85 / 401
第2章 黒騎士と魔王
第85話 魔女たち、お気持ち表明……、
しおりを挟む
「次なる策を考えなくては……。」
私の心はかき乱されていた。盤石と思われた策は全て覆された。あの状況を何故覆せる?一体どうのようなことが起きれば、あのような事が起きる?
「あれが勇者の力だというの?たかが人間ごときに出来るはずが……、」
あの小娘、竜帝の娘でさえ、自らには遠く及ばない。明らかにそれ以下の矮小なる人間の勇者に阻まれた。今回だけではない。一度目はヴァル様が倒れたとき。
「次は圧倒的な力で、恐怖と絶望を与えてやらなくては。そうでなければ……。」
釣り合いが取れない。偉大なるヴァル様を奪った罪は大きい。あのお方は世界に変革をもたらすことが出来る救世主、我が父の目指した理想を実現させることが出来る!
「罪を償わせてあげるわ!絶対に!」
「アのお~、先に償うべキはアナタのほうでハ?」
今、最も聞きたくない声が聞こえてきた。声ではない。雑音もいいとこね。だいたい、今回の失敗の原因はこの男にある。
「罪?馬鹿おっしゃい!貴方の作った品は品質が良くないのではなくて?あんな不良品をつかまされた方の身にもなってほしいものだわ!」
「不良品!?ドの口がおっしゃルのですか?ワタシの研究中の資材を勝手に持ち出しタ、あなたのジゴウジトクですヨ!」
デーモン・コアの反応促進剤ブラック・ミスト。あの薬はデーモン化を促進し暗黒物質の効果を増幅する効果があったはず。でも実際にはあっさり魔王化を解除されてしまった。こんな結果に終わってしまったのは不良品だったからに違いない。
「だいたい、アレはワタシの理論どオりの結果をもたらしまシた。もちろン改良の余地はアりますが。……それヨり!一体、アナタ、アレにどれだケの時間と費用がかかったト思ってルんでス?」
もちろん、そんな事は大した問題ではないわ。全てはヴァル様のご意向に優先される。大義の前には些細なこと。
「……キいてます?さっきから上の空デすヨ!ワタシのこと、何だト思ってルんですカ?」
「ゴミ!」
「ムキー!?ひどイですネえ!」
ゴミの戯言など耳にも入らない。入れば耳が腐る。しょせんゴミはゴミよ!
「……随分と楽しそうではないか、二人とも。」
この声は忘れもしれない!そう、この声は……、
「ヴァル・ムング様!!」
反射的に彼の前に跪いた。隣のゴミからも自分と同様の行動を取る気配がする。この方の前には誰もがひれ付するのだ!
「生きておいででしたのね!」
「当然だ。私は不死身だ。私が君たちの期待を裏切るとでも思っていたのかね?」
「いいえ!決してそのようなことは!」
「フフ!わかるぞ。私の不在に葛藤しておったのだろう?そのようなことを君たちに微塵でも感じさせてしまったことは、私の失態だ。」
「おやめ下さい!ヴァル様は何も悪くございませんわ!私の策が不完全だったばかりに、ヴァル様をあのような目に遭わせてしまったのです!」
「まあ、そういうな。次につなげれば良いのだ。いずれ、結果を出せれば良い。大義、理想を成し遂げるためには寛大でなくてはいかん。」
「ハッ!おっしゃる通りでございます。」
さすがヴァル様!私のメシア、救世主様!
「君たちも目の当たりにしたようだが、勇者というものは決して侮れぬ存在であったろう?」
「ハッ!我らの理想を妨げる仇敵にございます。」
「まあ、そう言うな。物は考え様だ。先程も申したであろう?寛大になれとな。」
「寛大に……?」
そのときのヴァル様はとても穏やかな顔をしていた。しばらく会わない間に、前にも増して魅力的になられた。このお方の進歩には際限がない!
「英雄たるもの、張り合う相手がいなくては面白くない。競い合う相手がいてこその乱世だ。互いに高め合ってこそ、より強くなれるのだ。」
「はい!心洗われました。私も貴方様の力となれるよう、精進致します!」
「フフ、期待しているぞ!」
ヴァル様がご帰還なされた!やはり私にはヴァル様がいなくては。
「さっそくだが、次に向けて動き出そうではないか。」
「はい、何でも仰せつかります!」
さすが、ヴァル様!次の展望もお考えとは!
「ノウザン・ウェル。彼の町にクルセイダーズ共が何やら活動しているようだ。あの場所の地下迷宮には過去の遺産、秘宝が眠っているという。君たちも存じていることだろう。……ここはひとつ、奴らと秘宝を巡って競い合うのも、面白いとは思わんか?」
私の心はかき乱されていた。盤石と思われた策は全て覆された。あの状況を何故覆せる?一体どうのようなことが起きれば、あのような事が起きる?
「あれが勇者の力だというの?たかが人間ごときに出来るはずが……、」
あの小娘、竜帝の娘でさえ、自らには遠く及ばない。明らかにそれ以下の矮小なる人間の勇者に阻まれた。今回だけではない。一度目はヴァル様が倒れたとき。
「次は圧倒的な力で、恐怖と絶望を与えてやらなくては。そうでなければ……。」
釣り合いが取れない。偉大なるヴァル様を奪った罪は大きい。あのお方は世界に変革をもたらすことが出来る救世主、我が父の目指した理想を実現させることが出来る!
「罪を償わせてあげるわ!絶対に!」
「アのお~、先に償うべキはアナタのほうでハ?」
今、最も聞きたくない声が聞こえてきた。声ではない。雑音もいいとこね。だいたい、今回の失敗の原因はこの男にある。
「罪?馬鹿おっしゃい!貴方の作った品は品質が良くないのではなくて?あんな不良品をつかまされた方の身にもなってほしいものだわ!」
「不良品!?ドの口がおっしゃルのですか?ワタシの研究中の資材を勝手に持ち出しタ、あなたのジゴウジトクですヨ!」
デーモン・コアの反応促進剤ブラック・ミスト。あの薬はデーモン化を促進し暗黒物質の効果を増幅する効果があったはず。でも実際にはあっさり魔王化を解除されてしまった。こんな結果に終わってしまったのは不良品だったからに違いない。
「だいたい、アレはワタシの理論どオりの結果をもたらしまシた。もちろン改良の余地はアりますが。……それヨり!一体、アナタ、アレにどれだケの時間と費用がかかったト思ってルんでス?」
もちろん、そんな事は大した問題ではないわ。全てはヴァル様のご意向に優先される。大義の前には些細なこと。
「……キいてます?さっきから上の空デすヨ!ワタシのこと、何だト思ってルんですカ?」
「ゴミ!」
「ムキー!?ひどイですネえ!」
ゴミの戯言など耳にも入らない。入れば耳が腐る。しょせんゴミはゴミよ!
「……随分と楽しそうではないか、二人とも。」
この声は忘れもしれない!そう、この声は……、
「ヴァル・ムング様!!」
反射的に彼の前に跪いた。隣のゴミからも自分と同様の行動を取る気配がする。この方の前には誰もがひれ付するのだ!
「生きておいででしたのね!」
「当然だ。私は不死身だ。私が君たちの期待を裏切るとでも思っていたのかね?」
「いいえ!決してそのようなことは!」
「フフ!わかるぞ。私の不在に葛藤しておったのだろう?そのようなことを君たちに微塵でも感じさせてしまったことは、私の失態だ。」
「おやめ下さい!ヴァル様は何も悪くございませんわ!私の策が不完全だったばかりに、ヴァル様をあのような目に遭わせてしまったのです!」
「まあ、そういうな。次につなげれば良いのだ。いずれ、結果を出せれば良い。大義、理想を成し遂げるためには寛大でなくてはいかん。」
「ハッ!おっしゃる通りでございます。」
さすがヴァル様!私のメシア、救世主様!
「君たちも目の当たりにしたようだが、勇者というものは決して侮れぬ存在であったろう?」
「ハッ!我らの理想を妨げる仇敵にございます。」
「まあ、そう言うな。物は考え様だ。先程も申したであろう?寛大になれとな。」
「寛大に……?」
そのときのヴァル様はとても穏やかな顔をしていた。しばらく会わない間に、前にも増して魅力的になられた。このお方の進歩には際限がない!
「英雄たるもの、張り合う相手がいなくては面白くない。競い合う相手がいてこその乱世だ。互いに高め合ってこそ、より強くなれるのだ。」
「はい!心洗われました。私も貴方様の力となれるよう、精進致します!」
「フフ、期待しているぞ!」
ヴァル様がご帰還なされた!やはり私にはヴァル様がいなくては。
「さっそくだが、次に向けて動き出そうではないか。」
「はい、何でも仰せつかります!」
さすが、ヴァル様!次の展望もお考えとは!
「ノウザン・ウェル。彼の町にクルセイダーズ共が何やら活動しているようだ。あの場所の地下迷宮には過去の遺産、秘宝が眠っているという。君たちも存じていることだろう。……ここはひとつ、奴らと秘宝を巡って競い合うのも、面白いとは思わんか?」
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
商人見習いの少年に憑依した薬師の研究・開発日誌です。自分の居場所を見つけたい、認められたい。その心が原動力となり、工夫を凝らしながら商品開発をしていきます。巻き込まれた薬師は、いつの間にか周りを巻き込み、人脈と産業の輪を広げていく。現在3章継続中です。【カクヨムでも掲載しています】レイティングは念の為です。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

異世界帰還者、現実世界のダンジョンで装備・知識・経験を活かして新米配信者として最速で成り上がる。
椿紅颯
ファンタジー
異世界から無事に帰還を果たした、太陽。
彼は異世界に召喚させられてしまったわけだが、あちらの世界で勇者だったわけでも英雄となったわけでもなかった。
そんな太陽であったが、自分で引き起こした訳でもないド派手な演出によって一躍時の人となってしまう。
しかも、それが一般人のカメラに収められて拡散などされてしまったからなおさら。
久しぶりの現実世界だからゆっくりしたいと思っていたのも束の間、まさかのそこにはなかったはずのダンジョンで活動する探索者となり、お金を稼ぐ名目として配信者としても活動することになってしまった。
それでは異世界でやってきたこととなんら変わりがない、と思っていたら、まさかのまさか――こちらの世界でもステータスもレベルアップもあるとのこと。
しかし、現実世界と異世界とでは明確な差があり、ほとんどの人間が“冒険”をしていなかった。
そのせいで、せっかくダンジョンで手に入れることができる資源を持て余らせてしまっていて、その解決手段として太陽が目を付けられたというわけだ。
お金を稼がなければならない太陽は、自身が有する知識・装備・経験でダンジョンを次々に攻略していく!
時には事件に巻き込まれ、時にはダンジョンでの熱い戦いを、時には仲間との年相応の青春を、時には時には……――。
異世界では英雄にはなれなかった男が、現実世界では誰かの英雄となる姿を乞うご期待ください!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話
此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。
電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。
信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。
そうだ。西へ行こう。
西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。
ここで、ぼくらは名をあげる!
ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。
と、思ってた時期がぼくにもありました…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる