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#72 会談
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「着きました、ご主人様」
「ありがとう、エマ……」
4連休の最終日、真人はエマの運転で都内のとある場所へやってきていた。
「大きい建物だね……」
「そうですね」
かなり大きなビルの看板には、男性保護局と書かれていた。
なぜ真人がこんなところにいるかと言うと、真人が初めて精液検査を受けその結果を知らされた時から、男性保護局のトップはぜひ真人に一度挨拶をしたいと言ってきていたのだ。
そのため、学校生活や日常生活が落ち着いてきた今、少し不安はあるものの真人は会うことにしたのだ。
「大丈夫かな……? 人見知りしそう……」
「ご主人様なら大丈夫です。 そこまで込み入った話をいきなりしたりはしないでしょうし、男性保護局のトップが男性に対して無茶なことは言わないと思いますよ」
「それもそうだね…… 頑張るよ……」
普段接している婚約者達などとはかなり打ち解けた会話もできるようになってきているが、真人の根っこは人見知りの小心者なので、かなり不安はある。
だが、いつまでも弱いままでは婚約者達におんぶに抱っこになってしまうので、一人で生きていけるくらいには自我をしっかり持とうと真人は頑張ろうと思っている。
「入口はこちらですね。 行きましょうか」
関係者専用の駐車場と繋がっている裏口から真人とエマはビルに入っていった。
中に入るといかにも秘書といった風貌のメガネをかけたスーツを着た女性が立っており、その人の案内でエレベーターに乗り、フロアを上がっていく。
着いたのはかなり上の階層で、秘書さん曰く、基本このフロアには局長と秘書さんくらいしか入らないそうだ。
「こちらになります。 ……局長、大野様をお連れしました」
「どうぞ、入ってください」
秘書さんに扉を開けてもらい中に入ると、そこは会議室のような作りとなっていて、扉のすぐ前には白いスーツを着た恐らく40代くらいかと思われるお淑やかそうな女性が立っていた。
「初めまして、大野真人様。 私はこの男性保護局の局長を努めております、佐々木雅(みやび)と申します。 本日はこちら側の希望に応えてくださりありがとうございます」
「あ…… えっと、大野真人、です……」
「立ち話もなんですから、とりあえず席に座りましょうか」
雅に席に座るよう促され、真人は座り心地の良いソファに座り、その後ろにエマが立った。
座ってすぐに秘書さんが目の前に紅茶の入ったカップを置いてくれた
「あ、ありがとうございます……」
「えっ、あっ、はいっ……! 滅相もございません……!」
秘書さんは真人にお礼を言われるとなぜか慌てた様子でお礼を返してくれた。
「ふふ、お優しいですね、大野様は。 それで、本日お話する機会を設けたのは色々な事実確認と、大野様のお考えというか、少し聞きたいことがあるのでこういう場を設けさせてもらいました」
「はい……」
「そんなに緊張せずとも大丈夫ですよ。 答えにくい質問とかがありましたら答えなくていいですし、疲れたらすぐにおっしゃってください」
ニコニコとしながらそう言う雅のおかげで、真人も幾分か緊張は解れた。
「そうしたら、まずは事実確認からですね。 大野様は失礼ながら今年の3月終盤に大怪我をなさって記憶喪失となったと聞いています」
「はい、そうですね……」
「あれから過去の記憶などは戻りましたか?」
「いえ、戻ってないですね…… 僕がそこまで記憶が戻る事を望んでないからかもしれませんが……」
「そうなのですね?」
「ありがたいことに、今がとっても幸せなので……」
「そうですか、それはとても喜ばしいことです。 それで、入院した病院で精液検査を受けた際にそれがSランクと言うべきものだったと……」
「実感はないですけど……」
「大野様の検査結果を知るのは私と後ろにいる副局長、後は検査結果を管理する部署の一部の人間しか知りませんが、初めて見た時は腰を抜かすかと思いました。 失礼ですが、機械の故障も幾度となく疑いましたね」
後ろの秘書さんは副局長長さんだったらしく、その副長さんもウンウンと真人の検査結果を見て驚いたことを肯定していた。
「ただ、専属医師の安野さんからの報告書でも、何回も機械にかけて確認済み、さらには2度目の検査でも同じような結果が出て、これは現実なんだと思い知らされました」
「迷惑かけましたかね……」
「いえいえっ、とんでもないです。 本当に喜ばしいことなんですから。 で、ここからが少し相談したいことなのですが、大野様の精液をSランクとして提供していいものかと悩んでいるんです」
「と、言いますと……?」
「我が国の上の方では大野様はSランクと定められたのですが、まだ他の国だったりに報告をしたりしていないんです。 本来はAランクでも発覚したら報告を入れなければならないのですけれども」
「なんでですか……?」
「1番の理由は大野様に危険が及ぶリスクですね。 限りなく0に近くはありますが、過激な国や組織から身柄を狙われるリスクは当然公表することで出てきてしまいます。 まぁ、Aランクの方でも誘拐されたなんてことは過去にも起こったことはありませんが」
「なるほど……」
「大野様はどう言った形で提供をされたいとかの希望はあったりしますか?」
「それなんですけど、前々からちょっと疑問で、提供した女性の事を僕が知れたりとかはしますか……?」
「えっと、はい。 もちろん男性側が希望するならできますよ? けれど、知ってどうするんですか?」
「一応、僕の精液で妊娠して子供ができたら僕が父親という立場にはなるので、一度でいいから挨拶などをしたくて……」
「な、なるほど…… 本当に大野様は男性らしくないというか、特異なお方ですね?」
「やめておいた方がいいですかね……?」
「いえ、女性からしたらそんな嬉しい事はないと思いますよ。 普通は相手の男性が誰かなんて分かりませんから。 知れて国籍とか年齢ぐらいです」
ここまで余裕を崩さなかった雅も、この真人の発言には驚いたらしい。
「できれば近くで定期的に会えたりすればいいんですけどね……」
「真人様、でしたら以前、私達と話した事を伝えてみたらどうでしょうか?」
悩んでいる真人に後ろにいたエマがそう声をかけてきた。
「あ、いやでもあれは……」
「なにか要望があるのですか? ぜひ聞かせてもらいたいです」
「えっと、これはその時の思いつきというか、そんな感じで出たものなんですけど、もし僕の精液で妊娠した方が望むなら、今僕が住んでるビルの下層に住んで貰えばいいんじゃないかという話が出てます……」
「まぁっ! それはそれはっ!」
「でも、これを伝えるのは保護局の皆さんの仕事になっちゃいますし、流石に素行に問題がある方を住まわせる訳にもいかないから、そういう相手の選定もお任せすることになっちゃいますので、難しいかなって……」
「確かにそうなると、ただ大金を払ってくれる方というだけではなく、人間性の査定もしなければなりませんね」
「本音を言ってしまうと、僕の精液が大金で取引されるのってすごくむず痒いので、一般の方でも大丈夫なくらいにして欲しさもあるんですけど……」
「うーん、でも数に限りもありますからねぇ……」
「これもその場で出た案なんですけど、例えばその、妊娠をしたいという女性を低額の参加料で募ってから、オーディションみたいな形で審査して、残った方に精液を提供するみたいなのも出ましたね……」
これは真人が出した案なのだが、前世でやたら広告が打たれていた、1人の魅力的な男性を多数の女性が取り合う番組をイメージして言ってみたことである。
「ふむふむ、確かにそれなら多数の女性が参加するでしょうから、動くお金は個人と取引するよりも全然多いでしょうね」
「ほんとに思いつきだったんですけどね……」
「いえ、これはかなり現実的に検討したい案件ですよ! 参加料を仮に5000円として、10万人が応募を出してきたらそれだけで5億円動くわけですからっ」
「そんなに応募来ますかね……?」
「これでも少なめに考えた方ですよ? 宣伝の仕方によっては100万人以上集めることも可能だと思います。 それほど、一般女性には男性と関わりを持てる機会はありませんから」
「かなり負担をかけますけど……」
「帰ってくる利益を考えれば準備にかかる負担など些細なものですよ。 でも、そうなると最終的には大野様に協力もしてもらう事になりますけど、よろしいのですか?」
「僕は全然…… 前々から将来なにか世の中に役立つことができればと思ってましたから、その一部になるなら喜んで協力します……」
「ふふ、今日はただ話すだけで終わると思っていたのですが、今の話だけでもとんでもなく価値があるお話ができました。 ぜひ、前向きに検討させてください」
「はい、よろしくお願いします……」
「大野様はやはり、女性に対しての忌避感とかは無いのですね? 自分のお家に住まわせる事を提案してきたりするということは」
「そうですね…… ないと思います……」
「婚約者も既に10人いらっしゃると聞いていますが、これ以上受け入れたりするつもりはあるのですか?」
既に婚約者がいる事はエマを通して報告済みで、これもごく限られた人物しか知らされてはいない。
「婚約者はこれ以上は受け入れられない思います…… これ以上になると僕のキャパが厳しい気がするので……」
「10人受け入れてる時点で十分すぎるくらい素晴らしいことではありますよ。 では、婚約者とはいかなくとも、この先、女性と新たに関係を作る事は嫌ではないのでしょうかね?」
「関係というと……」
「はっきり言ってしまえば肉体関係ですね。 女性からしたら、大野様と一夜を共に出来るならこの先、一生誰かと肉体関係を結ばなくても良いと考える女性も少なくはないと思いますが、どうでしょう?」
「それは…… 婚約者の皆んなにも聞いてみないと分からないです…… エマはどう思う……?」
「私は真人様がそのお相手との関係を許されるのならば良いと思います。 それで真人様が私を始め婚約者の皆さんへの愛を薄れさせるなんて事は無いと思いますし♡」
「そっか、ありがとう…… えっと、僕個人としては、もしそういう場面があったら新たな関係を築くことはあるかもしれませんが、誰かに命じられたり、第三者の利益のためにとかは恐らくしないし出来ないと思います……」
「はい、それで良いと思います。 こちらとしても真人様の幸せが第一と考えていますので、したとしても提案くらいで強要は絶対にしないと約束します」
「ありがとうございます……」
「いえいえ、今後とも良いお付き合いをさせてもらうために、私達は全力で大野様のサポート致しますので、お困りのことがあれば遠慮なくお申し付けください」
その後も色んなことについて話が進み、オーディションの件や、今度男性目線で答えるインタビューをさせて欲しいとのことだったので、その件も真人は快く了承した。
「今日話すべき事はこれくらいですかね。 ……あら、もうこんな時間。 予定よりかなりオーバーしてしまいました、申し訳ありません」
「いえ、僕としても良い時間でしたから……」
「そう言ってもらえると助かります。 今後は軽い相談や連絡は電話やメールなどでお伝えして、重要な時は直接お話しする機会を求めることになると思いますがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です……」
「それでは、これが私の連絡先になります。 もし連絡がある場合は保護局ではなく、こちらの電話番号やメールアドレスに連絡してください。 大野様と話す事は機密にしなければいけないことが多いので」
「わ、私のも良ければ……」
雅さんのと併せて副局長さんの名刺も真人は受け取った。
ちなみに副局長さんの名前は手塚芽衣(めい)さんと言うらしい。
「それでは、今日は来てくださりありがとうございました。 こちらとしては想像の数倍有意義な時間を過ごすことができ、感謝しかありません」
「僕にとっても良い時間でした…… 今後も関わることになると思いますが、よろしくお願いします……!」
「こちらこそよろしくお願いします」
かなり長く話し込んだ会談が終わり、真人は保護局を後にしていった。
「ありがとう、エマ……」
4連休の最終日、真人はエマの運転で都内のとある場所へやってきていた。
「大きい建物だね……」
「そうですね」
かなり大きなビルの看板には、男性保護局と書かれていた。
なぜ真人がこんなところにいるかと言うと、真人が初めて精液検査を受けその結果を知らされた時から、男性保護局のトップはぜひ真人に一度挨拶をしたいと言ってきていたのだ。
そのため、学校生活や日常生活が落ち着いてきた今、少し不安はあるものの真人は会うことにしたのだ。
「大丈夫かな……? 人見知りしそう……」
「ご主人様なら大丈夫です。 そこまで込み入った話をいきなりしたりはしないでしょうし、男性保護局のトップが男性に対して無茶なことは言わないと思いますよ」
「それもそうだね…… 頑張るよ……」
普段接している婚約者達などとはかなり打ち解けた会話もできるようになってきているが、真人の根っこは人見知りの小心者なので、かなり不安はある。
だが、いつまでも弱いままでは婚約者達におんぶに抱っこになってしまうので、一人で生きていけるくらいには自我をしっかり持とうと真人は頑張ろうと思っている。
「入口はこちらですね。 行きましょうか」
関係者専用の駐車場と繋がっている裏口から真人とエマはビルに入っていった。
中に入るといかにも秘書といった風貌のメガネをかけたスーツを着た女性が立っており、その人の案内でエレベーターに乗り、フロアを上がっていく。
着いたのはかなり上の階層で、秘書さん曰く、基本このフロアには局長と秘書さんくらいしか入らないそうだ。
「こちらになります。 ……局長、大野様をお連れしました」
「どうぞ、入ってください」
秘書さんに扉を開けてもらい中に入ると、そこは会議室のような作りとなっていて、扉のすぐ前には白いスーツを着た恐らく40代くらいかと思われるお淑やかそうな女性が立っていた。
「初めまして、大野真人様。 私はこの男性保護局の局長を努めております、佐々木雅(みやび)と申します。 本日はこちら側の希望に応えてくださりありがとうございます」
「あ…… えっと、大野真人、です……」
「立ち話もなんですから、とりあえず席に座りましょうか」
雅に席に座るよう促され、真人は座り心地の良いソファに座り、その後ろにエマが立った。
座ってすぐに秘書さんが目の前に紅茶の入ったカップを置いてくれた
「あ、ありがとうございます……」
「えっ、あっ、はいっ……! 滅相もございません……!」
秘書さんは真人にお礼を言われるとなぜか慌てた様子でお礼を返してくれた。
「ふふ、お優しいですね、大野様は。 それで、本日お話する機会を設けたのは色々な事実確認と、大野様のお考えというか、少し聞きたいことがあるのでこういう場を設けさせてもらいました」
「はい……」
「そんなに緊張せずとも大丈夫ですよ。 答えにくい質問とかがありましたら答えなくていいですし、疲れたらすぐにおっしゃってください」
ニコニコとしながらそう言う雅のおかげで、真人も幾分か緊張は解れた。
「そうしたら、まずは事実確認からですね。 大野様は失礼ながら今年の3月終盤に大怪我をなさって記憶喪失となったと聞いています」
「はい、そうですね……」
「あれから過去の記憶などは戻りましたか?」
「いえ、戻ってないですね…… 僕がそこまで記憶が戻る事を望んでないからかもしれませんが……」
「そうなのですね?」
「ありがたいことに、今がとっても幸せなので……」
「そうですか、それはとても喜ばしいことです。 それで、入院した病院で精液検査を受けた際にそれがSランクと言うべきものだったと……」
「実感はないですけど……」
「大野様の検査結果を知るのは私と後ろにいる副局長、後は検査結果を管理する部署の一部の人間しか知りませんが、初めて見た時は腰を抜かすかと思いました。 失礼ですが、機械の故障も幾度となく疑いましたね」
後ろの秘書さんは副局長長さんだったらしく、その副長さんもウンウンと真人の検査結果を見て驚いたことを肯定していた。
「ただ、専属医師の安野さんからの報告書でも、何回も機械にかけて確認済み、さらには2度目の検査でも同じような結果が出て、これは現実なんだと思い知らされました」
「迷惑かけましたかね……」
「いえいえっ、とんでもないです。 本当に喜ばしいことなんですから。 で、ここからが少し相談したいことなのですが、大野様の精液をSランクとして提供していいものかと悩んでいるんです」
「と、言いますと……?」
「我が国の上の方では大野様はSランクと定められたのですが、まだ他の国だったりに報告をしたりしていないんです。 本来はAランクでも発覚したら報告を入れなければならないのですけれども」
「なんでですか……?」
「1番の理由は大野様に危険が及ぶリスクですね。 限りなく0に近くはありますが、過激な国や組織から身柄を狙われるリスクは当然公表することで出てきてしまいます。 まぁ、Aランクの方でも誘拐されたなんてことは過去にも起こったことはありませんが」
「なるほど……」
「大野様はどう言った形で提供をされたいとかの希望はあったりしますか?」
「それなんですけど、前々からちょっと疑問で、提供した女性の事を僕が知れたりとかはしますか……?」
「えっと、はい。 もちろん男性側が希望するならできますよ? けれど、知ってどうするんですか?」
「一応、僕の精液で妊娠して子供ができたら僕が父親という立場にはなるので、一度でいいから挨拶などをしたくて……」
「な、なるほど…… 本当に大野様は男性らしくないというか、特異なお方ですね?」
「やめておいた方がいいですかね……?」
「いえ、女性からしたらそんな嬉しい事はないと思いますよ。 普通は相手の男性が誰かなんて分かりませんから。 知れて国籍とか年齢ぐらいです」
ここまで余裕を崩さなかった雅も、この真人の発言には驚いたらしい。
「できれば近くで定期的に会えたりすればいいんですけどね……」
「真人様、でしたら以前、私達と話した事を伝えてみたらどうでしょうか?」
悩んでいる真人に後ろにいたエマがそう声をかけてきた。
「あ、いやでもあれは……」
「なにか要望があるのですか? ぜひ聞かせてもらいたいです」
「えっと、これはその時の思いつきというか、そんな感じで出たものなんですけど、もし僕の精液で妊娠した方が望むなら、今僕が住んでるビルの下層に住んで貰えばいいんじゃないかという話が出てます……」
「まぁっ! それはそれはっ!」
「でも、これを伝えるのは保護局の皆さんの仕事になっちゃいますし、流石に素行に問題がある方を住まわせる訳にもいかないから、そういう相手の選定もお任せすることになっちゃいますので、難しいかなって……」
「確かにそうなると、ただ大金を払ってくれる方というだけではなく、人間性の査定もしなければなりませんね」
「本音を言ってしまうと、僕の精液が大金で取引されるのってすごくむず痒いので、一般の方でも大丈夫なくらいにして欲しさもあるんですけど……」
「うーん、でも数に限りもありますからねぇ……」
「これもその場で出た案なんですけど、例えばその、妊娠をしたいという女性を低額の参加料で募ってから、オーディションみたいな形で審査して、残った方に精液を提供するみたいなのも出ましたね……」
これは真人が出した案なのだが、前世でやたら広告が打たれていた、1人の魅力的な男性を多数の女性が取り合う番組をイメージして言ってみたことである。
「ふむふむ、確かにそれなら多数の女性が参加するでしょうから、動くお金は個人と取引するよりも全然多いでしょうね」
「ほんとに思いつきだったんですけどね……」
「いえ、これはかなり現実的に検討したい案件ですよ! 参加料を仮に5000円として、10万人が応募を出してきたらそれだけで5億円動くわけですからっ」
「そんなに応募来ますかね……?」
「これでも少なめに考えた方ですよ? 宣伝の仕方によっては100万人以上集めることも可能だと思います。 それほど、一般女性には男性と関わりを持てる機会はありませんから」
「かなり負担をかけますけど……」
「帰ってくる利益を考えれば準備にかかる負担など些細なものですよ。 でも、そうなると最終的には大野様に協力もしてもらう事になりますけど、よろしいのですか?」
「僕は全然…… 前々から将来なにか世の中に役立つことができればと思ってましたから、その一部になるなら喜んで協力します……」
「ふふ、今日はただ話すだけで終わると思っていたのですが、今の話だけでもとんでもなく価値があるお話ができました。 ぜひ、前向きに検討させてください」
「はい、よろしくお願いします……」
「大野様はやはり、女性に対しての忌避感とかは無いのですね? 自分のお家に住まわせる事を提案してきたりするということは」
「そうですね…… ないと思います……」
「婚約者も既に10人いらっしゃると聞いていますが、これ以上受け入れたりするつもりはあるのですか?」
既に婚約者がいる事はエマを通して報告済みで、これもごく限られた人物しか知らされてはいない。
「婚約者はこれ以上は受け入れられない思います…… これ以上になると僕のキャパが厳しい気がするので……」
「10人受け入れてる時点で十分すぎるくらい素晴らしいことではありますよ。 では、婚約者とはいかなくとも、この先、女性と新たに関係を作る事は嫌ではないのでしょうかね?」
「関係というと……」
「はっきり言ってしまえば肉体関係ですね。 女性からしたら、大野様と一夜を共に出来るならこの先、一生誰かと肉体関係を結ばなくても良いと考える女性も少なくはないと思いますが、どうでしょう?」
「それは…… 婚約者の皆んなにも聞いてみないと分からないです…… エマはどう思う……?」
「私は真人様がそのお相手との関係を許されるのならば良いと思います。 それで真人様が私を始め婚約者の皆さんへの愛を薄れさせるなんて事は無いと思いますし♡」
「そっか、ありがとう…… えっと、僕個人としては、もしそういう場面があったら新たな関係を築くことはあるかもしれませんが、誰かに命じられたり、第三者の利益のためにとかは恐らくしないし出来ないと思います……」
「はい、それで良いと思います。 こちらとしても真人様の幸せが第一と考えていますので、したとしても提案くらいで強要は絶対にしないと約束します」
「ありがとうございます……」
「いえいえ、今後とも良いお付き合いをさせてもらうために、私達は全力で大野様のサポート致しますので、お困りのことがあれば遠慮なくお申し付けください」
その後も色んなことについて話が進み、オーディションの件や、今度男性目線で答えるインタビューをさせて欲しいとのことだったので、その件も真人は快く了承した。
「今日話すべき事はこれくらいですかね。 ……あら、もうこんな時間。 予定よりかなりオーバーしてしまいました、申し訳ありません」
「いえ、僕としても良い時間でしたから……」
「そう言ってもらえると助かります。 今後は軽い相談や連絡は電話やメールなどでお伝えして、重要な時は直接お話しする機会を求めることになると思いますがよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です……」
「それでは、これが私の連絡先になります。 もし連絡がある場合は保護局ではなく、こちらの電話番号やメールアドレスに連絡してください。 大野様と話す事は機密にしなければいけないことが多いので」
「わ、私のも良ければ……」
雅さんのと併せて副局長さんの名刺も真人は受け取った。
ちなみに副局長さんの名前は手塚芽衣(めい)さんと言うらしい。
「それでは、今日は来てくださりありがとうございました。 こちらとしては想像の数倍有意義な時間を過ごすことができ、感謝しかありません」
「僕にとっても良い時間でした…… 今後も関わることになると思いますが、よろしくお願いします……!」
「こちらこそよろしくお願いします」
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