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ネフェリア、学園編
ヴィヴァリアンの想い
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コンコン
扉をノックする音に時刻を確認する。
机に広げた紙切れをまとめ、引き出しにしまう。
「はい…。」
「ネフェリア、私だ。」
この低いけど、響く声は…
ガチャ
やはり、予想通りの男が目の前に立っていた。
「ヴィヴァリアン様…こんな夜更けにいかがなさいましたか?」
僕は部屋に招き入れ、ヴィヴァリアンを椅子へと案内した。
「すまない。…どうしても会いたくてな。」
僕は曇りあるヴィヴァリアンの様子に紅茶を用意した。
「ありがとう。ネフェリアの入れた紅茶は格別だ。」
優しく笑う姿に少しホッとする。
少し紅茶の産地などについて談笑する。
優しく微笑むヴィヴァリアンだが、時々、切なそうに瞳を揺らす。
「ヴィヴァリアン様、何かありましたか?」
ヴィヴァリアンはテーブルの上の拳をグッと握りしめて、立ち上がった。
そして、ネフェリアを抱え、ベッドへと下ろした。
ネフェリアはいきなりの事に動けず、見開いた紫色の瞳でヴィヴァリアンを驚愕の眼差しで見つめる事しか出来なかった。
ギジリと覆い被さるヴィヴァリアンの重さにベッドが軋む。
金の瞳がランプの灯りに照らされてキラキラと輝く。
その瞳から熱情を感じ、ネフェリアは身体を強張らせた。
「ヴィヴァリアン様…な、何を…」
やっと絞り出せた声でネフェリアは、覆い被さるヴィヴァリアンに向け投げかける。
「ネフェリア、私は後一年で学園を卒業し、このまま行けば王太子として任命されるだろう。…そうなれば、未来の王妃教育もある為、婚約者を決めなければならない。」
ネフェリアは無言で頷いた。緊張からか、肘を支えに、上半身を必死に起こしているが、腕が痺れる。
「ネフェリア…私は、お前が好きだ。」
その一言に身体が震えた。
恐怖?いや、違う。何故かわからないが、ヴィヴァリアンの切なくも熱い眼差しと、愛おしくも苦しいといった表情に、僕の全身に何かが駆け巡ったんだ。
「好きなんだ…ずっと、ずっとだ。私は王位継承権一位…婚約しなければいけないのに、王妃教育ももっと早くからすべきだと、わかっている。本当は無理矢理にでも、権力を使い、お前を婚約者にでもしたい…。でも、お前を思うと出来ないんだ。お前の心が欲しい…全てが欲しいんだ。…そんな我儘で、ここまで来た。もう、残された時間は後わずかなんだ。」
10歳の時に出た婚約話、それを僕は自分の未来の為に流した。
国王はまず、友人からと許してくださった。それに甘えて、忘れた振りをしてここまで来たんだ。
本当はヴィヴァリアンが婚約しなかった時点で、もしかして?とは頭の片隅にあった。
だけど、こんなにも熱く、想われているとは思わなかった。
前回、あんなにも簡単に切り捨てられたこの僕が…
ヴィヴァリアンにこんな表情をさせている。
「ヴィヴァリアン様…」
僕は、苦しそうに眉を寄せるヴィヴァリアンの頬に触れそうになり、手を止めた。
許しもなく、触れてはいけない存在。
だが、その手をヴィヴァリアンは握り、自分の頬へ重なるように当てた。
「愛している。お前を諦めきれない…。」
ヴィヴァリアンは吐息を吐くようにして、愛を囁き、ネフェリアの額にキスを落とす。
柔らかく熱い温もりを額に感じ、数秒の事なのに、そこに熱が残る。
さらに、ヴィヴァリアンはネフェリアに被さり、ネフェリアの残る一本の腕の支えを奪い、ベッドへ押し倒した。
焦るネフェリアの表情を見つめ、頬を掌で包む。
「ヴィヴァ…!?」
ネフェリアの声はヴィヴァリアンの唇によって掻き消された。
氷の皇子と呼ばれるヴィヴァリアンの唇はとても熱く、柔らかい。
唇から伝わるヴィヴァリアンの熱さにネフェリアは呑み込まれそうになる。
緊張で上手く息が出来ず開いた唇の間に舌が差し込まれ、甘い、ベリーティーの味がする。
「ん!!」
ヴィヴァリアンの舌は口内を這い回り、ネフェリアの舌を捕らえると、何度も何度も絡めてきて、ベリーティーより甘く感じるヴィヴァリアンの唾液が口内に溢れる。
何度も味わうかのように角度を変え、ネフェリアを貪りヴィヴァリアン。
ネフェリアは、思考が働かず、ヴィヴァリアンの熱に侵されたように、身体をが熱っていた。
しかし、コリッと足に当たる硬さに、ネフェリアはハッと意識を取り戻す。
ヴィヴァリアンはそんなネフェリアからゆっくり唇を離し、クスリと笑った。
「大丈夫だ。ネフェリア…これ以上は今日はしないよ。お前に嫌われたく無い。俺が1番恐れているのもお前で1番愛しいのもお前だ。ネフェリア…。私の本気を伝えたくて無理させた。」
ヴィヴァリアンは指先でネフェリアの濡れた唇を拭うと、ベッドから降り、服を整える。
「ネフェリア…私は本気だ。お前をあいしている。…これから私はお前に惚れてもらう為、1人の男として努力するから覚悟しなさい。」
そう言うと、不敵に笑い、ネフェリアの部屋を後にした。
ネフェリアはパタリとベッドに倒れ込み、ヴィヴァリアンの唇の感触に悶え暴れた。
ううっ!!ヴィヴァリアン様め!!
扉を閉めると、薄暗い通路の壁に寄りかかる人物。
「…気付いていたか。」
ヴィヴァリアンは冷たい視線をむける。
「貴方と何年一緒にいると思ってますか?…それに、貴方の様子からネフェリアが心配でね。」
月夜に照らされるスカイブルーの瞳。
「キリウス、私は必ずネフェリアを王妃にする。」
何か吹っ切れたように笑うヴィヴァリアンに、キリウスは溜息をつきながら笑う。
「焦っていた貴方の方が、勝てそうな気がしたんですがね。」
「言ってろ!」
静かな廊下に2人の微かな笑い声が響いた。
扉をノックする音に時刻を確認する。
机に広げた紙切れをまとめ、引き出しにしまう。
「はい…。」
「ネフェリア、私だ。」
この低いけど、響く声は…
ガチャ
やはり、予想通りの男が目の前に立っていた。
「ヴィヴァリアン様…こんな夜更けにいかがなさいましたか?」
僕は部屋に招き入れ、ヴィヴァリアンを椅子へと案内した。
「すまない。…どうしても会いたくてな。」
僕は曇りあるヴィヴァリアンの様子に紅茶を用意した。
「ありがとう。ネフェリアの入れた紅茶は格別だ。」
優しく笑う姿に少しホッとする。
少し紅茶の産地などについて談笑する。
優しく微笑むヴィヴァリアンだが、時々、切なそうに瞳を揺らす。
「ヴィヴァリアン様、何かありましたか?」
ヴィヴァリアンはテーブルの上の拳をグッと握りしめて、立ち上がった。
そして、ネフェリアを抱え、ベッドへと下ろした。
ネフェリアはいきなりの事に動けず、見開いた紫色の瞳でヴィヴァリアンを驚愕の眼差しで見つめる事しか出来なかった。
ギジリと覆い被さるヴィヴァリアンの重さにベッドが軋む。
金の瞳がランプの灯りに照らされてキラキラと輝く。
その瞳から熱情を感じ、ネフェリアは身体を強張らせた。
「ヴィヴァリアン様…な、何を…」
やっと絞り出せた声でネフェリアは、覆い被さるヴィヴァリアンに向け投げかける。
「ネフェリア、私は後一年で学園を卒業し、このまま行けば王太子として任命されるだろう。…そうなれば、未来の王妃教育もある為、婚約者を決めなければならない。」
ネフェリアは無言で頷いた。緊張からか、肘を支えに、上半身を必死に起こしているが、腕が痺れる。
「ネフェリア…私は、お前が好きだ。」
その一言に身体が震えた。
恐怖?いや、違う。何故かわからないが、ヴィヴァリアンの切なくも熱い眼差しと、愛おしくも苦しいといった表情に、僕の全身に何かが駆け巡ったんだ。
「好きなんだ…ずっと、ずっとだ。私は王位継承権一位…婚約しなければいけないのに、王妃教育ももっと早くからすべきだと、わかっている。本当は無理矢理にでも、権力を使い、お前を婚約者にでもしたい…。でも、お前を思うと出来ないんだ。お前の心が欲しい…全てが欲しいんだ。…そんな我儘で、ここまで来た。もう、残された時間は後わずかなんだ。」
10歳の時に出た婚約話、それを僕は自分の未来の為に流した。
国王はまず、友人からと許してくださった。それに甘えて、忘れた振りをしてここまで来たんだ。
本当はヴィヴァリアンが婚約しなかった時点で、もしかして?とは頭の片隅にあった。
だけど、こんなにも熱く、想われているとは思わなかった。
前回、あんなにも簡単に切り捨てられたこの僕が…
ヴィヴァリアンにこんな表情をさせている。
「ヴィヴァリアン様…」
僕は、苦しそうに眉を寄せるヴィヴァリアンの頬に触れそうになり、手を止めた。
許しもなく、触れてはいけない存在。
だが、その手をヴィヴァリアンは握り、自分の頬へ重なるように当てた。
「愛している。お前を諦めきれない…。」
ヴィヴァリアンは吐息を吐くようにして、愛を囁き、ネフェリアの額にキスを落とす。
柔らかく熱い温もりを額に感じ、数秒の事なのに、そこに熱が残る。
さらに、ヴィヴァリアンはネフェリアに被さり、ネフェリアの残る一本の腕の支えを奪い、ベッドへ押し倒した。
焦るネフェリアの表情を見つめ、頬を掌で包む。
「ヴィヴァ…!?」
ネフェリアの声はヴィヴァリアンの唇によって掻き消された。
氷の皇子と呼ばれるヴィヴァリアンの唇はとても熱く、柔らかい。
唇から伝わるヴィヴァリアンの熱さにネフェリアは呑み込まれそうになる。
緊張で上手く息が出来ず開いた唇の間に舌が差し込まれ、甘い、ベリーティーの味がする。
「ん!!」
ヴィヴァリアンの舌は口内を這い回り、ネフェリアの舌を捕らえると、何度も何度も絡めてきて、ベリーティーより甘く感じるヴィヴァリアンの唾液が口内に溢れる。
何度も味わうかのように角度を変え、ネフェリアを貪りヴィヴァリアン。
ネフェリアは、思考が働かず、ヴィヴァリアンの熱に侵されたように、身体をが熱っていた。
しかし、コリッと足に当たる硬さに、ネフェリアはハッと意識を取り戻す。
ヴィヴァリアンはそんなネフェリアからゆっくり唇を離し、クスリと笑った。
「大丈夫だ。ネフェリア…これ以上は今日はしないよ。お前に嫌われたく無い。俺が1番恐れているのもお前で1番愛しいのもお前だ。ネフェリア…。私の本気を伝えたくて無理させた。」
ヴィヴァリアンは指先でネフェリアの濡れた唇を拭うと、ベッドから降り、服を整える。
「ネフェリア…私は本気だ。お前をあいしている。…これから私はお前に惚れてもらう為、1人の男として努力するから覚悟しなさい。」
そう言うと、不敵に笑い、ネフェリアの部屋を後にした。
ネフェリアはパタリとベッドに倒れ込み、ヴィヴァリアンの唇の感触に悶え暴れた。
ううっ!!ヴィヴァリアン様め!!
扉を閉めると、薄暗い通路の壁に寄りかかる人物。
「…気付いていたか。」
ヴィヴァリアンは冷たい視線をむける。
「貴方と何年一緒にいると思ってますか?…それに、貴方の様子からネフェリアが心配でね。」
月夜に照らされるスカイブルーの瞳。
「キリウス、私は必ずネフェリアを王妃にする。」
何か吹っ切れたように笑うヴィヴァリアンに、キリウスは溜息をつきながら笑う。
「焦っていた貴方の方が、勝てそうな気がしたんですがね。」
「言ってろ!」
静かな廊下に2人の微かな笑い声が響いた。
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