転生は普通のことだった!~最弱賢者の大逆襲~

牛一/冬星明

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01.目が覚めると異世界だった。

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輪廻転生、人は死ぬと魂が抜けて天界に行き、そして生まれ変わる。
魂の回帰の事だ。
地獄と天国があるかは知らないが、人は転生を繰り返す。
抗う事など誰もできない。
転生なんて当たり前の事なのだ。

俺は気が付くと、白い雲の上をふわふわと浮かんでいた。
ここがどこはまったく判らない。
ただ、ふわふわと浮いているだけであった。

短いようで長い時間を過ごした。
目を見えず、耳も聞こえない。
それどころか手足もなく、存在そのモノが希薄なのだ。
同時に空腹も疲れもない。

ただ暖かく、何かで満たされたような気分でふわふわと浮いていた。
暖かく感じられるが、太陽のような光ではない。
もやもやとしたぼんやりとした光だ。
気持ちいい。
このままでずっと漂っていたい。

否、否、否・・・・・・・・・・・・心の奥底で誰か否定していた。
少しくらいならのんびりしてもいいだろう。
相反する心がぶつかっていた。

目も見えないが、辺りを感じる事はできる。
俺の側にもいくつもふわふわと浮いているモノがある事に気づいた。
ご同輩だろうか?
よ~く感じると、幾万、幾億のご同輩がいるようだ。
黒い渦が生まれると喰われて居なくなる。
蓮の花のようなモノが咲いては新しい光の靄のようなご同輩が生まれていた。
ここはどこなのだろうか?

ふと、そう考えた瞬間に俺の側に黒い渦が生まれた。
駄目だ! 
喰われる。

黒い渦に喰われると、ごぼっと息苦しさが襲って来た。
体が引き千切られそうに痛い。
痛い、苦しい。
誰か、助けてくれ。

 ◇◇◇

「〇※□、□◆※☆※※」(おめでとう。男の子よ)

産婆がお湯で俺の体を洗うと布に包んで抱き上げた。
俺は何も見えないし、言葉は雑音でしか聞き取れない。
そして、赤ちゃんである俺を母親の横に寝かせた。
俺は必死に「ここは何処だ。誰がいる。何か答えろ」と叫ぶのだが、他の者には、「おぎゃ、おぎゃ、おぎゃ」と鳴き叫ぶ赤ん坊の声でしかなかった。

「◎△$♪×¥●&%#!」(坊や、私がお母さんですよ!)

母親は俺に囁きかけた。
不快な声ではないが、何を言っているのかも判らない。
ここはどこだ?

ぐえぇ、強引に掴まれて放り投げられたような遠心力が掛かった。
殺される。
俺は必死に叫ぶ。

「おぎゃ、おぎゃ、おぎゃ」(誰だ、馬鹿野郎。丁寧に扱え!)

何か頬を刺されて痛みが走り、体が万力で落ち潰されそうになる。
死ぬ!?

「〇※□、□◆※☆※※」(お前はアルフィン・パウパー。俺の息子だ)

ぎゅっと抱きしめられた。
俺は口から中身が全部出てしまいそうになった。
何度も死ぬのではないかと思ってしまった。

 ◇◇◇

寝ては起きる。
そんな事を繰り返す。
目は光を追えるだけで見えず、耳は雑音しか聞き取れない。
思考を繰り返すくらいしかやる事がない。

俺は後輩の家で不倫の仲裁をやっていた。
大手の商社マンで、課長で、部下がいて………あの日もゴミ出しの日であった。
下の階に部下の部屋があり、ゴミ捨ての帰りに部下の妻に相談された。
上司という仕事も楽ではない。
馬鹿がJK(女子高校生)と付き合った。
妻がお産で実家に帰っていたので貯まっていたのかもしれない。
問題は相手が熱を上げた事だ。

「すみません。こんな事になって」
「奥さんに所為ではありません」
「他に頼れる人がいないのです」
「判ります」

その仲裁を部下の妻に頼まれた。
人柄の良い課長を演じるのも大変だったのだ。
俺は便利さから社宅に住んだ。
同じ会社の子供らが公園で楽しげに遊ぶ姿が微笑ましく、奥様の連中がいつも井戸端会議をしていた。
部下の妻達からよく声を掛けられ、子供会や自治会の仕事をよく回された。
「俺が会長ですか?」
「他に引き受けてくれる人がいないのよ」
「日曜は暇でしょう」

上司の奥様から子供会の会長職を廻された。
結婚もせず、子供もいない俺が子供会の会長はないだろう?
子供らに声を掛けただけで子供好きと思われた。
別に子供が好きな訳ではない。
偶々、部下の子供が声を掛けてくるのだ。
部下の家族サービルを手伝って、バーベキュー大会などを催して知り合っただけである。
子供は遠慮がない。
俺を見つけると声を掛けてくる。
ただ、それだけだ。
それを見ていた奥様方が俺を子供好きと認定した。

俺も30代前半まで世界各地を飛び回っていましたが、その功績が認められて本社勤務の課長代理に昇格すると日本勤務に戻った。
俺の死頃は国内マーケティングで子会社の立て直しだった。
そのまま40歳で課長に昇進し、直属の部下も多くなった。
海外では、部下との交流を深めるのが仕事を円滑に進める方法だったのだ。

JK(女子高校生)と付き合うなど馬鹿のする事だ。
本社に伝われば、首は確定だ。
二人目が生まれたばかりで、部下の妻は穏便に済ませたいようだった。

首だ、首だ、首だ!

そう言えれば楽だったのが、同時に俺の管理能力にも疑問符が付く。
部下の尻拭いは上司の仕事だ。
俺は女子高校生を言いくるめて、奥さんと子供に退職金をがっぽり奪ってから放り出す事に決めた。
俺は元JK(女子高校生)に会った瞬間に頭を抱えた。
大きな腹を摩っていたのだ。

元JK(女子高校生)は学校を卒業した後に妊娠が発覚して、親に勘当されて進学を諦めたと言う。
もう頼るのが部下だけというので頭が痛い。
離婚させて自分と結婚する子としか考えていなかった。
若さ故の過ちだ。
後先を考えていない。
会社を円満退職させるつもりだった俺の計画を根っこから拒否する単細胞ぶりだった。
懲戒解雇されると退職金が支給されない。

「そんなの関係ありません。とにかく別れて下さい」

蓄えも余りなく、社宅は追い出され、退職金もなしでどうやって生活するつもりだ。
説得が利かない馬鹿さ加減に呆れた。
略奪愛とかに陶酔していた。
尻の青い元JK(女子高校生)は頭を沸騰させて、『妻と離婚しろ』の一点ばりだった。

「よく聞け。ここを追い出されて、明日からどこで住むつもりだ」
「そんなの愛があれば、生きていけるわ」
「馬鹿か、どこで愛の住処を作るつもりだ」
「そんなの!?」

元JK(女子高校生)は泣き崩れたが、俺は容赦なく現実を叩き付ける。
部下に能力がない事。
子供が生まれて貯蓄を失っている事。
前金、補償金無しで家を借りられない事。
再就職しても給与が低くなる事。
将来の無さを1つ1つ上げて、この先にあるのが薔薇色の人生がなく。暗い展望しか無い事を言い聞かせた。

それを聞いて、部下は言葉を失って一言も発しなくなり、顔を黒くして固まった。
ふん、鼻で笑う。
そして、縋る元JK(女子高校生)に反応しない部下を見て、元JK(女子高校生)も現実が見えてきたのだ。
商社マンとして鍛えた話術の勝利だ。

このまま穏便に依願退職に持って行く。
退職金が出れば、少しの時間を稼ぐ事ができる。
再就職先を斡旋する事もできる。
それは敢えて口にしない。
まず、元JK(女子高校生)に諦めさせるが、騒がせないように誘導しなければならなかった。

「おじさん、わたしどうしたらいいの!?」

よし、堕ちた。
頼る相手が部下から俺に変わった。
完全勝利だった。
後は話術でどうとでもなる。

このまま元JK(女子高校生)と別れさせるのも、妻と別れさせて子供の養育費のみ奪うのもありだ。
妥協点が見えれば、交渉は楽になる。
元JK(女子高校生)も家を追い出され、将来の展望が無くなり、さらに妊娠して不安になって、言い訳を愛情に求めた。
所詮、恋愛なんて錯覚だ。

がたん。
青い顔をした奥さんが席を立つとふらふらと部屋から出て行った。
奥さんを外しておくべきだったのだ。
元JK(女子高校生)以上に奥さんまで落ち込ませてしまいました。
自分の夫がどれほど駄目人間かと聞かされて、将来に不安でも覚えたのだ。
二度、同じ説得する手間が省いた。
これが俺の失敗だった。
台所から出刃包丁を持って戻って来た?

「あなたを殺して、私も死にます」

馬鹿か!?
俺は咄嗟に間に入って奥さんを止めようと立ち上がった。
嫌ぁ、元JK(女子高校生)も立ち上がって、俺と元JK(女子高校生)は足を絡めて倒れた。
俺は奥さんの方に、元JK(女子高校生)は部下の方へ倒れて行った。

しゅぱっと腹に何かが刺さった感じながら、向かって来た奥さんとぶつかって、覆い被さるように倒れ込んだ。
痛って!
腹に手を押さえると、べっとりとした感触を覚えた。
俺は奥さんの上に被さっていた。
立ち上がろうと手に力を入れるが力が入らない。
奥さんの背中が真っ赤に染まっていった。
あっ、ヤバいな。
大量出血だ。
最初に痛みが走ったが、その後に痛みが消えたような気がしていたが違うようだ。
手の感覚も消えてゆき、力が無くなった。
次に気が付くと、体が浮遊感に包まれていた訳だ。
思い出した。
クソぉ、クソぉ、クソぉ、俺の人生を返しやがれ。

「◎※※□、〇〇□◆□△▼?」(どうしての? お腹が空いたのかな)

おぎゃ、おぎゃ、おぎゃ、俺の声はおぎゃとしか聞こえないようだ。
抱かれると気持ちが落ち着く。
柔らかいモノが口元に当てられると、無意識で口を動かし始める。
そして、腹が膨らむと眠くなる。

間違いない転生だ。

2度目、否、3度目の人生をやり直してやる。
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