いやだよ!ヒュー!!」
森の中へ消えていこうとした時、目の前に大きな土壁が現れた。

つ、土壁!!

ヒヨリは振り向くと、うつ伏せに倒れながら、手をかざすウランがいた。

ウラン!よかった!生きてた!!

グルルと忌々しそうに唸るヒュー。


すると、ジーンは魔法で土壁に穴を開けた。


ジーンの魔法は水のようだ。


「ヤダよ!!ヒュー!お願い!!こんなことされたら、嫌いになっちゃうよ!」


開けた穴から脱出しようとするヒューにヒヨリは暴れる。

「ヒヨリ!!」

アルとティーンの声がする。


いやだ!ウランを治さなきゃ!アル、ティーン!!

だ、誰か助けて!!


その瞬間だった。
何度も聞いた、自分を愛おしそうに呼ぶ声が、懐かしく、耳に入った。

「ヒヨリ。」

ヒューは殺気を露わに、振り向いた。

そこには、真っ黒な闇の切り裂きから現れた人物が立っていた。

「ヒヨリ、会いたかった♡」

相変わらずの無表情、だが、ヒヨリはその存在に安堵のあまり、涙した。

「ガルー!!!」



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