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天音さんは諦めない

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 意外すぎる場所から登場する北上さんは、両手に持つ二丁のハンドガンの引き金を引き、ブルースに対して発砲し続けた。

 催涙弾を受けているはずなのに、ヤツは弾を回避して後退していく。……まてまて、ヤツは目が染みて弾を回避する暇すらないはず。

 なのに、器用に避けて距離を取っていく。どうなっているんだ……! どこかに第三の目でもあるのか!?

「……くっ、全弾外しました。申し訳ない」
「北上さんの腕でも命中しないなんて、おかしいだろ」
「いえ、距離がありますし、ハンドガンの命中率なんて知れていますから。それに、あの男はプロです。なにかしらのスキルを持っているのかも」

 まさかな。そんな人間離れした技を持つヤツがいてたまるか……と、言いたいところだが、いたのだから認めるしかない。

 このまま見失うわけにはいかない。俺はハンドガンを構えつつ、走り出した。
 北上さんも俺の後をついてくる。

「ブルースをなんとしてでも仕留める」
「分かりました。今度こそ外しません」

 ブルースの背を追っていくが、どんどん離されていく。なんて足の速さだ。
 しかも反撃もしてきた。
 これ以上の深追いは危険か……。
 だけど、それでもヤツを倒さねば。

 全速力で向かうと、家が見えてきた。まずい、突入する気か。

「北上さん、このままでは侵入される!」
「予備マガジンを使い切る勢いで撃っています」

 北上さんは銃を乱射するが、ブルースは不思議なくらい回避していた。どうして当たらない……! どういう魔術だ……!

 こうなったら、別の手段だ。

 俺は体に貼り付けている無線を取り出し、緊急連絡を取った。すると、直ぐにリコの反応があった。

『こちら、リコ。どうしたん?』
「そっちのホワイトウォーターのボスが向かっている。狙撃できるか!?」
『マジで! 分かった。やってみる。ただし、周囲に敵の仲間も潜伏中』
「分かった。援護する」


 二階窓から少し身を出すリコ。猟銃を構え、ブルースに狙いを定めた。……よし、ヤツは気づいていない。これで!

 リコが撃とうとした瞬間、別の敵がアサルトライフルを撃ちまくった。あれでは狙撃できない……ダメか。しかし、リコと共に行動していたはずの天音が玄関にいた。

 ちょ、まさか、そんな!


「……この家には入れさせない!」
「ほう、少女がこの私に立ち向かうとは、その勇気だけは認めてやる。だがな!」


 ウソだろ、ウソだろ、ウソだろ!!
 天音がなんでそこに!!


「北上さん、このままでは天音が!!」
「挟み撃ちにしたとはいえ、これは状況が悪いです。天音さんはまともな武器を持っていないはず……いえ!」


 ハッとなる北上さんは、青ざめて回避行動をとるように俺を突き飛ばしてきた。な、なんだぁ!?


「ちょ、なにする!」
「天音さんの手元をよく見て下さい! あれは散弾銃です!」


 そうか、許可を受けて所持していた合法的な散弾銃。家の中にあったんだな。
 もちろん、天音は使い方を心得ている。
 何度も訓練したし、日本から海外のあらゆる銃の知識を叩きこんである。今の彼女なら撃てる。
 俺は天音の力を信じる。


「わたしはもう昔のわたしじゃない……! 諦めない!」
「脆弱な小娘が――なにィ!?」

「いけええええええッ!」

 散弾銃を放つ天音。
 しかしブルースは回避した。
 クソ、あんな至近距離でもダメなのか? ――いやそうではなかった。ブルースの肩に命中していた。さすがに散弾銃の飛び散る弾は避けられないか!


「ぐあああああああああああああああああ……!!!!!!!!」


 左肩に被弾し、ブルースは玄関前で倒れた。……あ、危なかった。
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