391 / 401
第2部 第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第49話 一触即発、婿姑戦争!
しおりを挟む「ゴメンね……。」
「謝らないでよ! わたくしがもっと惨めになるじゃない!」
エルのお母さんもそれは理解していたんだろう。やっぱり娘のエルと性格が似ている。やさしいから、辛い思いを少しでも和らげたかったのかもしれない。それが裏目に出ていたということか。どちらも悪くない。気持ちのすれ違いが不幸な関係を作ってしまったんだろう。
「フフ、性懲りもなく、無関係の君がこんな所へやってきたのか?」
熾烈な姉妹喧嘩に巻き込まれている最中、ラヴァンが姿を現した。エルも一緒にいる。当然、その姿にエルのお母さんとオバサンは釘付けになった。自分もしくは姉と同じ容姿をした娘がそこにいるのだ。無理もない。
「お姉様が二人!? どういうこと?」
「お母さん!」
まさか、自分の娘が現れたとは思っていないだろう。そして、エルの方は母との再会だ。幼い頃に死別して以来だったはず。とはいえ、ここはエルが生まれる前の時代。お母さん側は娘の事を知らない。だから、感動の再会とはならないだろう。
「何者ですか? 私に似た姿をしたあなたは一体、誰?」
「私たちは未来の世界からやってきました。彼女は貴女の実の娘です。そして私は、その婚約者。そこにいる男は未来の勇者です。シャルル殿ではありません。」
「わたくしたちを騙したのね!」
「その通り。この男は私たちには関係のない男です。」
うおおい! あっさりバラすなよ! おかげで、オバサンは俺を罪人を見るかのような態度になっている。エルのお母さんはそこまではしていないが、信じられないといった感じの表情になっている。別に騙してないからね? 勘違いされただけだから! 不可抗力だから!
「未来から何をしに来たのですか、あなた方は?」
エルのお母さんは慎重な態度を示している。色々、信じがたい事が起きているのは事実だ。エルよりも聡明で自信に満ちた魔術師といった印象だ。娘のエルとは違う魅力がある。エルも虐げられていなければ、こんな風になっていたのかもしれない。とはいえ、俺はエルの方が好きだ。このお母さんには何か近寄りがたい雰囲気がある。
「実はグランデ家の遺産を受け取りに来たのです。ここに隠されている様なので、彼女と共にやってきたのです。」
「遺産……を? ですか?」
そこまでぶっちゃけちゃうのかよ! 余計、警戒してしまうんじゃないか? ちょっと焦りすぎなんじゃない? 勝利を確信してとち狂ったのでは?
「何を言ってるんですか、あなたは? 遺産のことなど知りません。」
ほら見ろ、拒絶されたじゃないか。エルのお母さんはますます警戒を強めてしまったようだ。協力が得られないなら、更に困難になってしまうだろう。
「さて、それはどうでしょうか? 私は貴女自身が遺産その物の核になっていると推測しています。そこにいるナドラ様や私が手に入れようとしても拒絶される。その警戒心こそが封印としての役割を果たしているのでしょう。」
その封印を解けるのは……エルということか。エルのお母さんが警戒しない相手なら、警戒を解いて遺産を受け取れるようになっている? 多分、ラヴァンはそう考えているのだろう。
「貴女の愛する娘は目の前にいます。その彼女に遺産を譲渡するのが筋ではありませんか?」
「知りませんし、わかりません。逆にその子が私の娘という証拠はあるのですか?」
エルのお母さんの言うことはもっともだ。生まれる前の時代なので信じがたい話に聞こえるのだろう。目の前にはおかしなことを言っている男がいる。彼女にとってはただ、それだけなのだろう。
「このままでは埒があかない。少々手荒な真似をさせてもらうとしよう。」
「遺産の事など知りません! それが何故わからないのですか!」
うわああ! このままではエラいことになる。ラヴァン、お前、結婚前に婿姑戦争をするつもりか! このままでは見てられない! 部外者扱いされたとはいえ、こんな状況、放っておけるもんか!
「ちょっと待て、ラヴァン! これ以上、俺の前で過ぎた暴挙はさせない! アンタ、いくらなんでも強引すぎるんだよ!」
俺は両者の間に割って入った。この争いは何が何でも止めないといけない。例え俺が盾になってでも阻止する。部外者扱いされるなら、犠牲になることは大した問題じゃない。俺を忘れていたとしても、エルには嫌な思いをさせたくない!
「部外者は口を挟むべきではない。君は早々に退場し給え!」
「部外者でもなんでもいい! 俺はエルに嫌な思いをして欲しくないだけだ! 例え記憶の世界だったとしても、自分の母親と争わせたくない! それの何が悪いって言うんだ!」
「君はわかっていないな。所詮、記憶の中の世界だからこそ非情になれるのだ。ここにいるエルフリーデ様は本人ではない。遺産を相続するための障害でしかない! 時に魔術師は合理的に、冷静に、非情にならねばならない! 真理を追究するためには、情念を捨て去ることが絶対条件なのだ!」
言い切りやがった! 魔術を極めるために人の心を捨てるのにためらいがないのか? エルの記憶を書き換えたことや、決闘でギアスをかけたり、決闘後にエルの記憶を強引に統合したり……。非情の精神があったからこそ出来たことなのか。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる