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第六章 娘の捜索
5 恋の恨み
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5 恋の恨み
仲直りをした僕たちは、二階に上がり、ジュンの部屋に入った。
「今夜、城で晩餐会があります」
「へえー」
舞踏会に続いて晩餐会とはお城の人も大変だな。厨房は休む暇もないだろう。
「私も出席しますから、あなたも同席してください」
「僕も?!」
僕のような庶民がいきなり潜入するにはハードルが高すぎる。
「また女装していくの?」
「まさか。小姓としてですよ」
騎士見習いの小姓の制服だという、黒い衣装を手渡された。
「東の国の皇女様や側近達をもてなす会のようです」
東の国と聞いて、僕はジュンを見上げた。ジュンは手早く着替えながら頷いた。
「確か父上は東の国との貿易で消息を絶たれたとか」
「うん、そうだよ」
「ビョルン殿の消息について、何か聞き出せるかも知れませんね」
ジュンはカフスボタンを留めながらにっこり笑う。
身支度を終え、髪を夜会用に整えたジュンは、見違えるほどスマートに見えた。黒ずくめであることには変わりないが、上等な生地に刺繍の施された夜会着だ。
「さあ、あなたも支度して」
服を手に取ったものの、気になるのは領主様のことだ。
「領主様は出席するの?」
「もちろん」
「……」
領主様に正体がバレていることをジュンが知らないのは問題だ。
僕の着替える手が止まる。するとジュンはベッドに腰かけて僕を前に立たせ、首元のネクタイを結んでくれた。
「そういえば、夏の館の門の前に、馬の蹄の跡がくっきりと残っていました……昼間、私の他に誰か訪ねては来ませんでしたか」
僕はごくりと唾を飲む。それは多分、領主様の足跡だ。
でも領主様はジュンには内緒にする様にと仰せだったから、話すわけにもいかなかった。領主様は領主様で、ジュンの立場を思っての口止めなのだろう。
大きな鏡の前に立たされた。小姓姿の僕の髪を、ジュンは優しく整えてくれた。
ジュンは、ケイトが僕の正体を知って傷つく事を恐れている。すでにその心配はいらなくなったということを、やっぱり教えてやりたい気もする。
僕がぐるぐる迷っていると、ジュンは言った。
「晩餐会で、ケイトをあなたに会わせてみようと思うのですが、どうでしょうか」
僕はびっくりした。
「正体を話すの」
「いいえ、あくまで私の小姓として紹介するだけです。それで、ケイトを試してみたい」
僕はジュンの顔を見た。ケイトを「試す」なんて言い方は、何となく、ジュンらしくないような気がしたのだ。
「ケイトが少年の貴方を愛せるかどうか。僕はそれが知りたい。晩餐会であなたの姿を見たケイトがどう反応するのか、試してみましょう」
「そんなことをして何になるの」
「恋なのか、妖精の呪いなのかが分かります」
「どういうこと?」
「貴方の本当の姿を見てもケイトが何も感じないのなら、単に呪いでアリスビョルンに恋焦がれているだけなのでしょう」
ジュンの言葉にはっとする。確かに、ピノは贈り物をくれる時、アリスビョルンを名指ししていた。正確にいえば、僕ではない。
「でももし、ケイトが貴方の正体を見抜けたとしたら、貴方への愛が本物だということではありませんか」
「そ、そうとは限らないよ」
僕は焦った。結果は後者になるということは昼間に実証されていた。領主様には僕の正体がすぐにわかってしまったんだ。だけど、それが本当の愛の証拠だなんて決めるのは早い。
「姿を変えても名前を変えても、妖精の贈り物は有効なのかも知れない」
氷の森の魔法については、僕だって分からないことが多すぎる。
「僕は行くのやめるよ」
「なぜ?」
「ジュンだって、領主様が庶民の男相手に悩む姿なんて見たくないだろ」
「……ケイトだって、それくらい悩んでしかるべきです」
ジュンは呟いた。
「ブラコンに悩むのより百倍マシじゃないですか。名前を偽って隠れて暮らすより千倍マシじゃないですか」
「え?」
「私はいささか疲れました。これ以上はあなたにも気の毒です。領主様に、全て明かしましょう」
ジュンは僕の脱ぎ捨てたケイトのシャツを抱きしめて、遠い目をしていた。
「ケイトはね、散々僕をふって来たんです。建前を気にして、男同士の愛なんてあり得ないと、はなから決めつけていたんです。そのケイトが、年下の少年に恋焦がれるなんて……見ものではないですか」
ジュンの暗い笑顔に、僕は背中がぞくりとした。
「禁断の恋に苦しむ者の気持ちを知ればいい。これまでの冷たい態度の報いを受ければいい。自分が放ってきた言葉に、自分で傷付けばいい」
「ジュン?」
ジュンはその漆黒の目を真っ直ぐに鏡の中の僕に向けていた。
「領主様の言葉でいうなら、苦しみを選ぶのだって彼の自由であり、権利です」
ケイトに対して報われない愛を捧げ続けているジュンの、思わぬ怨念を見たような気がした。
「ジュン、そんなの本心じゃないだろ? 君はいつも、ケイトを守ることだけを考えてるのに……」
ジュンは僕をみて、疲れたような笑みを浮かべた。
「大丈夫。ケイトは、私の優しさなど不要なんです。私の忠告を聞く気も、私に守られる気も、さらさら無いのかも知れない」
「どういうこと?」
「……ケイトは貴方に会いに来たのでしょう?」
僕は息を呑んだ。
「知ってたの?!」
「やっぱり……」
僕は両手で口を覆う。
「領主様が午後の会議をすっぽかしたと聞いて、まさかと思ったのですが」
「いつから気付いてたの」
「庭の蹄の跡を見て確信しました。それに、貴方の髪からも微かにケイトの匂いが」
そんな早い段階で! というかさっき僕に抱きついてきた時に、ケイトの匂いを嗅ぎ分けてたってこと? 怖すぎるよジュン……。
「黙っててごめん……」
「ほんとですよ。大方、ケイちゃんに口止めされていたのでしょうけど」
僕はジュンに謝る。領主様にも、心の中で謝る。
「貴方の正体にも気付いておられたんですね」
「うん」
ジュンは僕を抱きしめて耳元でささやいた。
「貴方に言い寄ってこられましたか?」
「そっ……そんなことしないよ……」
「本当ですか? やけに顔が赤い」
僕は顔を伏せる。
「ケイトの匂いがする……抱き合って、キスでもしたんですか?」
ジュンは僕の首筋に鼻を擦り寄せた。僕は怖くなる。またケイトの名残香を探しているの?
「私にしたように、ケイトを突き飛ばしたりはしなかったのでしょう」
「はっ!確かに」
そういえば、ケイトには何をされても鳥肌なんてたたなかった。ふわふわして、身体が溶けそうになっただけ。
僕は何も言わなかったけど、どんどん顔が赤くなるのを止められなかった。ジュンは全て察したようだった。ジトっとした目で僕を見ている。
「ごめん、ジュン……」
「悪いと思うならじっとして」
そういうなり、ジュンは僕のくちびるを奪った。
「ん~っ? ん~!」
僕がジタバタするのも構わず、ベッドに押し倒してさらに深くキスしてくる。
僕はやむなく、彼の急所を蹴った。
**********
「落ち着いた?」
「はあ……」
ジュンはベッドに腰掛けて顔を覆っていた。
「ケイトに会ったことを黙ってたのは、ごめん」
蹴りを入れたことに関しては謝らないが。
「領主様とは、いろいろ昔のこととか、星の話とかしただけだよ」
「キスは」
「確かに、最後にキスはしてくれたけど……」
僕の声はちょっと詰まって、震えた。
「たぶん、お別れのキスだよ」
「お別れのキス?」
「うん、そういうことだったんだと思う」
言葉にして初めて気がついた。あれはただのキスじゃなかった。さようならの意味を込めたキスだったんだ。
「領主様は、おふれを解いて僕を自由にしてくれるって言って、すぐに出ていったんだ」
そう言った時のケイトの顔を思い出し、僕はなぜか泣きたくなった。ケイトは笑っていたけど、すごく寂しそうな目をしていたんだ。
「僕を自由にしてくれるということは、ケイトは僕をそばに置く気はないということでしょう?」
ジュンは顔を上げた。
「……ケイトという人が分からなくなってきました」
ジュンはそういうと僕の手を取って、自分の隣に座らせた。
「オト……彼は、禁断の恋に苦しむような、そんな可愛いたまじゃないかも知れない」
「どういうこと?」
「あの人は、貴方をあっさり諦めるつもりなんだ」
僕は胸の痛みを隠してうなずいた。
「それはそれは『聡明な』方だから。理に優った方だから。貴方が男だと分かった以上、不毛な恋を引きずったりはしない」
「領主様は、冷静な方なんだね」
「冷静というかもはや冷酷ですよ……私の思いだって無視し続けているんですから」
僕はジュンの手を振り払うのも忘れて話に聞き入っていた。妖精に頼み込まなくたって、領主様は理性で恋に打ち勝てる人なのかもしれない。
「……それならそれで、いいんじゃないかな」
僕はジュンの小姓として演じるべき振る舞いが、全て見えた気がした。
「そうだジュン! 領主様の理性に訴えて、恋を完全に終わらせよう」
ジュンはいきなりやる気を出した僕を不思議そうに見ている。
「晩餐会で、僕は領主様に嫌われるように振る舞えばいいんだ。アリスが男で、君の小姓で、えっちな意味で可愛がられるいかがわしい奴隷ってことになれば、領主様の恋は冷めるんじゃないかな!」
「いかがわしい奴隷って……」
僕のあからさまな発言に、さすがのジュンも顔を赤らめた。その時、お城の鐘が鳴った。
「そろそろ、晩餐会の時間です」
「よし! 行こう!」
僕はジュンの腕に腕を絡めて、頬を擦り寄せた。
「それはやりすぎです。人前では主人に甘えたりしないものです」
「そっか」
「匂わす程度で行きましょう」
ジュンは舞台役者のような綺麗な顔で、にっこりと笑った。
仲直りをした僕たちは、二階に上がり、ジュンの部屋に入った。
「今夜、城で晩餐会があります」
「へえー」
舞踏会に続いて晩餐会とはお城の人も大変だな。厨房は休む暇もないだろう。
「私も出席しますから、あなたも同席してください」
「僕も?!」
僕のような庶民がいきなり潜入するにはハードルが高すぎる。
「また女装していくの?」
「まさか。小姓としてですよ」
騎士見習いの小姓の制服だという、黒い衣装を手渡された。
「東の国の皇女様や側近達をもてなす会のようです」
東の国と聞いて、僕はジュンを見上げた。ジュンは手早く着替えながら頷いた。
「確か父上は東の国との貿易で消息を絶たれたとか」
「うん、そうだよ」
「ビョルン殿の消息について、何か聞き出せるかも知れませんね」
ジュンはカフスボタンを留めながらにっこり笑う。
身支度を終え、髪を夜会用に整えたジュンは、見違えるほどスマートに見えた。黒ずくめであることには変わりないが、上等な生地に刺繍の施された夜会着だ。
「さあ、あなたも支度して」
服を手に取ったものの、気になるのは領主様のことだ。
「領主様は出席するの?」
「もちろん」
「……」
領主様に正体がバレていることをジュンが知らないのは問題だ。
僕の着替える手が止まる。するとジュンはベッドに腰かけて僕を前に立たせ、首元のネクタイを結んでくれた。
「そういえば、夏の館の門の前に、馬の蹄の跡がくっきりと残っていました……昼間、私の他に誰か訪ねては来ませんでしたか」
僕はごくりと唾を飲む。それは多分、領主様の足跡だ。
でも領主様はジュンには内緒にする様にと仰せだったから、話すわけにもいかなかった。領主様は領主様で、ジュンの立場を思っての口止めなのだろう。
大きな鏡の前に立たされた。小姓姿の僕の髪を、ジュンは優しく整えてくれた。
ジュンは、ケイトが僕の正体を知って傷つく事を恐れている。すでにその心配はいらなくなったということを、やっぱり教えてやりたい気もする。
僕がぐるぐる迷っていると、ジュンは言った。
「晩餐会で、ケイトをあなたに会わせてみようと思うのですが、どうでしょうか」
僕はびっくりした。
「正体を話すの」
「いいえ、あくまで私の小姓として紹介するだけです。それで、ケイトを試してみたい」
僕はジュンの顔を見た。ケイトを「試す」なんて言い方は、何となく、ジュンらしくないような気がしたのだ。
「ケイトが少年の貴方を愛せるかどうか。僕はそれが知りたい。晩餐会であなたの姿を見たケイトがどう反応するのか、試してみましょう」
「そんなことをして何になるの」
「恋なのか、妖精の呪いなのかが分かります」
「どういうこと?」
「貴方の本当の姿を見てもケイトが何も感じないのなら、単に呪いでアリスビョルンに恋焦がれているだけなのでしょう」
ジュンの言葉にはっとする。確かに、ピノは贈り物をくれる時、アリスビョルンを名指ししていた。正確にいえば、僕ではない。
「でももし、ケイトが貴方の正体を見抜けたとしたら、貴方への愛が本物だということではありませんか」
「そ、そうとは限らないよ」
僕は焦った。結果は後者になるということは昼間に実証されていた。領主様には僕の正体がすぐにわかってしまったんだ。だけど、それが本当の愛の証拠だなんて決めるのは早い。
「姿を変えても名前を変えても、妖精の贈り物は有効なのかも知れない」
氷の森の魔法については、僕だって分からないことが多すぎる。
「僕は行くのやめるよ」
「なぜ?」
「ジュンだって、領主様が庶民の男相手に悩む姿なんて見たくないだろ」
「……ケイトだって、それくらい悩んでしかるべきです」
ジュンは呟いた。
「ブラコンに悩むのより百倍マシじゃないですか。名前を偽って隠れて暮らすより千倍マシじゃないですか」
「え?」
「私はいささか疲れました。これ以上はあなたにも気の毒です。領主様に、全て明かしましょう」
ジュンは僕の脱ぎ捨てたケイトのシャツを抱きしめて、遠い目をしていた。
「ケイトはね、散々僕をふって来たんです。建前を気にして、男同士の愛なんてあり得ないと、はなから決めつけていたんです。そのケイトが、年下の少年に恋焦がれるなんて……見ものではないですか」
ジュンの暗い笑顔に、僕は背中がぞくりとした。
「禁断の恋に苦しむ者の気持ちを知ればいい。これまでの冷たい態度の報いを受ければいい。自分が放ってきた言葉に、自分で傷付けばいい」
「ジュン?」
ジュンはその漆黒の目を真っ直ぐに鏡の中の僕に向けていた。
「領主様の言葉でいうなら、苦しみを選ぶのだって彼の自由であり、権利です」
ケイトに対して報われない愛を捧げ続けているジュンの、思わぬ怨念を見たような気がした。
「ジュン、そんなの本心じゃないだろ? 君はいつも、ケイトを守ることだけを考えてるのに……」
ジュンは僕をみて、疲れたような笑みを浮かべた。
「大丈夫。ケイトは、私の優しさなど不要なんです。私の忠告を聞く気も、私に守られる気も、さらさら無いのかも知れない」
「どういうこと?」
「……ケイトは貴方に会いに来たのでしょう?」
僕は息を呑んだ。
「知ってたの?!」
「やっぱり……」
僕は両手で口を覆う。
「領主様が午後の会議をすっぽかしたと聞いて、まさかと思ったのですが」
「いつから気付いてたの」
「庭の蹄の跡を見て確信しました。それに、貴方の髪からも微かにケイトの匂いが」
そんな早い段階で! というかさっき僕に抱きついてきた時に、ケイトの匂いを嗅ぎ分けてたってこと? 怖すぎるよジュン……。
「黙っててごめん……」
「ほんとですよ。大方、ケイちゃんに口止めされていたのでしょうけど」
僕はジュンに謝る。領主様にも、心の中で謝る。
「貴方の正体にも気付いておられたんですね」
「うん」
ジュンは僕を抱きしめて耳元でささやいた。
「貴方に言い寄ってこられましたか?」
「そっ……そんなことしないよ……」
「本当ですか? やけに顔が赤い」
僕は顔を伏せる。
「ケイトの匂いがする……抱き合って、キスでもしたんですか?」
ジュンは僕の首筋に鼻を擦り寄せた。僕は怖くなる。またケイトの名残香を探しているの?
「私にしたように、ケイトを突き飛ばしたりはしなかったのでしょう」
「はっ!確かに」
そういえば、ケイトには何をされても鳥肌なんてたたなかった。ふわふわして、身体が溶けそうになっただけ。
僕は何も言わなかったけど、どんどん顔が赤くなるのを止められなかった。ジュンは全て察したようだった。ジトっとした目で僕を見ている。
「ごめん、ジュン……」
「悪いと思うならじっとして」
そういうなり、ジュンは僕のくちびるを奪った。
「ん~っ? ん~!」
僕がジタバタするのも構わず、ベッドに押し倒してさらに深くキスしてくる。
僕はやむなく、彼の急所を蹴った。
**********
「落ち着いた?」
「はあ……」
ジュンはベッドに腰掛けて顔を覆っていた。
「ケイトに会ったことを黙ってたのは、ごめん」
蹴りを入れたことに関しては謝らないが。
「領主様とは、いろいろ昔のこととか、星の話とかしただけだよ」
「キスは」
「確かに、最後にキスはしてくれたけど……」
僕の声はちょっと詰まって、震えた。
「たぶん、お別れのキスだよ」
「お別れのキス?」
「うん、そういうことだったんだと思う」
言葉にして初めて気がついた。あれはただのキスじゃなかった。さようならの意味を込めたキスだったんだ。
「領主様は、おふれを解いて僕を自由にしてくれるって言って、すぐに出ていったんだ」
そう言った時のケイトの顔を思い出し、僕はなぜか泣きたくなった。ケイトは笑っていたけど、すごく寂しそうな目をしていたんだ。
「僕を自由にしてくれるということは、ケイトは僕をそばに置く気はないということでしょう?」
ジュンは顔を上げた。
「……ケイトという人が分からなくなってきました」
ジュンはそういうと僕の手を取って、自分の隣に座らせた。
「オト……彼は、禁断の恋に苦しむような、そんな可愛いたまじゃないかも知れない」
「どういうこと?」
「あの人は、貴方をあっさり諦めるつもりなんだ」
僕は胸の痛みを隠してうなずいた。
「それはそれは『聡明な』方だから。理に優った方だから。貴方が男だと分かった以上、不毛な恋を引きずったりはしない」
「領主様は、冷静な方なんだね」
「冷静というかもはや冷酷ですよ……私の思いだって無視し続けているんですから」
僕はジュンの手を振り払うのも忘れて話に聞き入っていた。妖精に頼み込まなくたって、領主様は理性で恋に打ち勝てる人なのかもしれない。
「……それならそれで、いいんじゃないかな」
僕はジュンの小姓として演じるべき振る舞いが、全て見えた気がした。
「そうだジュン! 領主様の理性に訴えて、恋を完全に終わらせよう」
ジュンはいきなりやる気を出した僕を不思議そうに見ている。
「晩餐会で、僕は領主様に嫌われるように振る舞えばいいんだ。アリスが男で、君の小姓で、えっちな意味で可愛がられるいかがわしい奴隷ってことになれば、領主様の恋は冷めるんじゃないかな!」
「いかがわしい奴隷って……」
僕のあからさまな発言に、さすがのジュンも顔を赤らめた。その時、お城の鐘が鳴った。
「そろそろ、晩餐会の時間です」
「よし! 行こう!」
僕はジュンの腕に腕を絡めて、頬を擦り寄せた。
「それはやりすぎです。人前では主人に甘えたりしないものです」
「そっか」
「匂わす程度で行きましょう」
ジュンは舞台役者のような綺麗な顔で、にっこりと笑った。
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