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プロローグ

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(あの人に…襲われました…)


 その言葉を言われた時、頭が真っ白になった。

 柄の悪い不良生徒にいじてられていたクラスメイトの女子を助けたつもりだった。

 その場では感謝されたが、次の日職員室に呼び出され告げられたのは性犯罪の被害報告だった。

 加害者は自分。

 その日から、家族も、友人も、クラスメイト全てが離れていった。

 後から、自分をはめた不良集団にはめられたことを知ったが、学校側が大っぴらになることを避けたことで、前科はつかず、自分にターゲットが外れた事であの時助けた女の子は助かっていた事が唯一の救いだった。

 それでも、一度貼られたレッテルは消えず、家族の中でも腫れ物扱いされていた真人は、高校卒業と共に家を出て働き始めた。

 高卒でつける仕事はあまりなく、肉体労働系の仕事につき、毎日こき使われているうちに気付けば30歳になっていた。

 今日もいつも通り、ヘトヘトになって家に帰り、泥のように布団についた。


(なんのために生きているのだろう)


 そう思うことも一度や二度では無かった。

 それに対する答えは出ないのだが。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(大野真人君…… 君は中々に難儀な人生を送ってきているみたいだね……)


 睡眠中、急に意識が覚醒したと思うと、どこからか声が聞こえてきた。


「だれですか……?」


(君には幸せになる資格がある…… )


 体は動かせず、目も開けないのだが、その声だけは良く響いてきた。


「何を言って……?」


(やり直さないかい……? 新しい世界で……)


「夢かな……? まぁ…… やり直せるなら人生やり直してみたいですけど……」


(分かったよ…… それじゃあ、今度の世界では幸せになってくれたまえ……)


 その言葉を最後に覚醒していた意識が途絶え、再び真人は眠りについた。


(……どうか、幸せにね)


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「ん……」


 ふと、光が目に入ったことで目が覚めた。

 微睡む意識の中で少し違和感を感じた。


(こんな明るい光の照明なんてウチにはなかった気が……)


 少しの違和感はやがて大きくなっていき、それに従って意識も徐々にはっきりしてきた。

 目を開けるとそこは……


「ここ、どこだ……」


 まず目に入ったのは天井の照明。

 パッと見ただけでも良いものであることがわかる。

 そして、ベッドの近くには大きな窓があり、そこから心地よい木漏れ日が部屋の中へ差し込んできていた。


(いやいや、綺麗な部屋過ぎるっ。 自分の部屋はもっと小ぢんまりしていて暗かったはず……)


 上体を起こし、ふと横を見ると何かの検査器具と心拍数などを表示する画面があり、ここが恐らく病院であることを理解した。


(昨日は家の布団で寝たはずだけど…… なんで病院で寝ているんだ?)


 コンコンっ

 
 寝起きで思考がまとまらず、半ばパニックになっていたところに、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「おはようございます。 大野様…… と言っても目は覚まされてないですよね……って…… えっ?」


 扉が開くと、そこには看護服を着た、綺麗な茶髪を後ろでひとまとめにした、めちゃくちゃスタイルの良い綺麗な女性が立っていた。


「あ…… お、おはようございます」


(めちゃくちゃ綺麗な人だ…… き、緊張して挨拶も少し、どもってしまった……)


 挨拶をすると、その女性は口をポカンと開け、真人の顔を見ながら数十秒ほど固まっていた。


(な、なんだろう? なんか顔についてるのか?)


 そう思い顔に手をやってみるが、特に何もついていない。


(あれ、髭が剃られてる? というかやたらとスベスベじゃないか?)


 最近は着飾る機会なども滅法減り、大して見る人もいないからと、肌や髭の手入れなども怠っていたが、今触った肌はまるで10代の頃のような手触りをしていた。

 そんな事をしている間も、扉のところに立っている女性は未だに固まっているままだった。


「あ、あの…… 大丈夫ですか……?」


 流石に気まずくなってきた真人は女性に声をかけた。 緊張で今度は少し声が裏返った。


「……はっ!? て、天使様……?」

「天使……?」

「せ、先生ーーー!!! 天使様が! 天使様がお目覚めに!!!!!」

「うわっ……!? って、あれ? 行っちゃった……」


 あの細い体のどこから出たのかという大きな声を出しながら、看護婦の女性は部屋を凄い勢いで出て行った。


「な、なんだったんだろう……」


 ……これは、こんな感じの主人公、真人が色んな女性と出会い、周りを、そして自分を幸せにしていくお話。
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