【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第47話 お次は遺産相続の手続きに入ります。

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「……うう? ラヴァン様?」

「もう大丈夫だ。私は君の側にずっといる。君を守るために。」


 過去の記憶が融合し、エルはラヴァンの元へと向かっていく。ラヴァンも迎えに行くかのようにエルの元に駆け寄る。その間、エルは俺のことを一切見なかった。俺なんてまるで知らないかのように。


「ホホホ。意外や意外。なかなか思い切ったことをしたわね。見直したわ、お坊ちゃん。」


 ラヴァンがまさかの行動を取った。さすがに素直に負けを認めると思っていた。俺の考えは甘かったようだ。魔術師はみんなこんなことする人ばっかりなんだろうか? 人間不信になってしまいそうだ。


「これで終わりだ。私の目的の半分は達成された。あとはエルフリーデ様の遺産を取り返すのみだ。これは彼女の婚約者としての私の使命だ。」

「ホホホ。では遺産を取りに行きましょう。この婦人……ナドラが自身の記憶の迷宮に封印しているのよ。ナドラの記憶の中にお入りなさい。」

「なるほど、やはりそこにあったか。私の考えていた通りだ。私の力が不可欠な事も含めてな。……では行こうか、エレオノーラ。君が取り返したい物を取りに行こう。」

「はい。ラヴァン様。」


 エルはラヴァンの顔を見て、嬉しそうにしている。さっきまで俺の側にいた彼女とは明らかに態度が豹変していた。ラヴァンのことを昔から知っているみたいに、親しげな感じで接している。


「エル、待ってくれ!」

「何だ君は? 見ての通り、私は彼女の婚約者だ。君に邪魔される筋合いはない。敗者は潔く引き下がってくれ。迷惑だ。」

「勇者様……? 安心して下さい。私はラヴァン様と共に母の遺産を取りに行きます。お心添えはありがたいですけど、これは二人で解決しないといけない事なんです。」

「……!?」


 ショックだな。エルが俺に対して急に他人行儀になってしまった。俺との思い出は完全になくなってしまったのか? 偽りの記憶に上書きされてしまったのだろうか?


「ゆっくりしてはいられない。行こう。」


 ラヴァンは蛇の魔王……が操るオバサンの目の前に空間の裂け目を作り出し、エルと共にその中へ入っていった。


「ホホホ。これで終わりね、勇者。そして、エレオノーラも私の手中に収まったことになるわね。」

「どういう意味だ?」


 手中に収まっただと……? いったいどういう意味なんだ? そもそも、蛇の魔王の目的はどこにあるのだろう? もちろん俺を倒すのが目的なんだろうけど、やけにエルにこだわっているようにも見える。もしかしたら、真の目的はそっちなのでは……?


「勇者、あなたは悉く私の計画を邪魔してきた。今回だけではないわ。それよりも前からよ。全てはあの娘の……、」


 その時、異変が起きた。蛇の魔王の頭上から何者かが現れたのだ! 無駄にデカい図体、タマネギっぽい髪型……そう、ゲイリーだ! ゲイリーが突如現れ、蛇の魔王の体の上にのしかかる形になった!


「ううおあっ!?」

「問題ないッス! 俺っち、体の丈夫さが取り柄なんで! 腕立て、腹筋、スクワット毎日かかさないんスよ!」


 相変わらず場違いな事を言っている。誰も聞いてねえよ、そんなこと。それよりも今までどこにいたとか、どうやってここに来たか説明しろよ……。


「この機会は逃さぬ!」


 黄ジイが倒れている蛇の魔王の元へやってきて、攻撃を仕掛けた。間一髪、黒い影がオバサンの体から抜け出ていった。黄ジイもそれに気付き、途中で攻撃をとりやめた。


「ホホ、全く隙も油断もありはしないわね! 危ないところだったわ。とんだ邪魔が入ったものね。」


 黒い影は蛇の姿になった。オバサンの体から逃れたということは、黄ジイの攻撃に脅威を感じたのだろう。


「もうよいわ。ある程度私の計画は成功した。後はあなた達を始末するだけ。ただし決着は外でつけることにしましょう。……援軍が近付きつつあるのでね。」


 援軍? 魔王軍を呼び寄せたんだろうか? それが本当だとしたらマズいな。とか考えているうちに蛇の魔王は姿を消した。これでヤツの言うとおり、外で決着をつけることになってしまった。


「ロアよ。早く、二人の後を追うのじゃ。魔王の言う通り、災いが近付きつつあるのは間違いない。早急に決着をつけてくるが良い。」

「でも、俺が行ってもエルに拒絶されそうだぜ?」


 彼女の記憶は書き換えられた。俺のことは憶えているようだが、俺との繋がりがなくなったに等しい。俺は彼女にとってその他大勢になってしまっている。


「何を弱気なことを言うとるんじゃ。こころのそこから思ってはおらぬ癖に。信じておるんじゃろう、あの娘を?」


 確かに気がかりなことはある。エルの様子が少しおかしかった。態度や言動はラヴァンを信じているようだったが、若干、目がうつろになっているように見えた。もしかしたら、彼女の心の中では、偽りの記憶と真実の記憶がせめぎ合っているのかもしれない。獣の魔王になっていたときと同じように。


「そうだな。彼女の記憶を呼び起こすのは俺の役目だった。……じゃあ、行ってくるよ。みんなはいつでも脱出できるようにしておいてくれ。すぐ戻ってくる!」


 俺は異空跋渉でオバサンの記憶の世界へと飛び込んだ。このまま、ラヴァンの思い通りにさせるわけにはいかない。エルの記憶を必ず呼び戻すんだ!
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