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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第310話 泥まみれの勇者
しおりを挟む「おお、なんかいつもと服装が違うと、誰かわからんようになってしまうのう。」
今宵もまた、飲み屋へとやってきた。俺の服装が違うのは当然、泥だらけになってしまったからだ。それに火傷もしていたため、あちこちに包帯を巻いている。だから余計にわかりにくくなっている。
「水も滴るいい男ならぬ、泥水滴る英雄とは珍しい存在じゃのう。」
「しかも元から芋臭ぇから、泥が付いて更に芋に近付きやがった。」
「おお、お前さん、ウマイこというのう。さすがに色男ともなれば、口もうまいもんじゃ。」
好き勝手言いやがって!滑って転んで泥だらけ。試合に勝ったのに散々な言われようだ。こんなにネタにされるとは思わなかった。こんなことになるんなら、さっさと宿に帰ってふて寝してたほうが良かったのかも。
「泥にまみれたとはいえ、儂のあどばいすを忠実に守ったからこその勝利じゃ。あともう少し、あと一歩じゃ。」
「……は?」
あれが?偶然転んで、技を避け、跳ね上げた泥が相手の目に入り目潰しになった。あれはさすがに俺が起こした現象と呼ぶには無理があると思うが?試合後ファルに言われた事にもイマイチ納得がいってない。いまだにモヤモヤしている。
「勝利の実感がわかぬのか?負けた張本人があの勝負の本質を語って進ぜよう。」
またまたやってきた。侍だ。今日は手ぶらではなく、手には瓶を持っている。瓶には紙が貼られていて、俺らの文化圏で使われている文字が書かれている。内容的には“鬼殺し”的な意味合いの言葉が書かれてるっぽい。
「その前にそちらの翁に極上の酒を提供したくてな。先日の語らいに拙者はいたく感動を覚えたのでな。これは礼だ。」
「おおー、すまんのー!これは一段と楽しめそうじゃ!」
何だよ、酒か。もしかして書いてある文字は酒の名前なのか?物騒な名前だ。飲んだら死んだりしないだろうな?というより飲み屋に酒を持参してもいいもんなんですかね?
「では、本題に入ろう。はっきりと申す。あの試合は拙者の負けだ。」
そんなこと言われても。確かに判定上は勝ったのだろうが、勝った俺の方がボロボロで、侍はほぼ無傷だ。見た目の上でも勝った気がしていない。今、侍の姿を見てそう思った。
「でも、あれはたまたま転んで、泥をはねて、偶然に偶然が重なった結果だから……。」
俺が反論したところで、侍は眉をひそめ、不機嫌そうな顔つきになった。俺、何か悪いこと言ったかな?
「あれは偶然等ではない。拙者が雷炎爆光覇でお主を仕留められなかった時点で負けておったのだ。無理に意地を張って戦った結果が、無様な負けを呼んだのだ。戦でいえば、拙者は引き際を誤った。本来ならば拙者は命を落としていたのだ。」
あれは戦争じゃない。試合だ。戦争じゃなかったから二人とも生きているし、ルール上の勝敗が決まっただけだ。
「お主が納得しようとすまいと、戦う前から拙者の負けは確定しておったのだ。最後にお主に斬られた時点でそれを悟った。」
「そんなことあるわけ……。」
言いかけたところで、あの時のことを思い出した。斬った瞬間、本能的にこうなることは必然だったと、一瞬感じたのも事実なのだ。でも、感情と知覚が一致しないことに違和感を感じてもいる。実際のところは何が何だかよくわからないのだ。
「それにお主に斬られてわかったことがある。あの一撃にはお主の全てが込められていたのだ。仲間への思い、信頼、愛情によって形成されていた。特にお主の思い人への熱情が込められていた。」
え?そんなものまで見えてしまったのか?それはそれで恥ずかしい気がしてきた。
「それは全て、拙者が軽視していた物だった。強くなる…修羅道を突き進む上では不要であると、斬り捨ててきた物だった。不要と思っていた物全てに打ち負かされたのだ。」
侍は手にした杯を一気にあおった。負けた悔しさを拭うかのように。いや、もしかしたら今までの自分との決別を決意したのかもしれない。
「拙者はこれまでの事を改め、他の者との交流を重視することにした。丁度、拙者に仕官の声がかかっておるのでな。新たな環境で多くを学ぼうと思う。」
侍に声をかけたヤツとは一体……?どこで噂を聞いたんだろう?ダンジョンにこもっていたから存在を知っている人間は限られているような気がするが。クルセイダーズとかかもしれないな。そういうことにしておこう。
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