かみたま降臨 -神様の卵が降臨、生後30分で侯爵家を追放で生命の危機とか、酷いじゃないですか?-

牛一/冬星明

文字の大きさ
8 / 34

7.覚えておけよ<翼竜との遭遇戦>

しおりを挟む
河は蛇行だこうする。
蛇行だこうと『ヘビ』と書かれてくらいにぐにょぐにょ・・・・・・だ。
西に進むと思えば、いつの間にか南に向かっていた。
西南ではなく、南だ。
規模が大き過ぎて気付かなかった。
大河沿いに進めば間違いないと思っていた私が馬鹿だった。
もっと早く気付けよ。
再び北西に進路が変わり、西南に曲がった所で河を離れて、森をショートカットするつもりで西に進路を取った。

河から離れると翼竜がいる山が近くに感じられた。
海から10日ほど観察したが、翼竜は山から出ない。
山に近づかなければ、危険はない。
2~3年もすれば、魔石狩りに行ってやろうなどと考えていた。
翼竜程度、本来なら私の敵ではないのだ。
そんな訳で翼竜に特別な警戒がなかったのも事実だ。
所詮、翼竜如きだ。

河沿いから外れると山が近く、すでに彼らの領域に入っているとは思っていなかった。
森は鬱蒼と木々が生えて、辺りがまったく見えない。
クーちゃんのマップ機能を頼りにしているが、進んでいる方向が間違っていないか位にしか役に立たない。
一度、領内を1周すれば、どこにいるか判る便利な機能なんだけどね。
行った事のない場所では役に立たない。

“くぅ、くぅ、くぅ”

クゥちゃんが俺は護衛で案内係じゃないと苦情を言う。
知っていた。
ずっと地図と睨めっこしている訳じゃない。
見ていなかった。
そうでなきゃ、太陽の位置を見て南に向かって歩いていると気付いていたよ。
それに護衛と言うけど、ここの敵はクゥちゃんより強く、護衛としても今一なんだよね。
クゥちゃんがファイティングポーズを取って、ボクサーのように拳を振る。
でも、可愛らしいであって強そうに見えない。
そういう見た目に私が造ったからね。

しばらく歩いたので索敵魔法を放った。
魔席無しの魔獣が消えた。
魔石持ちの魔獣が逃げて行く。
私の魔石が・・・・・・・・・・・・。
これからは索敵魔法の距離を絞り、回数を減らした方がいいかもしれない?

 ◇◇◇

薬草を採取しながら、1日30kmを走破した。
朝起きると、3時間歩いて、1時間の作業、1時間のお昼寝だ。
昼からも3時間歩いて、夕食にスープを食べると、デザートの葛湯を飲んで就寝する。
木にもたれて寝るのも慣れたモノだ。
睡眠時間は16時間で、4時間おきに空腹で目が覚めるので、栄養サプリを飲んでは就寝を繰り返す。
お昼寝を入れると1日17時間は寝ている。
ポーションの消化も早くなり、お腹がすぐに空く。
道中はイカや貝の干物を噛んで歩いている。
食べるのは厳禁だ。
おやつタイムに葛湯を飲む。
残念ながら、まだ固形物は受け付けない。
生後1ヶ月と少しだ。
こんなモノか。

ぐわぁ、森の頭上で翼竜の鳴き声が聞こえた。
山に近づき過ぎた?
距離を狭めた索敵で森から突き出したような岩場を見つけた。
肉体強化で軽く跳びながら、岩場の小山を登って行った。
森から出ると視界が広がった。
目の前に山が見え、思っていた以上に近づき過ぎたようだ。
上空を旋回する翼竜が私も見つけた。

刹那!?
急降下してくると鋭い爪をこちらに向ける。
私は身を翻すと鋭い爪を避けて、すれ違い様に首元を目掛けて木槍を投げつけた。
翼竜の羽に傘が破れたような大穴が空いた。
ちぃ、私は舌を打つ。
この体は修練がなっていない。

ぐわぁぁぁ、翼竜が羽を破られて怒っている。
スキルを身に付けられない私は修練で体を自由に操れないと能力が発揮できない。
神力で身体能力が桁違いに上がっているが、赤子のステータスを一桁上げても人並み以下だ。
翼竜程度に苦戦する自分が情けない。
竜族である翼竜の爪は守護霊獣クーちゃんの防御結界を破っていた。
仲間が寄って来た。

「少女一人に五匹かがりとは卑怯だぞ」

私の抗議を聞き入れて貰えない。
卑怯な奴らだ。
間髪を入れずに横から次の爪が襲って来たので、ショートソードに神力と魔力を這わせて聖剣並に威力を引き上げて対抗する。
自分から転がって爪を避けると剣を横に振って爪を切った。
もっと早く動かないのか?
すれ違い様に翼を斬ってからスラリと躱したいのが、実際は避けるのが精一杯だ。
懐に飛ぶのも怖い。
クーちゃんが結界を再構成したが気休めでしかない。

グギャ!
爪を切られた翼竜と羽に穴を開けられた翼竜がけたたましい声で怒りを露わにする。
自分の方が強者と思われているのが腹立たしい。
私は岩場の頂上から、そのままゴロゴロと転がって岩場の端から落ちる。
もちろん、ワザとだ。
落ちながら体勢を取り戻し、ピョンピョンと絶壁の岩を蹴って跳ねた。

グギャ、グギャ、グギャ!
絶対に逃がすなとでも叫んでいるのだろうか?
凄い形相で急降下してきた。
獲物を逃がしてなるモノかという感じだ。
馬鹿め!
自分達が絶対的な強者だと勘違いしている。
私を追って岩場スレスレに急降下してくる五匹の翼竜を見て、ニヤリと頬を緩めた。
最後の一匹が岩場より下に入った所で、私は『加速装備!?』と唱えた。
世界が止まる。

降りてきた絶壁を急いで登る。
体力的にかなりキツいがここは我慢だ。
時間はわずか16分と40秒だ。
のんびりと山を上がっている時間はない。
岩山を登り切ると、翼竜を見下ろして私は呟いた。

「誰に喧嘩を売ったのか教えてやろう」

助走を付けて翼竜の背中を目掛けて飛んだ。
ショートソードを下に向け、急所の魔石を目掛けてグサリと刺した。
あっ、しまった。
貴重な魔石を壊した事に刺してから気が付いた。
魔石は貴重だ。
特に翼竜の魔石も質が良い。
剣を引き抜くと、翼竜の背中を蹴って次の翼竜の背中に飛ぶ。
ぐさぁ、魔石じゃなく、心臓を刺した。
確実に殺す為に首を一閃しておく。

次の一匹はちょっと遠い。
魔力“アンカー”を這わせた短槍を投げて串刺すと、自分を引き寄せる感じで背中に飛び乗る。
最近知ったが、錨を這わせた短槍は手足の延長になるらしい。
魔力で撃ち出すほどの威力はないが、通常時間に戻るよりは使い勝手がいいのに気が付いた。
あと二匹だ。

随分と急降下しているのは最初に手傷を負わされた翼竜達だ。
傷を負わされて怒っているのだろう。
倒した3匹よりかなり下にいたが、度胸を決めての紐なしバンジージャンプだ。
紐がなければ、バンジーじゃない。
細かい事は気にしない。
岩山を登り直すのに15分を掛けており、残り1分40秒で残り2匹を始末しなければならない。
脳内のカウントダウンが始まっていた。
幸いな事に残り2匹は重なって真下に居た。
落下しながら胴体から一刀両断し、もう一匹の背中に落ちる。
ドカッと着地。
びびびびびびっと衝撃が足の先から頭へと抜ける。
顔が引き攣る。
痛い、痛い、マジで痛いけど、今は痛みに耐えている暇はない。
3,2,1とカウントダウンが・・・・・・・・・・・・残りの時間が消えてゆくので、痛みも忘れて体を捻って目の前の尻尾だけでも切った。

ぐぎゃあぁぁぁぁ!
時間が戻った瞬間に翼竜がけたたましい声で鳴いた。

「そのまま他の四匹のように黙っていろ」

残る4匹は絶叫を上げる事もなく、絶命していた。
暴れる翼竜の背中で私は体を捻った?
捻れていない。
尻尾を切った反動で体は捻ってすぐさまに首を落とそうと思っていたのだが、足が言うことを聞かない。
まるで置物のようにピクリとも動かない。
翼竜がさらに暴れた。
私は足場を失って地面に落とされた。

痛い。
よく気を失わなかった。
尻尾を失った翼竜もバランスが取れずに仲良く落ちた。
横から落ちて全身打撲だ。
あっちも痛そうだが、こっちも痛い。
なんて感じている暇もない。
上から数トンの物体が4つを落ちてくる。
上半身を無理矢理に捻ってゴロゴロと転がって森の方へ回避した。
ズドン、ズドン、ズドン、スドンと落下すると、大きな土煙が私を隠した。

痛みを堪えながら傷回復ポーションを飲む。
じわっと胃が熱くなると、全身から痛みがゆっくり引いてゆく。
残りの翼竜に止めを・・・・・・・・・・・・他の死体の回収せねば!?
尻尾を切られた翼竜がギャア、ギャアと鳴き、ギュエ、ギェエ、ギェエと大きな声を上げて仲間が寄ってくる。
今度はざっと23匹だ。
魔力はほとんど使ってしまった。
傷回復ポーションを飲んだので消化されるまで5分ほどのインターバルがいる。
すぐに魔力回復ポーションを飲む事もできない。
土煙が舞っているので俺の姿は見えていないが、引いた時点で襲ってくるのは確実だった。
戦略的撤退だ。

私は痛みを堪えて這う森の中に身を隠す。
短槍を刺した一匹だけは“アンカー”で繋がっているので、影収納で隠しておいた。
こんな事ならば、すべて短槍で攻撃すればよかった。
後悔先に立たずだ。

仲間を三匹も遣られて怒っている翼竜達が集めってくる。
23匹でも最悪なのに、100匹以上も集めってきそうだ。
翼竜の誇りはないのか?
最悪だ。
私は腹這いの儘で、手と足で地面を這うように匍匐前進ほふくぜんしんで森の奥を目指す。
薬草で作った迷彩服が効果を見せる。
見つかれば助からない。
上空から見えないようにで森の中に逃げた。

『いつか仕返ししてやるぞ。覚えておけよ』(ぼそり)

私は上空の翼竜達を指差して小さな声で宣言した。
戦いに勝って戦略的撤退。
う~~~ん、情けないな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

処理中です...