【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第5章 完成!究極の超次元殺法!!

第309話 呼べよ雷雲

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「今一度!我が全力をぶつけるのみ!」


 侍は再び刀に雷の力を付与した。刀が恐ろしいほどの雷光を纏っている。刀というより魔法の杖みたいになっている。


「白熱した試合運びとなっていますが、今にも雨が降り出しそうな空模様であります!気になる方は雨の対策をしておいてください!」


 司会が天候の悪化を懸念する。雷雲は闘技場の空を覆っている。俺もさっきから雨が降るんじゃないか、と思っていたのだが、ポツと滴が落ちてきたことに気付く。次第に数は増え、大雨となった。最悪のコンディションだが、今さら試合を中断するわけにもいかない。運営が止めたとしても、俺達は戦いを続行する。


「天も拍手喝采で喜んでおるようだ。決着を付けるには絶好の場面ではないか。」

「よく言うぜ。アンタが呼んだ雨雲だろ。」

「拙者とて、雨が降る時分まで戦うことを想定していた訳ではない。想定外だ。」


 さっきの一撃で終わる心づもりだったワケか。アイツ自身も計算を狂わされた結果が、今の状況か。想定外の延長戦みたいなモンだろう。


「技は破られたが、絶えず最善を尽くすのみ。参る!」


 侍は向かってくるがさっきとは違う。普通に走っている。明らかに前とは違う攻め方だ。何が出てきてもおかしくない。


「雷鳴斬光閃!!!」


 侍の一手目が来た。遠目の間合いから横薙ぎの技を放ってきた。……これは多分、衝撃波を飛ばすタイプの技だ。雷の魔力の塊だけなら、霽月八刃で対処できる……。


「雷光引力波!」


 迎撃を決め込んだところで、剣の動きを封じられた。衝撃波よりも速く俺の所へ到達した。これも霽月八刃で対処は出来るが、さっきの衝撃波にまで対処できるかどうかといったところだ。タイミング的に喰らってしまう。絶体絶命だ。何とかこの技から逃れないといけない……。


(ズルッ!!)


 踏ん張る力を強めた瞬間、足が滑った。雨で地面がぬかるんだため、足を取られてしまった。俺は無様に仰向けの形で泥水の中に倒れ込んでしまった。


(バシャアアアアッ!!!)

「むううっ!?」


 そこで侍がうめき声を上げる。何が起きた?倒れている間に自分の目線の先で、雷光の衝撃波が通り過ぎていく様が見えた。アクシデントが逆に技を避ける結果となった。


「馬鹿野郎!!今だ!今が絶好のチャンスだ!行けぇ!!!」


 俺はその声で我に返る。ファルだ。珍しく俺に指示を出してくるとは。俺は反射的に起き上がり、侍の気配だけを頼りに現時点での最善の一撃をお見舞いした。


「無明八刃!!!」


 起き上がってからわかったが、侍との間合いは意外と遠かった。技は当たったんだろうか?その結果はわからなかったが、侍の顔は泥で汚れているのが見えた。俺が転んだ反動で泥がかかり、視界を奪っていたようだ。偶然とは恐ろしい。不幸中の幸いだったというのだろうか?


「拙者の負けだ。我が全身全霊破れたり!!」


 侍は敗北宣言をして、その場に倒れ込んだ。同時に雨も止み、暗雲が晴れていく。まるで俺の一撃で真っ二つになったかのように、雲が左右にわかれて消えていった。


「決まりましたぁぁぁ!!!誰もが息を飲む激戦の末、勇者様が勝利を収めましたぁ!!!」


 会場から大声援が巻き起こる。……俺は、俺達は勝ったのか。ようやく実感がわいてきた。


「やりやがったな、この野郎!」


 後ろから、思いっきり背中を叩かれた。泥で汚れているので、ビチャリと音を立てる。


「ハハ、なんかインチキ臭い勝ち方になっちまったな。」

「へっ、さんざんインチキ臭え戦い方してきたのはコイツの方だ。策士、策に溺れる、っていう典型例だぜ、コレは。偶然じゃない。必然が生んだ結果がこれだ。」


 ファルにしては珍しく、俺を馬鹿にしない発言をしてきた。これは素直に勝利の祝福として受けとっておくか……。
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