獣人国王の婚約者様

棚から現ナマ

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1― アイラの立ち位置

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※ 新しいお話です。
  最後まで見て頂けたら嬉しいです。
  よろしくお願いします。


――― ――― ――― ―――



「ほらアーン」
目の前にいる存在自体が眩しい王様が、満面の笑顔でケーキの乗ったフォークを向けてくる。

輝く漆黒の髪に、金の星が散らばった藍色の瞳。整った顔にスラリとした姿。
ウエンツ・ティーナダイ
比喩ではない、本物の国王様だ。
でも王様というには若すぎる。王子様と言った方がしっくりくる。
20代、下手をすれば10代後半に見えるウエンツが、まさかのよわい100歳を超えているとは誰も思わないだろう。

それでもピコピコと動く耳と、バッサバッサと揺れている尻尾を見れば、みな納得するかもしれない。
ウエンツは狼の獣人なのだから。
獣人は人族とは寿命が違う。人族が頑張ってもせいぜい80歳まで生きられるかどうかなのに対して、獣人は500歳近くを生きる。
100歳を超えたばかりの獣人であるウエンツは、外見通りの若さなのだろう。

そんな麗しき国王様は、アイラの婚約者だったりする。
アイラはハウエル伯爵家の一人娘、人族だ。
伯爵家とはいっても、名ばかりで権力なんてまったくない家だ。歴史はあるかもしれないが、領地は狭く、父親が王宮で役人として働いている給料で暮らしている。

そんなアイラが、なぜウエンツの婚約者になったのか……。
アイラはフッと、皮肉気な笑いを漏らす。
表向きは婚約者といわれているが、婚約者などではない。
アイラはウエンツがこの国にいる間だけの、閨にはべるよう用意されたなのだから。

ウエンツの治めるティーナダイ王国は獣人の国だ。
獣人は人族よりも全てにおいて秀でている。身体能力は勿論、頭脳も人族が適うことはない。
どんなに足掻いても、人族は獣人に逆らうことは出来ないのだ。
この大陸にあるティーナダイ王国以外の国は全てが人族の国であり、ティーナダイ王国の従属国の立場にある。
宗主国には逆らうことができない。逆らえば一捻りで国が無くなってしまうことだろう。

全ての権力を持つティーナダイ王国は、年に1度、従属国へと視察にやってくる。
大陸にある13の国を順に訪れている。
今年はアイラの住むシーシュ国にティーナダイ王国視察団と、どういうわけか国王自らも共にやって来た。
シーシュ国は、準備のために、それこそ上を下への大騒動になった。
もしティーナダイ王国から少しでも顰蹙ひんしゅくを買うようなことがあったら、国の存続が怪しくなってしまうのだから。
シーシュ国は全身全霊をかけて、媚びへつらうしかないのだ。

視察団がシーシュ国へとやって来たその日、国を挙げての盛大な歓迎レセプションが開催された。
レセプション会場には、シーシュ国の多くの若者たちが集められた。
誰か一人でも視察団団員の目に止まることができ、接待係として選ばれたなら、それだけでもシーシュ国の大きなプラスになる。

ただ、人族からすれば獣人の好みは分からない。こちらが好ましいと思って送り込んだ者でもほとんど選ばれることは無い。
そのためにレセプション会場に呼ばれた若者達は男性女性関係なく美醜も問わない。貴族籍のある未婚の15歳以上の者。婚約者がいてもかまわない。
そんな条件で集められた者達だった。

もし視察団に選ばれたならば、こちら人族側に拒否権はない。そんなことをすればティーナダイ王国からよりも、シーシュ国からどんな罰を受けるか分からない。
家が没落だけで済めばいいが、一族郎党にまで累が及ぶだろう。

アイラは、貴族の娘というだけでレセプション会場へと送り込まれた。大人しく人前に出ることが苦手な自分が選ばれるなんて思ってもいなかった。
それも国王陛下に。
レセプション会場に入ってきた国王陛下と目と目が合ったと思った瞬間に、国王陛下はアイラの元へと一直線にやって来たのだ。

その時から、アイラは国王陛下であるウエンツの接待係になったのだった。



――― ――― ――― ―――


※ 10話前後を予定しています。
  毎日、午後8時20分に投稿します。


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