【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第2章 黒騎士と魔王

第85話 魔女たち、お気持ち表明……、

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「次なる策を考えなくては……。」


 私の心はかき乱されていた。盤石と思われた策は全て覆された。あの状況を何故覆せる?一体どうのようなことが起きれば、あのような事が起きる?


「あれが勇者の力だというの?たかが人間ごときに出来るはずが……、」


 あの小娘、竜帝の娘でさえ、自らには遠く及ばない。明らかにそれ以下の矮小なる人間の勇者に阻まれた。今回だけではない。一度目はヴァル様が倒れたとき。


「次は圧倒的な力で、恐怖と絶望を与えてやらなくては。そうでなければ……。」


 釣り合いが取れない。偉大なるヴァル様を奪った罪は大きい。あのお方は世界に変革をもたらすことが出来る救世主、我が父の目指した理想を実現させることが出来る!


「罪を償わせてあげるわ!絶対に!」

「アのお~、先に償うべキはアナタのほうでハ?」


 今、最も聞きたくない声が聞こえてきた。声ではない。雑音もいいとこね。だいたい、今回の失敗の原因はこの男にある。


「罪?馬鹿おっしゃい!貴方の作った品は品質が良くないのではなくて?あんな不良品をつかまされた方の身にもなってほしいものだわ!」

「不良品!?ドの口がおっしゃルのですか?ワタシの研究中の資材を勝手に持ち出しタ、あなたのジゴウジトクですヨ!」


 デーモン・コアの反応促進剤ブラック・ミスト。あの薬はデーモン化を促進し暗黒物質の効果を増幅する効果があったはず。でも実際にはあっさり魔王化を解除されてしまった。こんな結果に終わってしまったのは不良品だったからに違いない。


「だいたい、アレはワタシの理論どオりの結果をもたらしまシた。もちろン改良の余地はアりますが。……それヨり!一体、アナタ、アレにどれだケの時間と費用がかかったト思ってルんでス?」 


 もちろん、そんな事は大した問題ではないわ。全てはヴァル様のご意向に優先される。大義の前には些細なこと。


「……キいてます?さっきから上の空デすヨ!ワタシのこと、何だト思ってルんですカ?」

「ゴミ!」

「ムキー!?ひどイですネえ!」


 ゴミの戯言など耳にも入らない。入れば耳が腐る。しょせんゴミはゴミよ!


「……随分と楽しそうではないか、二人とも。」 


 この声は忘れもしれない!そう、この声は……、


「ヴァル・ムング様!!」


 反射的に彼の前に跪いた。隣のゴミからも自分と同様の行動を取る気配がする。この方の前には誰もがひれ付するのだ!


「生きておいででしたのね!」

「当然だ。私は不死身だ。私が君たちの期待を裏切るとでも思っていたのかね?」

「いいえ!決してそのようなことは!」

「フフ!わかるぞ。私の不在に葛藤しておったのだろう?そのようなことを君たちに微塵でも感じさせてしまったことは、私の失態だ。」

「おやめ下さい!ヴァル様は何も悪くございませんわ!私の策が不完全だったばかりに、ヴァル様をあのような目に遭わせてしまったのです!」

「まあ、そういうな。次につなげれば良いのだ。いずれ、結果を出せれば良い。大義、理想を成し遂げるためには寛大でなくてはいかん。」

「ハッ!おっしゃる通りでございます。」


 さすがヴァル様!私のメシア、救世主様!


「君たちも目の当たりにしたようだが、勇者というものは決して侮れぬ存在であったろう?」

「ハッ!我らの理想を妨げる仇敵にございます。」

「まあ、そう言うな。物は考え様だ。先程も申したであろう?寛大になれとな。」

「寛大に……?」


 そのときのヴァル様はとても穏やかな顔をしていた。しばらく会わない間に、前にも増して魅力的になられた。このお方の進歩には際限がない!


「英雄たるもの、張り合う相手がいなくては面白くない。競い合う相手がいてこその乱世だ。互いに高め合ってこそ、より強くなれるのだ。」

「はい!心洗われました。私も貴方様の力となれるよう、精進致します!」

「フフ、期待しているぞ!」


 ヴァル様がご帰還なされた!やはり私にはヴァル様がいなくては。


「さっそくだが、次に向けて動き出そうではないか。」

「はい、何でも仰せつかります!」


 さすが、ヴァル様!次の展望もお考えとは!


「ノウザン・ウェル。彼の町にクルセイダーズ共が何やら活動しているようだ。あの場所の地下迷宮には過去の遺産、秘宝が眠っているという。君たちも存じていることだろう。……ここはひとつ、奴らと秘宝を巡って競い合うのも、面白いとは思わんか?」
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