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第2章 黒騎士と魔王
第66話 謎の魔女、乱入!?
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「漁夫の利とはヨく言ったものでス。まさか、アナタ方が仲間割レするとハ思いませンでしたヨ。」
振り向くと、あの屍霊術師がいた。いつの間に!エルちゃんは何か黒いモヤモヤしたわっかのようなもので、手足の自由を奪われていた。
「ワタシはついていマす!アナタ方と戦うなんテ面倒事をスルーできるノですから!……では、サッサとおさらばデすよ!」
「お待ちなさい。」
屍霊術師が立ち去ろうとしたその時、突如、女の声が聞こえた。聞いたことのない声だ。
「オプティマ。貴方に命じた使命を果たさずに逃げ帰ろうとは、良い度胸ですね?」
屍霊術師の横に人影が現れた。転移魔法だろうか?見たところ女の魔術師のようだ。風貌はいかにも魔女と言った雰囲気だ。見るからに人相が悪い。それ以外に……、気のせいか?誰かに気配が似ているような気がする。人の姿に収まりきらない強大なオーラが……。
「いやデス!ワタシは研究で忙しいんでス!無意味な残業はシたくありマせん!」
屍霊術師は露骨に嫌がっている。魔女とは仲間のようだが仲は良くないようだ。
「ちょうど良い機会ではないですか。貴方の研究の成果を勇者やクルセイダーズにお披露目しておやりなさいな!」
魔女は懐から黒い液体が入った小瓶を取り出した。何か悪い予感がした。あれが何かはわからないが、直感がそう告げている!
「アあっ!!何でアナタがそれを持ってイるんですか!ワタシのとっておきを!ワタシの血と汗と涙の結晶をッ!」
魔女は小瓶をエルちゃんの足下へ向けて投げつけた。その衝撃で小瓶は割れ、ぶちまけられた中身の液体からは黒色のモヤが立ち上る。そして、そのモヤはエルちゃんの体を覆っていく。
「あっ……!?いや、きゃああ!」
「エルちゃん!」
一瞬の出来事だったため、エルちゃんは為す術もなく悲鳴を上げる。
「一体、何をしたんだ?」
「ウフフ、その娘の魔の力を増幅してあげたのよ。ただのデーモン・シードに対してなら、少し凶暴になる程度だけれど、デーモン・コアならどうなるかしらねえ?」
「ああア!!貴重なデーモン・コアが!ブラック・ミストなんか使ったラ、“魔反応”が起きて、最悪、失われテしまいマすよお!!」
「その方が楽しいのではなくて?魔王誕生の瞬間に立ち会えるのですからね。」
今、なんて言った?魔反応?魔王誕生?一体、何が起きるって言うんだ?
「坊や、よく見ておきなさい。目の前で魔王が誕生する瞬間を!」
「どうして、その子に酷いことをするんだ!」
「どうして?どの口でそんな事を言っているのかしら?私が味わった苦しみ、悲しみを倍にして返してあげるわ。貴方が私から奪ったように。あのお方を!!」
あの方?まさか、こいつは……、
「貴様!!レギンじゃな!」
突然、叫んだサヨちゃんの顔を見た。今まで見たこともないような、恐ろしい怒りの表情をしている。無理もない。彼女の父親を謀殺した張本人が目の前にいるんだ!
「おやおや?竜帝の一人娘ではありませんか?ちょうどよかったわ。勇者が悲しみ、苦しむ姿を目の当たりにするがいいわ!」
「うう……あああ……。」
黒いモヤが晴れて彼女の姿が見え始めた。姿は変わってはいないものの、髪の色は黒に変わり、瞳の色が赤色から漆黒に変化し、漂う雰囲気も非常に禍々しいものに変わっている。まるで違う。エルちゃんの姿をした他者に変わってしまったかのようだ。
「エルちゃん!!」
俺は呼びかけた。彼女の意識が残っている方に掛けたかった。ほんの少しでも残っていれば、呼び戻せるかもしれない。
「勇……者……?」
ぼそりと呟いたと思った瞬間、彼女は一瞬で俺の前方に姿を現した!瞬間移動か!?
「エ……エルちゃん?」
彼女は無表情だった。心そのものがなくなってしまったかのようだった。そして、俺の元へ歩み寄ってきた彼女は右手を差し出してきた。
「……?」
俺はそれに答えるために自分も手を差し出した。彼女は手を取ったと思うと……、信じられないほどの力で俺の手を握ってきた。
「ぐっ……あ!」
思わず悲鳴を上げてしまった。それぐらいに強い、そして、握りつぶされそうなほどの握力だった。
「や、やめてくれ!エルちゃん!君はこんなことをする子じゃないはずだ!」
俺が呼びかけるにも関わらず、彼女は力を緩めるどころか、反対側の手で首を締め上げてきた。無論、こちらも締め上げる力が尋常ではない。
「うぐ……あ……!?」
俺が必死に振りほどこうとしても、びくともしなかった。石とか金属で出来ているのではないかと思えるくらい、動かせなかった。このまま……で…は、いし、き…が……、
「勇者殿!」
そのとき、誰かが俺とエルちゃんの間に割って入ってきた。黒い鎧?エドワードだ!彼はエルちゃんの腕を肘の所で切り落とし、俺を拘束から解放した。
「うげっ……!けほっ、けほっ!すまん、助かったぜ、エドワード。」
「貴公は助けたが、彼女を助けることはできなかった。すまない。」
「こんなときにあんたを恨んだりはしないさ。」
皮肉にも、彼女を殺すつもりだった彼に命を救われる形になった。エルちゃんについて謝っているあたり、デーモンを憎んではいても、彼女を憎んでいるわけではないのが伝わってきた。やっぱり、この人はいい人だ。
「ふふ……ウフフ。」
彼女は笑みを浮かべていた。両腕を切り落とされたというのに!見ているだけでもゾッとするかのような笑顔だった。もう、これは彼女ではない。彼女がそんな顔をするはずがない!
「もう、駄目なのか?」
絶望するしかなかった。彼女は戻ってこない……のか?俺が絶望しているのを尻目に、エルちゃんの姿をした魔王は切り取られた腕から黒いモヤのようなものを伸ばし始めていた。そのモヤは落ちている腕の元まで到達すると、腕を持ち上げ、自分の所までたぐり寄せた。
「ま、まさか!?」
俺の予感通り、腕は元の通りにくっつき、再生してしまった。恐るべき力だった。
「私は彼女を倒す。貴公には悪いがそうさせて貰う。」
「あ、ああ。」
エドワードは魔王に斬りかかっていった。俺は……承諾するしかなかった。彼女の事を諦めたわけではないが、そうしなければ、エドワードたちが魔王に殺されてしまうかもしれなかったからだ。しかし、戦って勝てる……という確信はなかった。もし、俺が加勢したとしてもだ。さっき、掴まれたときに悟ってしまった。魔王がとてつもない力を秘めていることに……。
「閃・滅!」
クロエが声と共に魔王に向けて光弾を放ったようだ。しかし、それはどす黒いモヤによってはじかれてしまった。それに構わず、エドワードが斬りつける。だがそれも簡単に防がれてしまう。しかも、素手で剣を受け止めていた。
「ヤロウ!!」
ウネグとジェイも加勢に入る。ウネグは矢をつがえ、ジェイは格闘による接近戦を挑もうとしている。すると魔王は開いている方の手を正面に向かって差し出した。
「みんな、気を付けろ!」
俺は思わず叫んだ。なんとなく、魔王がしようとしていることがわかったからだ。しかし、もう遅かった。
「……!?」
気付いたときには魔王の手の平から黒いモヤの塊が放たれ、ウネグとジェイを吹き飛ばした!そして、剣を掴まれたままのエドワードを無造作に投げ飛ばし、クロエにエドワードを叩きつけた。
「キャアアア!!」
二人は衝撃で遠くまで吹き飛ばされてしまった。ウネグ、ジェイも同様だった。このままじゃ、みんなやられる!俺も戦わなくては!
振り向くと、あの屍霊術師がいた。いつの間に!エルちゃんは何か黒いモヤモヤしたわっかのようなもので、手足の自由を奪われていた。
「ワタシはついていマす!アナタ方と戦うなんテ面倒事をスルーできるノですから!……では、サッサとおさらばデすよ!」
「お待ちなさい。」
屍霊術師が立ち去ろうとしたその時、突如、女の声が聞こえた。聞いたことのない声だ。
「オプティマ。貴方に命じた使命を果たさずに逃げ帰ろうとは、良い度胸ですね?」
屍霊術師の横に人影が現れた。転移魔法だろうか?見たところ女の魔術師のようだ。風貌はいかにも魔女と言った雰囲気だ。見るからに人相が悪い。それ以外に……、気のせいか?誰かに気配が似ているような気がする。人の姿に収まりきらない強大なオーラが……。
「いやデス!ワタシは研究で忙しいんでス!無意味な残業はシたくありマせん!」
屍霊術師は露骨に嫌がっている。魔女とは仲間のようだが仲は良くないようだ。
「ちょうど良い機会ではないですか。貴方の研究の成果を勇者やクルセイダーズにお披露目しておやりなさいな!」
魔女は懐から黒い液体が入った小瓶を取り出した。何か悪い予感がした。あれが何かはわからないが、直感がそう告げている!
「アあっ!!何でアナタがそれを持ってイるんですか!ワタシのとっておきを!ワタシの血と汗と涙の結晶をッ!」
魔女は小瓶をエルちゃんの足下へ向けて投げつけた。その衝撃で小瓶は割れ、ぶちまけられた中身の液体からは黒色のモヤが立ち上る。そして、そのモヤはエルちゃんの体を覆っていく。
「あっ……!?いや、きゃああ!」
「エルちゃん!」
一瞬の出来事だったため、エルちゃんは為す術もなく悲鳴を上げる。
「一体、何をしたんだ?」
「ウフフ、その娘の魔の力を増幅してあげたのよ。ただのデーモン・シードに対してなら、少し凶暴になる程度だけれど、デーモン・コアならどうなるかしらねえ?」
「ああア!!貴重なデーモン・コアが!ブラック・ミストなんか使ったラ、“魔反応”が起きて、最悪、失われテしまいマすよお!!」
「その方が楽しいのではなくて?魔王誕生の瞬間に立ち会えるのですからね。」
今、なんて言った?魔反応?魔王誕生?一体、何が起きるって言うんだ?
「坊や、よく見ておきなさい。目の前で魔王が誕生する瞬間を!」
「どうして、その子に酷いことをするんだ!」
「どうして?どの口でそんな事を言っているのかしら?私が味わった苦しみ、悲しみを倍にして返してあげるわ。貴方が私から奪ったように。あのお方を!!」
あの方?まさか、こいつは……、
「貴様!!レギンじゃな!」
突然、叫んだサヨちゃんの顔を見た。今まで見たこともないような、恐ろしい怒りの表情をしている。無理もない。彼女の父親を謀殺した張本人が目の前にいるんだ!
「おやおや?竜帝の一人娘ではありませんか?ちょうどよかったわ。勇者が悲しみ、苦しむ姿を目の当たりにするがいいわ!」
「うう……あああ……。」
黒いモヤが晴れて彼女の姿が見え始めた。姿は変わってはいないものの、髪の色は黒に変わり、瞳の色が赤色から漆黒に変化し、漂う雰囲気も非常に禍々しいものに変わっている。まるで違う。エルちゃんの姿をした他者に変わってしまったかのようだ。
「エルちゃん!!」
俺は呼びかけた。彼女の意識が残っている方に掛けたかった。ほんの少しでも残っていれば、呼び戻せるかもしれない。
「勇……者……?」
ぼそりと呟いたと思った瞬間、彼女は一瞬で俺の前方に姿を現した!瞬間移動か!?
「エ……エルちゃん?」
彼女は無表情だった。心そのものがなくなってしまったかのようだった。そして、俺の元へ歩み寄ってきた彼女は右手を差し出してきた。
「……?」
俺はそれに答えるために自分も手を差し出した。彼女は手を取ったと思うと……、信じられないほどの力で俺の手を握ってきた。
「ぐっ……あ!」
思わず悲鳴を上げてしまった。それぐらいに強い、そして、握りつぶされそうなほどの握力だった。
「や、やめてくれ!エルちゃん!君はこんなことをする子じゃないはずだ!」
俺が呼びかけるにも関わらず、彼女は力を緩めるどころか、反対側の手で首を締め上げてきた。無論、こちらも締め上げる力が尋常ではない。
「うぐ……あ……!?」
俺が必死に振りほどこうとしても、びくともしなかった。石とか金属で出来ているのではないかと思えるくらい、動かせなかった。このまま……で…は、いし、き…が……、
「勇者殿!」
そのとき、誰かが俺とエルちゃんの間に割って入ってきた。黒い鎧?エドワードだ!彼はエルちゃんの腕を肘の所で切り落とし、俺を拘束から解放した。
「うげっ……!けほっ、けほっ!すまん、助かったぜ、エドワード。」
「貴公は助けたが、彼女を助けることはできなかった。すまない。」
「こんなときにあんたを恨んだりはしないさ。」
皮肉にも、彼女を殺すつもりだった彼に命を救われる形になった。エルちゃんについて謝っているあたり、デーモンを憎んではいても、彼女を憎んでいるわけではないのが伝わってきた。やっぱり、この人はいい人だ。
「ふふ……ウフフ。」
彼女は笑みを浮かべていた。両腕を切り落とされたというのに!見ているだけでもゾッとするかのような笑顔だった。もう、これは彼女ではない。彼女がそんな顔をするはずがない!
「もう、駄目なのか?」
絶望するしかなかった。彼女は戻ってこない……のか?俺が絶望しているのを尻目に、エルちゃんの姿をした魔王は切り取られた腕から黒いモヤのようなものを伸ばし始めていた。そのモヤは落ちている腕の元まで到達すると、腕を持ち上げ、自分の所までたぐり寄せた。
「ま、まさか!?」
俺の予感通り、腕は元の通りにくっつき、再生してしまった。恐るべき力だった。
「私は彼女を倒す。貴公には悪いがそうさせて貰う。」
「あ、ああ。」
エドワードは魔王に斬りかかっていった。俺は……承諾するしかなかった。彼女の事を諦めたわけではないが、そうしなければ、エドワードたちが魔王に殺されてしまうかもしれなかったからだ。しかし、戦って勝てる……という確信はなかった。もし、俺が加勢したとしてもだ。さっき、掴まれたときに悟ってしまった。魔王がとてつもない力を秘めていることに……。
「閃・滅!」
クロエが声と共に魔王に向けて光弾を放ったようだ。しかし、それはどす黒いモヤによってはじかれてしまった。それに構わず、エドワードが斬りつける。だがそれも簡単に防がれてしまう。しかも、素手で剣を受け止めていた。
「ヤロウ!!」
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「みんな、気を付けろ!」
俺は思わず叫んだ。なんとなく、魔王がしようとしていることがわかったからだ。しかし、もう遅かった。
「……!?」
気付いたときには魔王の手の平から黒いモヤの塊が放たれ、ウネグとジェイを吹き飛ばした!そして、剣を掴まれたままのエドワードを無造作に投げ飛ばし、クロエにエドワードを叩きつけた。
「キャアアア!!」
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