【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

文字の大きさ
上 下
390 / 401
第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第48話 人違いではありませんか?

しおりを挟む

「またここか。」


 オバサンの記憶の中に入ってきたのはいいが、代わり映えのしない、見たことのある屋敷に辿り着いた。でもよく考えたら、エルの一族の故郷なんだから当然か。オバサンにとっても同じなんだろう。


「エル達はどこにいるんだろう?」


 来てみたのはいいが、どこを探せばいいのかわからない。遺産の手掛かりを捜索してるんだろうけど、とりあえずオバサンを探せばいいのか? 手掛かりといえば、それぐらいしか思いつかない。遺産とやらがどんな形をしていて、どこにあるのかがさっぱりだ。俺はエルの一族とは無関係な人間なので、アウェー感が半端ない。魔術師ですらないので余計にだ。


「あの? 何をしているんですか? 何かお探しなのですか? それとも、ドロボウさんですか?」


 背後から声をかけられた。迂闊だった。考え事をしていたせいで、人に見つかる事を考慮していなかった。しかし、さっきまで気配を感じなかったような? とりあえず振り返ってみる。


「……!? エ、エル!?」


 そこにはエルがいた。服装が違ってはいるが、彼女に間違いなかった。俺の知る彼女よりも、気持ち少しあどけなさを感じる。過去の彼女なのだろうか? いつの時代なのか?


「何故、私の名を? どこかで私とお会いしましたでしょうか?」

「え? あ、いや、会ったっていうか……、」


 やはり、エルは俺のことを忘れてしまったんだろうか? さっきみたいに虚ろな目をしていない。しかも、演技とか、悪気も感じられない。本当に初対面であるかの様な態度だ。


「あ……、まさかとは思いますが、その額冠は……?」


 俺の頭にある額冠を見て何かに気付いた様子だ。当然、彼女の魔力が阻害して、額冠の認識効果は機能していないのはわかる。魔術師なので一目見ただけで、これが特殊な額冠だということには気付いたのかもしれない。


「あなたが頭に着けているのは勇者の額冠なのでは? もしかして……勇者シャルル・アバンテ様ですか?」

「え……!?」


 どうして、よりにもよって、先代カレルではなく、先々代の勇者の名前が出てくるんだ? 一線からは退いた今現在も、クルセイダーズに所属しているとは聞くが、何故? そこそこ高齢のはずだから、間違えるのはおかしいんだが? 俺、そこまで老けてないと思うんですけど?


「私にはわかりますよ。あなたのその額冠が普通の品ではないことが。実物を実際見たことはありませんが、備わっている魔力は本物です。あなたは勇者様なのでしょう?」

「勇者なのは間違いないけど……。」


 俺は返答に困った。目の前にいるのは本当にエルなんだろうか? 色々受け答えの内容がおかしい。俺の事を全く知らないとはどういう事だ? 同名のソックリさん? それとも、彼女のお姉さん?、妹? 従姉妹以外で年の近い親戚がいるとは聞いたことがない。


「お姉様、此方にいらしたのですね? 探しましたよ。」


 目の前のエルに気を取られているうちに、別の女性がやって来た。見るとほぼ全身赤ずくめの出で立ち、おそらくエルの従姉妹だ。エルと同様、何か違和感を感じた。雰囲気が少し違う。あの子にしては大人びているし、髪も長い。でも顔立ちはほぼ同じ。今現在とは違うのだろうが、いつの時代の二人なのかさっぱりわからない。疑問は積もる一方だ。


「あら? そちらの殿方は?」

「この方は勇者様よ。シャルル・アバンテ様。聞いた事があるでしょう? 一年前に猪の魔王、ガノスを討伐された事で有名な方よ。」


 は? 猪の魔王? 知らないし、会ったこともないんだけど? 俺が倒したのは虎、エルに取り憑いた牛の二人だ。あとは現在交戦中の蛇ぐらいだ。いつの間に知らないヤツまで倒したことになっているのか?


「シャルル様ですって!? もしかして、ここへ来たのはわたくし達をスカウトしに来られたのでは? 次は牛の魔王の討伐に向かわれるとお聞きしましたわ!」


 別に従姉妹に用はないんだが……。俺はただ、エルを連れ戻しに来ただけじゃい! それに牛の魔王を討伐って、何? ヤツはすでに俺が消滅させたから、この世に存在しないはずでは?


「まさか、私を迎えに来られたということですか? 以前頂いたお手紙には“クルセイダーズ本部にてお待ちしています”と書かれていましたが……?」


 エルがその証拠とばかりに、手紙を見せてきた。封筒の宛先にはエル……フリーデと書かれていた! ウソだろオイ! この名前はエルのお母さんの名前じゃないか! てことは、目の前にいるのは……、


「お姉様! どういうことですか? シャルル様からお手紙を頂いていたなんて、聞いてませんわよ! 討伐部隊へのお誘いのお手紙なのですね、それは?」


 目の前にいるのがエルのお母さんなら、この強気な赤ずくめの女は……ナドラオバサン? ここは二十年以上前、二人が若かった頃の時代か! そう考えてみると、魔王関連の話の辻褄が合う。シャルルに間違えられたのは、彼が現役だった時代だからなのか。……ていうか、オバサンて、若い頃は結構可愛かったんだな。


「……ええ。実は。あなたには黙っておきたかったから……。」

「またですか! あなたはいつもそうやって……わたくしが求めていた物を全て持っていく! しかも、それを隠していただなんて!」

「違うの! あなたを傷付けたくなかったから……。」


 俺を挟んで二人が喧嘩を始めた。とはいえ、オバサン側から一方的にだが。エルと従姉妹も仲が悪そうだったが、先代から続くものだったとは……根が深いな。


「いつも、いつもわたくしを見下して! 惨めなわたくしを憐れんで……満足でしょうね!」

「私はあなたに辛い気持ちをして欲しくなかったから……。」

「ウソをおっしゃい!」


 口ぶりからすると、オバサンはエルのお母さんばかり評価されているのが羨ましかった、ってところかな? オバサンも才能はあったんだろうけど、すぐ側にもっと凄い人がいた。そのおかげで辛い思いをしてきた。だから姉に嫉妬心をぶつけているのだろう。俺はオバサンの気持ちがわかる気がする。俺も“持っていない”側の人間だから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと

Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】 山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。 好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。 やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。 転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。 そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。 更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。 これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。 もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。 ──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。 いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。 理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。 あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか? ---------- 覗いて下さり、ありがとうございます! 10時19時投稿、全話予約投稿済みです。 5話くらいから話が動き出します。 ✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...